【レポート】

Bluetoothによる新幹線内コンテンツ配信実験体験レポート

■URL
http://www.jr-odekake.net/bluetooth/
http://www.b-l-t.org/

 西日本旅客鉄道株式会社(JR西日本)が、山陽新幹線内でのコンテンツ配信サービス提供に向けて、11月8日よりBluetoothを利用した実験「レールスターおでかけネット」を開始した。これは、日本エリクソン株式会社やハンドスプリング株式会社が推進する「B.L.T.(Bluetooth Launch Trial)プロジェクト」の一環で、JR西日本が運行する新幹線「ひかりレールスター」車内で情報コンテンツの配信をするものだ。

 今回は、実際に博多より新大阪までレールスターに乗車し、実験を体験してみたのでレポートする。

●「レールスターおでかけネット」とは


常駐スタッフに声をかけて

 この実験は、新幹線内にコンテンツサーバーを設置し、PDAなどの端末に対してBluetoothを利用して情報を配信するもので、誰でも無料で実験に参加することができる(乗車券・特急券代は別として)。実験は、11月8日~12月20日までの毎週火曜と木曜に運行される「ひかりレールスター367号」(新大阪発博多行き)と、「ひかりレールスター378号」(博多発新大阪行き)の8号車車内のみで実施される。実験のガイドペーパーによると、「新幹線の移動時間をもっと快適に、もっと楽しく過ごしていただきたい」という思いから生まれたという。

 この「ひかりレールスター」とは、「のぞみ」で使用されている700系新幹線をベースに、JR西日本山陽新幹線のエースとして平成12年3月より投入されたスペシャル新幹線だ。例えば、普通車指定席でもゆったりと座れる2&2の4列サルーンシートや、コンセントが使えるビジネスシート、4人用コンパートメントなどが用意されている。その他、車内放送がないだけでなく、車掌や車内販売も声を出さずに回ってくるサイレンス・カーなど、リラックスできるサービスに重点を置いた新幹線であるにもかかわらず、通常の「ひかり」と同じ料金で乗車できる。

 アクセスポイント(AP)は、車両前方および、後方のドア付近天井2ヶ所に埋め込んである。1APにつき7台までの端末が接続可能だが、実験では1APあたり5台程度の接続にしている。Bluetooth対応のノート型VAIOを持ち込んでみたところ、接続は可能だったが、PDAモニターの帯域確保のため参加を断られてしまった。なお、インターネットには接続できないので、実験モニターとしてはPDAだけで十分かもしれない。

このキオスクにサーバーが?

ユーザーによる端末モニター実験のほかに、岡山駅で車内のコンテンツサーバーの情報を無線LANを使って更新する実験も行なわれている。このため、岡山駅の8号車停止付近にあるキオスク内にアンテナと配信サーバーが設置されている。「レールスター」が岡山駅に入線すると自動的に接続が開始され、更新コンテンツが圧縮された形で送信される。8号車コンパートメント内に設置した車内サーバーで受信されたデータは、解凍され上書き更新作業が実施される。岡山停車時間はわずか1分だが、担当者によると、ニュースと天気予報の更新だけなので列車が停止するころには通信は終了しているという。正式にサービスが開始されれば、主要駅もしくは全駅でのコンテンツアップデート作業がされることだろう。

 

●車内で配信される情報コンテンツ一覧


 コンテンツは大きく10ジャンルにわかれている。基本的にはHTMLをベースにした、テキストと画像による情報提供で、ストリームによる動画を扱うものもある。

車両案内:
「ひかりレールスター」のサービスについての紹介。ストリーム配信を使った動画コンテンツも3つ用意されている

駅情報:
新幹線の停車駅構内の地図が見やすくまとめられている。在来線への乗り換え案内やレンタカーの受付カウンターの場所などを事前にチェックできる

時刻表:
停車駅からの「こだま」への乗り継ぎ案内のほか、時刻表検索などが用意されている

車内販売サービス:
社内販売メニューと値段表が表示される。だが、PDAから直接注文できず、購入は社内販売員「スタークルー」が回ってくるのを待つしかない

新幹線窓際探検隊:
駅間に車窓から見える景色にちなんだストーリーを写真とテキストで紹介。「春の海に遊ぶ、幻の明石原人」、「姫路城を23円50銭で買った話」など全19話

駅弁図鑑:
駅弁の発売駅や値段、販売会社の問い合わせ先情報などを掲載。全弁当とも写真付き

ニュース:
「共同通信ニュース速報」(岡山での更新対象)と「産経新聞朝刊」をテキストで配信

駅天気:(岡山での更新対象)
各停車駅の今日、および明日の天気予報

So-netチャンネル:
3分程度のストリーミング番組。すでに東京・お台場の「www. so-net/cafe」などで実施されている「B.L.T.プロジェクト」のものと同じ

その他:
雑学知識の読み物「もの知り百科」(読売新聞大阪本社提供)と、占い「dogstyle 週間愛犬占い」(株式会社ボーナスプレス提供)の2つ

インデックスページ
駅構内図
在来線乗り換え案内
新幹線乗り継ぎ案内
駅弁は写真入りで
窓際探検隊

●新幹線ネットに望むもの


 従来の新幹線車内での時間の過ごし方といえば、本や雑誌を読んだり、音楽を聴いたり、駅弁を食べたり、寝たりというのが定番だった。「レールスターおでかけネット」は、新たに暇つぶしの選択肢を増やすことが確実にできるだろう。例えば、何気なく車窓を流れる景色を見ていて、「あれはなんだろう?」と思う建物や地形がある時に、「新幹線窓際探検隊」のようなコンテンツは面白い。また、車内販売のお姉さんは、気がつくと通り過ぎてしまっていて、何を売っているのかわからないことが多い。販売品リストを見ながら、予約注文ができれば車内販売が通り過ぎてしまった後に悔しい思いをすることが減るだろう。

 だが、実証実験ではBluetoothの脆さも露呈した格好だった。頻繁にページを切り替えたり、ストリーム動画のように負荷がかかる動作をすると接続が切れる。これは、Bluetoothの規格が弱いというよりは、むしろ受信カードの処理能力がボトルネックになっていることに起因している。実験ということでAPの数が少なく、接続性が安定していなかったり、ノートPCからの体験ができなかったのが非常に残念だ。

 さらに言えば、車内のコンテンツサーバーに蓄えられた情報を閲覧するだけなら、Bluetoothや無線を使わなくても、座席にタッチパネルのモニターを用意して有線で行なっても構わないだろう。無線を使えば、使い慣れた持ち込みの端末で参加できるが、実験のようにインターネットに接続できないのは不十分だと感じた。

 新幹線車内での情報配信という試みそのものは面白いものであり、近い将来サービスが開始されるだろう。その際には、ぜひともインターネットへの接続にも対応して欲しい。

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(2001/11/8)

[Reported by okada-d@impress.co.jp]


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