【コンテンツ配信】

角川書店とNTT、双方向性を重視したWebシネマ配信実験を開始

■URL
http://www.vi-click.com/
http://www.ntt.co.jp/news/news02/0203/020325.html

 株式会社角川書店とNTTサイバーコミュニケーション総合研究所は25日、ストリーミングによる動画配信と同時に、視聴者がさまざまな仕掛けをクリックしながらサブストーリーを楽しめるWebシネマ配信実験「Vi!Click」を30日から開始すると発表した。対象ユーザーは、東京都内と大阪府内に住むBフレッツ、フレッツADSLユーザーで、視聴は無料だ。実験期間は、5月31日まで。

 今回の実験で配信されるコンテンツは、小池真理子原作のリアルホラー「命日(前編19分・後編21分)」と、五十嵐均原作のシニカルコメディ「セコい誘拐(32分)」の3コンテンツ。実験開始と同時に、まず「命日」の前編が公開される。「命日」の主な出演者は、山口紗弥加や水川あさみ、「セコい誘拐」には益岡徹、石橋蓮司、藤崎奈々子などが出演する。配信ビットレートは、3Mbpsと500kbpsの2種類。専用の「Vi!Clickプレーヤー」(Windows版のみ)を事前にダウンロードする必要がある。

 「Vi!Click」では、さまざまなインタラクティブ性を重視した仕掛けが提供される。専用プレーヤーの上部に本編動画がストリームで配信され、ムービーと同期して“ビジョンマーク”と呼ばれるアイコンがプレーヤー下部に出現する。仕掛けには、ムービーの登場人物にカーソルを乗せると、登場人物がその時何を考えているかといった心理状態を別窓で表示する「DynaVideo」、主人公の視点になり屋敷内を歩いたり、アイテムを操作するとそれに関連したムービーが再生される「CyberCoaster」、劇中で登場人物が撮影した写真のアルバムと本編動画が連動して再生される「SyncBook」、再生中のシーンにちなんだ「監督秘話」ムービーなどが用意されている。「命日」の場合、本編40分に対して、インタラクティブシーンだけでも15分程度の別撮影をしたという。

ムービーと同期して登場人物の感情がわかる。娘の彼氏を前にした父親の心境などセリフで表現できないシーンも 箱の中から赤いワンピースを取り出すと、それに関連した思い出のムービーが再生される アルバムの写真を選択すれば、そこからムービーが再生される

 また、本編終了後には、「SyncBook」を利用した「衣装カタログ」など、広告・EC事業の要素を含んだ実験も盛り込まれている。衣装カタログに収録されている写真をクリックすると、実際にそれが使用されたシーンのムービーが再生される仕掛けだ。TVで放送されるドラマや、映画などのエンドロールに、衣装協力会社がクレジットされることがあるが、インターネット配信ではより密接な結びつきが実現できそうだ。

マウスをドラッグすることで、屋敷内を歩き回ることができる。ある場所を通り過ぎてから、戻ってくると映像が変わっているなど細かい仕掛けも 足の不自由な女の子の霊が迫ってくる中央のメインムービーをクリックすると、さまざまなサブムービーが再生される 衣装カタログ。価格や連絡先が掲載されている上、実際に役者が着ているムービーを参考にできる

 角川書店の角川歴彦代表取締役社長は、「映画はデジタル化を残して、もう進化しないと言われていた。今回の革新的な試みで、伝統的な映画から一歩進んだ双方向映画を目指したい」と語った。また、NTT研究所の白川英俊所長は、「ある意味無謀で、非常にチャレンジしたコンテンツ配信だ」とコメントした。インタラクティブ部分に関して、両作品を監督した明石知幸氏は、「時間やスポンサーなどのさまざまな制約で、視聴者に見せられなかったバックグラウンドまで見せられる点が非常に面白かった。視聴者の大多数が15インチ程度のノートPCユーザーと想定して、面白い演出ができたと思う」と感想を述べた。

角川歴彦氏 白川英俊氏 明石知幸氏

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[Reported by okada-d@impress.co.jp]


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