|
株式会社ビーバットは21日、インターネット上のコンテンツ流通に関する著作権処理や収入分配システムの構築を目指し、2000年10月に設立した「ブロードバンドビジネスフォーラム」の成果報告会を開催した。
同フォーラムでは、コンテンツ流通市場「B-BAT」におけるビジネス検証実験として、「ayumi hamasaki DOME TOUR 2001」の有料ライブストリーム配信(7月7日)など、有料・無料を含め約30タイトルのコンテンツ配信を行なった。有料コンテンツの購入比率では、ナローバンドユーザーが60%、ブロードバンドユーザーが40%という結果となっている。
高田仁一郎氏 |
---|
ビーバット戦略企画室長の高田仁一郎氏は、「ユーザーに受け入れられるには、地上波・衛星放送にない独自コンテンツが重要だ」と語ったほか、「スポンサーを募り、リーズナブルな価格設定をしてユーザーの購入意欲を向上させることが必要」と提案した。また、課金収入分配システムのオンライン化が課題となっているという。
著作権ワーキンググループの発表では、日本音楽著作権協会(JASRAC)など著作権管理団体に対する説明会を実施し、「ビーバット社から利用許諾料の支払いを受けたい」という要望を受けたという。そこで、ビジネス検証実験のための著作権処理方法を整備するために「映像等配信著作権連絡会」を4月18日に設立したものの、参加者から「利用許諾料の支払いはビーバットにお願いしたいが、権利処理ルール作りは事業団体独自で作りたい」といった反対意見が上がったという。そのため活動は表面上停止し、路線変更を余儀なくされているようだ。そのほかには、「コンテンツ権利許諾情報管理システム」を、電通の100%子会社のメロディーズアンドメモリーズグローバル社と共同で構築中だ。
技術ワーキンググループの発表では、参加者の要望が多かった「著作権保護技術」と「課金とコンテンツ配信技術」について、サブワークグループをつくり、2000年12月より2001年7月まで月に一回のペースで活動を行なったという。
同フォーラムでは、2002年春より、第二期フォーラムとして実際にビジネス展開を行なう予定だ。現在、フレッツオンデマンドをビーバットで借り上げ、会員でシェアしながらコンテンツの有料配信を行なう予定になっている。また、コンテンツの不正利用者への対応法を検討するという。
●バーチャルアイドル伊達杏子からホリプロが教わったもの
堀一貴氏 |
---|
成果発表会に続いて開催された講演会では、株式会社ホリプロ常務取締役国際業務・著作権事業担当兼インフォネット企画室室長の堀一貴氏が、「ブロードバンドビジネスの可能性と問題点~コンテンツホルダーの視点」と題したスピーチを行なった。
インターネットによる音楽配信に言及し、ビジネスとしてパッケージ販売に勝てないと語った。「インターネットには音楽コンテンツは似合わなかった」と堀氏は分析し、その理由として「ユーザーが本当に欲しい楽曲を見つけられなかった」と語った。この傾向は、「インフラが広帯域になっても変わらない」とし、検索性の悪さがユーザーのNapsterなどへの流出をもたらしたとしている。
また、昨今の流行である動画コンテンツ配信にも言及し、「ハイスピード=動画という方程式を打ち破らねばならない」と断言した。セットトップボックスなどで「テレビ画面に動画コンテンツを流せばいいという人もいるが、茶の間での視聴に向かない。インターネット上のコンテンツはそもそもパーソナルなもので、マスでなく個人向けのコンテンツが必要だ」という。さらに、「ブロードバンドになってもテキストを忘れてはだめだ。むしろ動画はプラスアルファの部分」と提案した。
ホリプロでは、インターネット放送局「Net-TV」を開局しているが、「このTVというのは、ユーザーのイメージしやすさによるもの」として、マス向けのコンテンツではないことを強調した。アイドルファンにはブレイク前のアイドルを“青田買い”する傾向があるという前提を話した上で、「Net-TV」では、「視聴者がまさにアイドルを育てるようなオーディション番組」など、個人を志向したコンテンツを展開している。
さらに堀氏は、J-Phoneで提供しているコンテンツ「優香クラブ」を紹介し、ファンクラブのデジタル化など将来の展望を語った。携帯電話コンテンツの「優香クラブ」は、当時、Web上で無料展開していた同名コンテンツを月額100円で配信したが、会員7万人を集めるに至った。この人気を堀氏は、「ユーザーが払っている100円は、コンテンツの内容ではなくて、利便性に対するもの」だと分析する。現在ホリプロでは、Web版「優香クラブ」を有料コンテンツにリニューアル(サービス名も変更)し、デジタルファンクラブと位置付けている。運営スタッフからは、「ファンクラブという以上、会員証や印刷物(会報)といったアイテムを会員に提供すべきだ」という意見が強かったそうだが、堀氏はあえてそれをしなかったという。なぜならば、「ファンだと公言することは誰でもできるが、ファンクラブに入るという行為は、多くの人にとって恥ずかしいことなので、Webでこっそり入会できることを目指した」からだという。結局、この試みは成功し、「今後、ファンクラブを全部デジタル化したい」とのことだ。
ホリプロでは、インターネット事業として金沢工業大学と共同で、Webサイト「高校生のためのエンターテインメント工科大学」を開設した。ホリプロ所属のバーチャルアイドル伊達杏子をイメージキャラクターに、自然言語(口語文)と音声によるナビゲーションを展開している。堀氏は、「ヒューマンインターフェイスが本格的に稼動し始めることで、ユーザーが欲しい情報を得られやすい時代になるかもしれない」という。
最後に堀氏は、「ホリプロが、誕生してから全く稼がなかった伊達杏子から教わったことがある。それは、技術(伊達杏子は当時の最新3DCG技術で作られた)だけでは人を感動させることができないということだ。これをブロードバンド時代に当てはめれば、スピードだけでは人を楽しませることができないということだ」とコメントした。
◎関連記事
■日テレ他、コンテンツ保護・管理システムのビジネス検証実験を5月に開始
■日本テレビ、NTTら3社、映像コンテンツの流通に向けた市場の構想を発表
(2001/12/21)
[Reported by okada-d@impress.co.jp]