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■URL
http://www.soumu.go.jp/s-news/2001/011206_2.html
“ある事業者”によって“差し押さえ”されているという、NTT局舎内のコロケーションスペースは果たして開放されるのか? ADSL関連事業者による“コロケーションスペース差し押さえ合戦”論争が盛り上がりそうな気配を見せている。総務省の情報通信審議会は6日、東西NTTのコロケーション約款変更案について寄せられた意見を公開し、この是非をめぐる対立の構図がいっそう明らかになった。
論争のきっかけとなったのは、東西NTTによって10月末に総務大臣に認可申請が出されていた変更案で、その後、同審議会に諮問されていたものである。変更のポイントは、コロケーションスペースの“おとり置き期間”の短縮化。“ある事業者”によって大量予約されたコロケーションスペースが未使用のままとなっており、他の事業者が入り込む余裕がないところが出てきていることを受け、変更案では、未使用状態で確保しておける期限を短縮することで、スペースの効率利用を狙っている。
同審議会ではすでに11月、この変更案に対する意見募集を行ない、その結果を公表していた。今回公表されたのは、11月に募集した意見についてさらに意見を求めたものである。東西NTTやADSL事業者など19社から意見が寄せられた。
各社が指摘するポイントは複数項目にわたり、それぞれ視点は異なっているが、現在の差し押さえ合戦を引き起こした原因は、東西NTTにあるとするのは概ね一致するところのようだ。コロケーション可否の調査回答までの迅速化や、建物および電源等に関する情報開示の充実、コロケーション用のキャパシティ自体の増強などを求めている。
しかし、もっとも争点となっているのは、予約済みの未使用スペースをどう扱うのかという点である。変更案では、現在すでに調査申込中の物件についても、認可され次第、変更案を適用することが示されている。
さらに11月時点で寄せられた意見の中には、予約済みのスペースについても未使用状態であれば再割り当てに回すべきとの意見も見受けられた。急増するADSLの需要に直ちに対応するためには、“おとり置き期間”の短縮だけでは、現在起こっているコロケーションスペースの差し押さえ問題は解消できないというわけだ。また、一度に申し込めるスペースに上限を設けたり、予約済みスペースのうち稼働率が一定以上に達していなければ追加申込を受け付けないようにする規定を盛り込むべきとの意見も提出されている。
今回の再募集では、東京通信ネットワーク、メディア、ビック東海、日本テレコム、KDDI、関西ブロードバンド企画、イー・アクセスが概ね変更案を評価する立場をとっており、上限規制や稼働率に応じた追加割り当てに賛同を示している事業者も多い。裏を返せばこれらの企業は、コロケーションスペースを確保できない状況に直面していると言えるだろう。
一方、変更案の遡及適用に反対という立場を明確に示しているのが、ヤフー、ビー・ビー・テクノロジー、ソフトバンク・テクノロジー、アカマイ・テクノロジーズ・ジャパン、東京めたりっく通信、名古屋めたりっく通信、大阪めたりっく通信、アイ・ピー・レボルーション、ボックスネットである。変更案には光ファイバーの相互接続についても盛り込まれているため、これらの企業がすべてADSL設備のコロケーションを踏まえた上でコメントしているわけではないだろうが、9社すべてがソフトバンクグループ関連会社というのは興味深い。
例えば、ヤフーは「これまでも約款は周知しており、各社に機会は公平にあった。事業機会の利用に疎い事業者を救済するような約款の変更(遡及効)は、国際的競争力を備える必要性が高い通信事業にとって真の競争力強化という観点からは相反するものである」と指摘し、遡及適用や保留期間の短縮に反対している。また、ビー・ビー・テクノロジーが「弊社はあくまでも全都道府県において健全なる事業計画に基づき、より多くの利用者にサービスを提供すべく、全国レベルでの事業推進に真に必要な建物・設備等の利用を申し込んでいる」と述べていることも参考に挙げておく。
なお、今回は東西NTTも意見を提出しており、遡及適用について、建物スペースの大半が「特定の事業者で確保されているという事実が相当数の通信用建物において発生」しているとしており、「当該スペースについても保留期間短縮化の対象とすることが利用者利便の向上及び公正な競争の促進の観点から、有効である」との考えを示している。
審議会では、今回寄せられた意見をもとに審議を行ない、総務大臣に答申する予定だが、問題の解決はそう簡単ではなさそうだ。
現在“ある事業者”が確保している大量のコロケーションスペースは、各社にも“公平にあった”という手続を経て他社に先駆けて確保したものである。これが事業計画に基づいて確保されたものだとすれば、たとえ未使用であっても、これを返却するということはその後の事業推進に大きな影響を及ぼすことになる。ソフトバンク・テクノロジーでも、変更案の遡及適用は「申込後開通を待っている利用者に多大な迷惑をおかけすることになる」としている。
ただし、“ある事業者”が確保したスペースが、もしも他社の参入を阻止するための手段だったとすれば、話は変わってくる。本当に“健全なる事業計画”に基づくものなのかどうかについては、厳しいチェックが必要だろう。
今のところ、各社が提出している意見書には“ある事業者”の名前は示されていない。今後、審議を行なうにあたってはこれを明らかにした上で、各事業者の予約スペースや稼働率、事業計画、NTTの設備のキャパシティなども含めて、具体的なデータをオープンにした上での議論が必要になりそうだ。
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(2001/12/7)
[Reported by nagasawa@impress.co.jp]