【レポート】

Bluetoothを使った公衆インターネット接続実験「B.L.T.」開始

■URL
http://www.b-l-t.org/

 8月27日より、東京・丸の内にある「MARUNOUCHI CAFE」とお台場の「www. so-net/cafe」の2ヶ所で、Bluetooth機器を使ったインターネット接続実証実験「Bluetooth Launch Trial」(通称B.L.T.)が開始された。実験では、ノートPCやハンドヘルド端末からのインターネット接続と、コンテンツ配信の検証が行なわれる。期間は約3ヶ月で、実験会場のモニター機を使って体験できるだけでなく、Bluetooth対応機器を所有しているユーザーは、自分のノートPCなどを持ち込んで参加できる(要事前登録)。また、上の2ヶ所以外にも、山陽新幹線「ひかりRail Star」の車内(11月より)、および東京・秋葉原の「カクタソフマップ」(時期未定)で実験される予定だ。

 今回は、実際に「www. so-net/cafe」と「MARUNOUCHI CAFE」に行き、B.L.T.を体験してきたので、レポートしたい。

■B.L.T.とは


卓上型BLIP。イーサx1と底面にシリアルx1を備える

 B.L.T.とは、Bluetoothを使ったホットスポット(人が集まるところ)サービスだ。エリクソンの開発したBLIP(Bluetooth Local Infotainment Point)コンセプトに基づいたLAN接続を提供しており、理論値での回線速度は721kbpsだ。システムの構成は、Bluetoothを搭載したノートPCとハンドヘルド端末、アクセスポイントとなるBLIP、B.L.T.全体向けのグローバルコンテンツや、実験会場ごとのニッチなコンテンツを配信するデータセンターで構成されている。

 コンソーシアム企業として、日本エリクソン株式会社、丸紅株式会社、およびハンドスプリング株式会社が中心となって活動しているほか、パートナー企業として、ソニーコミュニケーションネットワーク株式会社(So-net)、コンパックコンピュータ株式会社、日本ヒューレットパッカード株式会社などが参加している。

 コンテンツ配信の実証実験に関しては、グローバルコンテンツとして、「So-netチャンネル」のB.L.T.バージョンを配信する。これは、どのB.L.T.実験会場からもアクセス可能な、3分程度のストリーミングコンテンツ集だ。視聴には、Windows Media Playerを使う。

■www. so-net/cafe http://www.so-net.ne.jp/cafe/


 お台場メディアージュ5階にあるインターネットカフェ「www. so-net/cafe」では、20台のBluetooth接続用のアクセスポイントが準備されている。「www. so-net/cafe」といえば、店内全域を無線LANで接続しており、Bluetoothとの干渉が心配されるところだ。対応してくれた日本エリクソンの河村京子Bluetoothソリューションズアシスタントプロダクトマネージャーによると、「Bluetooth機器と無線LAN機器を横に並べてインターネットに接続してみたところ、干渉している様子は感じられなかった」という。

 Bluetooth接続による「www. so-net/cafe」内の回線速度はおよそ100kbpsだが、実際にストリーミングコンテンツを再生したところ49kbpsで再生された。11Mbps出る802.11b準拠の無線アクセスがこなれてきたノートPCによる接続では、若干反応が遅いかな、という印象を受けたが、普段64kbpsのPHS接続や9.6kbpsの携帯電話による接続が多いハンドヘルド端末ユーザーが使えば、速いと感じるかもしれない。

モニター用一般端末 アクセスポイント トレイの中敷にもBLTが

■MARUNOUCHI CAFE http://www.marunouchicafe.com/


 丸の内のビジネス街にある「MARUNOUCHI CAFE」でも、モニター試験を実施している。ただし、一般向けの端末の貸し出し(11時~18時)は、今週中で終了するとのこと。実験2日目の利用者数をみると、「www. so-net/cafe」に比べて断然多かった。回線速度は「www. so-net/cafe」と変わらないが、店内の大きな柱の影に隠れてしまうと接続が切断されるので注意したい。

 こちらの会場では、ローカルコンテンツが充実していた。提供されているコンテンツは、丸の内のグルメ情報や、おしゃれなガジェット情報、「丸の内マップ」など。今月のグルメ情報では、丸の内で見つけた屋台特集として、どんな屋台がどの時間に巡回してくるのかなどのニッチなデータを提供している。

■Bluetoothの将来


 実験会場2ヶ所をまわって、一番期待を裏切られたのが回線速度だった。理論値の下り721kbpsが出ることはないとしても、500kbps程度の接続はできるのではないかと思っていた。だが、実際はFTPなどで100kbpsがやっと、Media Playerなど高負荷なものを利用すると50kbps程度に落ち込んでしまう。これについて日本エリクソンの担当者に聞いたところ、アクセスポイントからのデータは400~600kbpsで発信されているという。しかし、受信する側のBluetoothユニットの能力の低さでボトルネックが発生しているのだという。802.11b準拠の無線アクセスと比べてると、どうしても遅いという印象は否めない。次期Bluetoothの2.0版では、伝送速度が2~12Mbpsになるといわれているが、この規格は策定が始まったばかりで実装されるのは先のことだ。

 Bluetoothは、ノートPCや携帯電話を含んだ「あらゆるモバイル端末同士をワイアレス接続すること」を目指して策定された基準だが、NTTコムとモスバーガーが行なっている「Hi-FIBE」や、モバイルインターネットサービス社の「街角無線インターネット」などノートPCの無線接続環境の充実をみると、訴求力が弱い。

 ただし、無線アクセスに比べてBluetoothの強みは、今回のようにLANアクセスプロファイルを使ったインターネット接続だけでなく、ファイル転送やオブジェクトプッシュといった使い方を、PCやハンドヘルド機器の別なく同じ規格で使えることだ。また、軽量小型で低消費電力のBluetoothチップは、携帯電話やPDAなどに向いている。前出の河村さんも「Bluetoothを搭載した携帯電話が一般的になると、B.L.T.のような試みはもっと面白いものになると思う」と言う。まだ、実証実験が始まったばかりのBluetoothによるインターネット接続だが、その未来においては可能性がありそうだ。

BluetoothとWAPブラウザーを搭載したGSM携帯電話
Bluetooth Radioチップ
Bluetooth Moduleチップ

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■ケータイ用語の基礎知識 第44回:Bluetoothとは
http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/keyword/0,1620,4519,00.html

(2001/8/28)

[Reported by okada-d@impress.co.jp]


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