【イベントリポート】

「プローブ情報利用推進フォーラム」を開催
~“インターネット自動車”は事業化できるのか?

■URL
http://www.jsk.or.jp/ (自走協)
http://www.utms.or.jp/ (UTMS協会)

 財団法人自動車走行電子技術協会(自走協)と社団法人新交通管理システム協会(UTMS協会)は20日、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)にて「プローブ情報利用フォーラム」を開催した。「プローブ情報」とは、実際に走行している自動車から、速度や位置などのデータを無線ネットワークを通じてリアルタイムに収集し、渋滞情報や天候情報などのサービスに活用しようというもの。ここではいわゆる“インターネット自動車”が利用される。フォーラムでは両団体が進めていた横浜での「プローブ情報システム(愛称:IPCarシステム)」の共同実験の報告と、パネルディスカッションが行なわれた。

 

●複数の情報を組み合わせる必要がある


東京都立大学大学院工学研究家の大口敬氏

 フォーラムでは、「プローブ共同実験結果の概要と考察」について東京都立大学大学院工学研究家の大口敬氏が講演を行なった。まず、現状の交通制御システムとして、特定の車を認識して一定区間の車の流れを調べる「AVI」や、車の交通量を調べる「超音波センサー」と「光ビーコン」を挙げた。その上で同氏は、「現状の測定機器は“点”(交差点など)の情報を得るものだが、プローブは“線”(道路)の情報を得るもの」だと違いを述べた。

 現状のシステムと比較してプローブでは、走った場所すべての情報を得ることができるほか、実際の道路の状況を収集しているのでより正確といった特徴があるという。

 具体的に実施した実験として、12月18日に実施された横浜市吉野町~関の下交差点間で行なった集中走行実験について紹介した。この区間は、渋滞が発生したり迂回ルートがあるなどの理由から選ばれたという。自動車からの情報としては、GPSを利用した位置情報、絶対方位、2秒毎の平均速度、パーキングブレーキ、ハザードランプ、ウィンカーの使用状況などを収集したとのこと。

 この実験の目的としては、道路特定の精度調査が挙げられるという。今回の実験では、道なりに走った場合の道路の特定率は98.6%とかなり高かった。しかし、迂回ルートを使うと途端に77.1%まで落ちたという。これを補うためウィンカー情報を組み合わせると、83.7%にまで上がったとの結果を得た。

 

●プローブは事業化できるのか?


 次のパネルディスカッションでは、株式会社三菱総合研究所ITS事業部の目黒浩一郎氏より「プローブ情報システム上で想定されるビジネスモデル」と題したプレゼンテーションが行なわれた。

 目黒氏はビジネスモデルを構成する3要素を挙げた。1つは、「誰にどんな価値を提供するか」。ここでは例として現在のところ、道路交通管理者を対象に補完データとして提供することが考えられるという。

 2つ目は「どのように価値を産み、提供するか」。プローブカーからの膨大な情報をいかにして有益な情報に加工できるかが重要であるとした。

 3つ目には「誰からどのようにお金をもらうか」を挙げた。道路情報は無料が当たり前であるという現状から、「利用者からいかにお金をもらわない仕組みとするかが重要」とした。その1つの方法として、プローブカーの利用ユーザーに対しては無料でサービスを提供するなどといった「情報の交換」があるという。

 また、プローブの類似システムとして、「運輸会社の管理システム」を挙げた。運輸会社では各トラックに速度や位置などのセンサーを設置。それらの情報を収集して適切な形に処理をし、各トラックへ運行情報として配信しているという。運輸会社の運行管理システムの必要経費(車載機や通信費など)を計算すると1台あたり月額1万円かかっている事になるが、経営者はそれほどの価値を認めているという。

 今回のフォーラムでは、「プローブは本当に事業化できるのか?」という質問が多く出た。その答えとして「旅行情報に加えて音楽配信なども組み合わせるなどの工夫も必要」とした意見もあった。

 また、プローブは大量の情報を集めてこそ有効だが、そこには個人のプライバシーに関わる問題も多くある。その解決のため、プローブサービス業者との取り決めで「個人情報の利用範囲」を明確にすることが必要だという意見も見られれた。

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(2002/3/21)

[Reported by adachi@impress.co.jp]


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