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【レポート】

Yahoo! BB、本誌記者宅に導入してみました~その3

■URL
http://bb.yahoo.co.jp/

 未だいろいろと謎に包まれている部分が多いYahoo! BB。すでに導入している本誌の記者2名でさえ、実際に使っているのによくわからない点は多い。ましてや、これから導入を検討しようというユーザーにとってはなおのことだろう。すでに3回目となる本レポートだが、実は次から次へと新事実が発覚しており、どうやらしばらくネタに尽きることはなく、数週間ほどはレポート記事が継続しそうな気配だ。

 さて、今回とり上げるのは「初期導入オプションサービス」である。Yahoo! BBでは、自分でモデムの設置工事やパソコンの初期設定をする“DIY設置”が基本だが、有料の同サービスを申し込むことで、Yahoo! BBの工事スタッフにこれらの作業をやってもらうことが可能だ。読者の中には「初期導入オプションサービス」を申し込むかどうかで迷っている方もいることだろう。

 以下、同サービスを依頼した記者N宅の設置工事が、実際にどんな様子だったかをレポートしていこう。なお、今回紹介するのはあくまでも記者Nが体験した一つの例であることをお断りしておく。

●記者N宅に現われた工事スタッフは、噂(?)通りの……

 自宅工事の時間は、8月6日の午後1時から午後4時で予約できた。工事は丸々3時間かかるわけではななく、正確な時間までは約束できないため、幅を持たせているという。記者Nは念のため、工事にみえる直前に電話を1本いただけるようお願いしておいた。

 なお、予約センターの方からこの時に、工事当日は作業の前に免責事項を記した誓約書にサインをする必要があることを伝えられ、パソコン内のデータもバックアップしておくようにとの指示を受けた。「パソコン、ADSL接続初期設定等」や「LANカード取り付けサービス」では、Yahoo! BBの工事スタッフがユーザーのパソコンに直接触って作業をするため、万一パソコンが破損したりデータが破壊された場合でもYahoo! BBに責任を問わないことを約束するものだ。

 工事当日、指定された午後1時になるとすぐに、約束通りYahoo! BBのスタッフより電話が入る。最寄り駅にいるので、今から工事にうかがうという(電車で移動しているのか?)。それから10分ほどして現われたのは、ジーンズにTシャツとチェックの半袖シャツ(ともに裾出し)、荷物は手提げの紙袋一つというカジュアルな装備(?)のお兄さん。Yahoo! BBの自宅工事で派遣されたパソナのスタッフだという。一応、身分証明書だというYahoo! BBのバッジも見せてくれた。

 記者Nは、すでにモデムの設置や配線はDIYで完了しており、iMacでの接続も確認できていることを説明。Windows 98搭載のノートパソコンのほうの設定をお願いしたいと申し出た。予約時に伝えられていた通り、免責の誓約書にサインをしたのち、作業にとりかかっていただいた。

 iMacがすでにつながっているため、とりあえずiMacでスループットを計測。スタッフの方が「OSO's Modem Site」の「SPEED TEST」コーナーにアクセスして計測すると、3Mbpsほど出ている。開通確認としては問題ないという結果があっさりと出てしまった。

 スタッフの方によると、これで十分な速度だということだが、この結果をどう見るかは電話局までの距離との関連もあるだろう。遠ければ3Mbpsも出ていれば喜ぶべきだし、逆に近いようであれば不満な数値となる。そこで、スタッフの方に記者N宅と電話局との距離をたずねてみたが、残念ながらそれはわからないという。一般的には2.5kmを超えるとスループットが落ちてくるということだが、工事を行なうユーザー宅の個々の距離は把握していないようだ。

 ただし、もしこれで不満であれば改善する方法もあるとして、「ADSL環境改善のご案内」というA4サイズのプリントアウト1枚を渡された。「インターネットには接続できますが、お望みの速度が出ない」という症状の原因について「コンピュータの処理能力が回線の速度に追いつかない場合があります」との説明。「高速なCPUをもったパソコンを使用すると大きく改善することがあります」と対応方法が紹介されており、参考例としてIntel Pentium IIの266~333MHzで2Mbps、400~500MHzで3Mbps、533~667MHzで4Mbpsという目安が挙げられていた。

●DHCPのトラブルに工事スタッフはお手上げ

Windows 95/98/Meでは、「IP設定」(winipcfg)で割り当てられたIPアドレスなどの情報を確認できる。しかし、記者N宅では、いくら設定を読み込もうとしてもこのようなアラートが出る現象が続いた
 次は、問題のWindowsのほうだ。接続はできるがスループットが600kbps程度しか出ないという問題が発生している。記者Nは普段Macintoshをメインに使っており、Windowsはほとんどわからない。DIYで行なったパソコンのADSL初期設定が間違っていることは大いに考えられる。状況を説明すると、まずはスタッフの方が持参したWindows 98ノートパソコンで確認してみるという。

 ところがここで、スタッフのパソコンからYahoo! BBに接続できないという別のトラブルが発生。“600kbps問題”どころではなくなってしまった。そのノートパソコンは開通確認作業用に持ち歩いているもので、もちろんYahoo! BB向けに設定済みである。通常なら、Yahoo! BBのADSLモデムとEthernetケーブルで接続すれば、あとはパソコン起動時にDHCPでIPアドレスなどの設定を取得し、インターネットを利用できるようになるはずだ。ところがDHCPサーバーから設定を取得できないらしく、「IP設定」ツールで「すべて書き換え」をクリックしても、「DHCPサーバーが利用できません:アダプタの更新」というアラートが出てしまう。

 モデムの「WLK」「LLK」という2つのLEDはきちんと点灯しているため、WAN側(Yahoo! BBとADSLモデム間)およびLAN側(ADSLモデムとパソコン間)のリンクは確立しているようだ。そもそもiMacではさっきまで接続できていたため、回線が原因ではないことは容易に想像できる。

 「どうやら、このパソコンそのものが逝っちゃったみたいです」というので、記者NのほうのWindowsパソコンで試してみたが、状況は同じ。さらにモデムとモジュラーケーブル、Ethernetケーブルすべてをスタッフの方が持参した予備のものに交換しても、トラブルは一向に解消しない。スタッフの方も原因がわからず、会社へ電話で問い合わせようとするも、「ヘルプデスクが混み合っていて電話がつながらない」と苦笑い。作業が進まず、しばらく気まずい状況となってしまった。

 その後なんとか電話が通じ、スタッフの方もひと安心。しかし、それでわかったのは「こういう現象が起こる場合もある」ということ、そして「非常にめずらしい現象」ということだけで、肝心の原因や対策は不明。仕方がないのでスタッフの方は「すべて書き換え」ボタンを断続的にクリック。その結果、約20分後にようやくIPアドレスを取得することができた。一度取得した後は再起動しても問題は起こらず、スループット調査の結果も良好。記者Nのパソコンのような600kbps問題も発生しなかった。

●“600kbps問題”の原因はウィルス対策ソフト

 結論を先に述べると、「パソコン、ADSL接続初期設定等」のオプションサービスを利用したものの、結局600kbps問題を解決してもらうことはできなかったことになる。スタッフの方のパソコンで接続に成功した後、記者Nのパソコンにつなぎ変えてみたものの、DHCPのトラブルが再び発生。しばらく“粘って”みても解消されなかったため、工事の際に600kbps問題を再現することができなかったためだ。

 とりあえず、記者Nのパソコンの設定に何か原因がないか確認してもらったが、自分で行なっていた初期設定で間違いはなかった。そもそも、Yahoo! BBの「パソコン、ADSL接続初期設定等」でカバーする範囲で、スループットに影響するような設定項目はないという。確かに、MTUなどを変更することでスループットの向上が図れる場合もあるが、これはサービスの範囲外。スタッフの方も「レジストリに手を加える方法も存在するが、それについては我々の口からお客様に教えないように言われている」ということで、「インターネットで検索すれば、やり方が書いてあるところが見つかりますから、知識があるなら自分でやってください」と言われてしまった。

 パソコンの初期設定に関係ないとすれば、600kbps問題はいったい何が原因なのか? すでにご存じの方も多いと思うが、今回の600kbps問題はウィルス対策ソフトが原因だ。記者Nのパソコンおよび同じ現象が確認されていた記者Aのパソコンには「ウイルスバスター2001」が常駐しており、このソフトの一部の機能がボトルネックとなって十分なスループットが得られなかったのだ。

 実は記者Nも、実際に自宅工事が行なわれる前にこの情報を入手。ちょっと意地悪ではあるが、今回の自宅工事には、「パソコン、ADSL接続初期設定等」のサービスでそのあたりのトラブルもきちんとフォローしてくれるかどうかを試す目的もあったのだ。

 そこで最後に、スタッフの方に「ウィルス対策ソフトを常駐させていると遅くなるっていうのを聞いたことがあるんですが、このパソコン、『ウイルスバスター』が入っているんですけど、何か関係ありますかね?」という、かなり“親切な”質問まで投げかけてみたものの、「そういう場合もあるが、それほどスループットは変わらない」との回答。同ソフトの設定についてチェックしたり、解決方法について具体的なアドバイスをしてくれるなどのサービスは受けられなかった。

 なお、「ウイルスバスター2001」に起因するボトルネックは、同ソフトの「URLフィルタ」と「WebTrap」という2つの機能をオフにすることで回避できる。このあたりの情報は、同ソフトを発売しているトレンドマイクロのウェブサイトに説明がある。

●作業内容とスタッフのスキルに疑問

 このように、最終的に記者NのWindowsパソコンでの開通確認やスループット測定までたどり着くことはできなかった。ただ、iMacとスタッフのWindowsパソコンでは正常なスループットが確認できていること、また記者NのWindowsパソコンでも事前に接続は確認できていることを考慮。DHCPのトラブルが解消されるまで待っているのは時間の無駄なので、記者Nはひとまずこのあたりで設置工事を終了してもらうことにした。「正常に設置完了」という選択肢にチェックが入っている書類に、やや戸惑いながらもサインを入れた。DHCPのトラブルに手間取り、作業時間は2時間10分にも及んだ。

 そこで気になるのは、工事料金である。「Yahoo! BB提供サービスならびに料金一覧 」にある通り、「初期導入オプションサービス」では作業時間30分につき8,800円が発生する。「ADSLモデムおよびスプリッター取り付け工事」については先着100万名まで無料提供ということなのでこのぶんの30分間はいいとして、残りが1時間40分もある。単純に計算すると、たったこれだけの作業のために3万5,200円の料金が発生することになるわけだ。

 そこで工事スタッフの方に「工事料金はどうなるのか?」とたずねてみたが、派遣スタッフのためなのか、料金体系について詳しいことがわからないらしい。「ADSLモデムおよびスプリッター取り付け工事」は無料のはずだということを確認しようにも、「え、そうなんですか?」と逆に聞かれてしまった。

 そこで、30分単位で作業料金が加算されることを説明。工事料金がいくら請求されるのか心配していると述べると、「今日は1件しか担当がないので、(時間超過については)私のほうから会社には何も言わないですから」との回答。多分、親切で言ってくださったのだろうが、それでも懸念材料は残る。すなわち、スタッフの方が何も報告しなければ、予定通りの作業を行なったことになり、「パソコン、ADSL接続初期設定等」の30分ぶんの料金が発生してしまうのかではないかということだ。

 「Yahoo! BB提供サービスならびに料金一覧 」によると、「パソコン、ADSL接続初期設定等」というサービスでは「LANカード取り付け工事を除く各種設定」を行なうという説明があるのみだ。「各種設定」というのは果たしてどこまで含まれるのか?

 ヤフー広報室に確認したところ、「大きく分けて2つ、“お客様のパソコンの初期設定”“お客さまのPC上での開通確認”」が該当するという。また、ウィルス対策ソフトを使っていて速度が出ない場合などの原因説明や設定変更などについても、「作業員のできる範囲である程度臨機応変に対応します。ウィルス対策ソフトの件もおおむねそのうちに含みます」との回答だった。

 これと今回の作業内容と照らし合わせて考えると、スタッフの方が「パソコン、ADSL接続初期設定等」の作業をきちんと行なってくれたかどうか、大いに疑問が残る。Windowsパソコンにおける開通確認までたどり着けなかったし、ウィルス対策ソフトの問題についても対応はしてもらえなかった。30分の8,800円でさえ払いたくないというのが正直なところだ。

 確かに、DHCPトラブルで接続できなかったため600kbps問題が再現されなかったということはある。もし、スタッフの方がこれを目の当たりにしていたら、いろいろと調べてくれたかもしれない。しかし、「ウイルスバスター」という具体的なソフト名まで挙げても何も“反応”してもらえなかったということで、工事スタッフが作業内容に見合っただけの知識やノウハウを持っているのかどうか疑問を抱かざるを得ない。「作業員のできる範囲で」ということだが、そのあたりの情報共有をスタッフ間であらかじめ行なっておくべきではないのだろうか。

●DIY設置と「初期導入オプションサービス」、どちらを選ぶべきか?

 冒頭でも述べたように、今回紹介したのはあくまでも記者Nが体験した一例であり、Yahoo! BBの「初期導入オプションサービス」がすべてこんな調子だと言っているのではない(むしろ、記者Nだけがたまたまこういう例にあたってしまったのだということを祈りたい)。

 ただし、たまたまとはいえ、いちユーザーとしてこんな目にあったら、誰でもあまりいい気持ちはしないだろう。また、記者N宅の場合はモジュラージャックが1つしかない単純な電話配線の賃貸マンションだったからよかったが、複数のモジュラージャックがある複雑な電話配線の戸建て住宅などについては、何かトラブルが起こった場合、この程度のスキルで適格な処置が行なえるのか疑問だ(記者N宅でもトラブルは起きたが、それはパソコンやDHCPサーバー/クライアントの問題であり、電話工事の知識や経験とは別の部分だった)。

 申し込み時のアンケートにはモジュラージャックの数やホームセキュリティの有無を答える項目があったが、もしかしたら、これらの状況を元に工事の難易度を割り出し、派遣するスタッフの“グレード”を変えているのだろうか? 工事スタッフについてどういう体制をとっているのか、Yahoo! BB側に詳しく確認する必要がありそうだ。「DIY設置と『初期導入オプションサービス』、どちらを選ぶべきか?」という問の答を出す前に、次回はこのあたりを取材してレポートしたいと思う。

 なお、記者NのWindowsパソコンは工事の“完了”後、数時間経ってから試してみたところ、何事もなかったようにIPアドレスを取得、インターネットに接続することができるようになった。

 後日、DHCPの不具合をYahoo! BBテクニカルサポートセンターに報告したところ、「IPアドレスの取得は、最初の接続時、時間がかかる場合があります。一度取得いただければ、長期に渡りモデムの電源を落とさない限り、ご利用いただけます」との回答をいただいた。

 一方、記者Nはセキュリティ対策がどうなっているのか不明のため、使わないときはパソコンおよびモデムの電源を落とすようにしているが、その後1週間ほど経ってもIPアドレスが取得できないという現象は起こっていない。また、「ウイルスバスター」対策も施したところ、最大で5Mbps近いスループットが得られるようになり、通信品質については今のところ大いに満足している。

 工事料金が発生するのかどうかについては、Yahoo! BBのカスタマーサポートセンターにメールで問い合わせている最中だが、今のところ回答は届いていない。今思うに、記者Nは安易に工事完了の書類にサインしてしまったのだろう。それについては少し後悔しているが、まあ、これだけ記事のネタを提供したのだから、いざとなったら取材経費として会社に請求しようと思っている。

※レポート続編は近日中に掲載予定です。

◎関連記事
Yahoo!BB、本誌記者宅に導入してみました~その1
Yahoo!BB、本誌記者宅に導入してみました~その2

(2001/8/15)

[Reported by nagasawa@impress.co.jp]


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