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■URL
http://www.jaipa.org/ (日本インターネットプロバイダー協会)
社団法人日本インターネットプロバイダー協会(JAIPA)の地域ISP部会主催によるセミナー「地域ISPの集い in 新潟」が10日、新潟市で開催された。今回のテーマは「地域IX」だ。
政府が掲げる「e-Japan戦略」には、「教育の情報化」と住民基本台帳をはじめとする「電子政府」などがある。それを実現させるためには、国内の隅から隅までインターネットへの接続を提供しなければならない。そこで必要となってくるのが、「地域ネットワーク」と「地域IX」だ。NSPIXP2やJPIXがプロバイダー同士を対等に接続するIX(Internet eXchange)であるのに対し、地域IXは地域内の通信をやりとりすると同時にインターネットへの接続も提供するIXだ。
麗澤大学の教授である林英輔氏 地域IX研究の第一人者 |
地域ISPの集いでは「地域情報化と地域IX」と題して、麗澤大学 情報システムセンター長 工学博士の林英輔教授によるセミナーが行なわれた。
林氏は、地域ネットワークを構築する場合、都道府県庁を中心として各合同庁舎などにアクセスポイントを持たせた「分散型の地域IX」が望ましいと提案した。IXの各アクセスポイントには市町村役場や税務署など公的機関が接続する形だ。そして、学校についてはウェブコンテンツのフィルタリングを都道府県で1か所程度で行ないそこから接続するという、他の公的機関とは別のネットワークを構築するのが望ましいと提議した。末端である「住民」へのインターネット接続については、行政の情報化ばかり考えられており、公的資金の投入がないことも指摘した。
また、セキュリティーを向上させるためにも地域IXが必要だと語った。住民基本台帳を市町村同士などがやりとりする場合、情報がネットワークを流れることになるため、VPNを使って暗号化を行ないセキュリティーを高めるわけだが、より一層のセキュリティーの強化が必要となってくる。VPNとIXの経路設定を組み合わせることにより、より高度なセキュリティーを保つことができると地域IXの必要性を改めて指摘した。
林氏は地域IXの必要性を1995年から唱え続けている。1997年には日本初の地域IXを運用を山梨で開始。その後、富山、仙台と立て続けに運用が開始された。今後は、光スイッチング、VLAN、MPLSを用いたIXの研究を続けるという。インターネットの技術がそうであったように、将来的には行政や大学の研究所主導のIXの設置や運用はすべて民間に任せなければならないと指摘してセミナーを終えた。
JAIPA副会長である群馬インターネット福田晃氏 |
受付でこの無線LANアダプターを取りパソコンに設置する。これにより、受付を行った人以外の利用はできなくなっている。 |
続いて、JAIPA副会長である群馬インターネット株式会社の福田晃氏が総務省の電気通信審議会へ提案した内容を発表した。その中で福田氏は「バックボーンの高速化と低価格化なしにはブロードバンドは実現しない」ことを提示した。地域ISPが大手ISPから6Mbpsのバックボーンを借りる場合、月額100万円程度かかる現状を説明。アクセスラインであるADSLの低価格化が進む中、それを支えるためのバックボーンの価格があまりに高額なことを指摘した。また、通信の自由化の中で1種と2種の通信事業者の区別がなくなってきており、1種の業者はインフラ部門とISP部門を分割する必要があり、1種の業者はバックボーンのみを運営する“0種”を新たに設けて、1種2種とも0種の業者から平等にバックボーンを購入すべきと提案した。これにより、バックボーンの低価格化が進むのではないかということだ。
なお、「地域ISPの集い」会場近く、JR新潟駅には「メディアステーションbanana」と名付けられた待合室が設置されている。これは地元企業3社(JR東日本新潟支社、新潟日報、新潟放送)が共同設置したもので、3社のPRが流れるマルチビジョン、新潟放送のAMラジオスタジオ、そして8台のインターネット端末が設置されている。また、新潟日報からの号外をbanana内で印刷して駅内で配る試みも行なわれている。実際、先日の米軍を中心に行われたアフガニスタンへの空爆のニュースも配布された。新潟市に立ち寄った際にはぜひ覗いてみてはいかがだろう。
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(2001/10/11)
[Reported by adachi@impress.co.jp]