【セキュリティ】

「PGP開発に悔いなし」~テロ事件を受けてZimmermann氏が声明を発表

■URL
http://www.philzimmermann.com/news-Response_WashPost.shtml


Phil Zimmermann氏

 米国で発生した同時多発テロ事件で、テロリストが連絡を取り合うために暗号ソフト「PGP」を使った可能性について現在捜査が行なわれているが、PGPの開発者であるPhil Zimmermann氏は24日、「私はPGPを開発したことで悔やんではいない」との自らの立場を明らかにする声明を発表した。

 これは21日付の米Washington Post紙がZimmermann氏がPGPの開発を悔いているとも受け取れる記事を掲載したことを受けたものだ。この記事はWashington Post紙のAriana Cha記者が書いたもので、そこには「彼はこの一週間罪悪感のために打ちひしがれている」と記されている。これについてZimmermann氏は「そのようなことについてインタビューの中で指摘したことはない」と言明、また「この誤解は深刻なものだ。なぜならもしそうであるなら、プライバシーを守り、情報化時代の中で市民権を守る暗号の重要性に関する私の主義主張を、テロリストの脅迫によって覆したことになるからだ」と指摘した。その上でZimmermann氏は「私はPGPを開発したことで何一つ悔やんではいない」と彼自身の考えをはっきりさせた。

 Zimmermann氏はこのテロ事件を受けて誰もがしたように彼自身も非常に心を痛めたことを認めている。しかしそれはPGPを開発したことを悔やんでのことではなく、この悲惨な事件と巻き込まれた人々への気持ちからだった。

 彼は声明文の中で1990年代に暗号ソフトが政府によって規制されるべきか否かを巡る議論を読者に思い起こさせている。この議論は、ホワイトハウス、国家安全保障局、FBI、裁判所、議会、コンピューター業界、市民権運動、マスメディアを巻き込んだ大規模なものだった。この議論の中では当然ながらテロリストが暗号ソフトを使う可能性についても議論され、実際それはこの議論の中心的な議題だったともいえる。こうした大規模な議論が行なわれた後でやっと政府は暗号ソフトの輸出規制を緩和する結論に至った。これについてZimmermann氏は「私はこれは良い決定だったと感じている。なぜなら我々は時間をとったし、非常に幅広いエキスパートたちも決定に参加したからだ。現時点の感情的なプレッシャーが存在するなかで、もしわれわれがそれほど注意深く行なった決定を差し戻すというような無分別な決定をするのならば、そのことは我々の民主主義を傷つけるだけでなく国家の情報基盤の稀弱性を広げるようなひどい間違いへと我々を導くことになるだろう」と国民に冷静さを呼びかけた。

 報道によれば、現在幾人かの議員が裏口(バックドア)をつけた上で暗号の使用を認めるような法律の制定に意欲を見せているとされるが、Zimmermann氏はPGPにそのようなバックドアを作ることを黙って見過ごすようなことはしないと利用者に請け負っている。Zimmermann氏は商用PGPソフトを開発しているNetwork Associatesを退社したが、その裏にはPGPにバックドアをつけるよう会社から圧力を掛けられたことが原因の一つとしてあったのではないかと噂されていた。

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(2001/9/25)

[Reported by taiga@scientist.com]


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