【コンテンツ配信】

「たった1分間でも視聴者を満足させられる」
~AVがデジタルメディア展開に向いている理由~


 本誌3月25日号の特集では「AVはブロードバンドの“キラーコンテンツ”なのか?」というテーマで、アダルトコンテンツの配信に携わっている方々にお話をうかがったわけだが、各社とも一様に、そのようなとらえ方について違和感を示しているのが印象的だった。

 AVのネット配信という市場を確立するためには、確かにネットならではの見せ方や仕掛けが欠かせないとの指摘もあった。しかし、素材のままでも十分に需要があるAVは、普遍的なキラーコンテンツであるに過ぎず、それがブロードバンドだからといって特別に大きな市場が期待できるものではないという結論になるだろうか。

 とはいっても、AVは実際のところ、他のジャンルと比べて見ればネット配信への取り組みが素早いことは確かである。これはブロードバンドに限ったことではなく、ナローバンドにおいてもそうだった。また、インターネットのみならず、PCをプラットフォームとするかつてのCD-ROMやビデオCDについても当てはまったことだ。これらのデジタルメディアとAVの間には、相性のよい理由が存在するはずなのである。


 その一つとして指摘されるのが、権利構造が非常にシンプルであるという点だ。映像をネット配信するビジネスとしてどこでも真っ先に思いつくジャンルは映画やテレビ番組あたりだろうが、出演者や制作会社、音楽家など権利処理が多岐にわたることがネックとなっているという。

 これに対してAVは、「めちゃくちゃ簡単なんですよ」とアルケミアの五十川匡取締役最高業務責任者は説明する。具体的には、「AVメーカーがオールライツを持っています。女優さんや制作スタッフも含めて、2次使用権はすべてメーカーにあるという契約。JASRACへの申請が必要な曲も使いません。もちろん一部に例外はありますが、基本的にはそういう考え方で、AVメーカーはタイトルを作っています」。

 もちろんこれは、タイトルを調達してくる配信事業者にとってはありがたいことだ。有線ブロードネットワークスブロードバンドコンテンツ部の高田正行次長は、「映画や音楽と一様に並べて考えるのは、背景的に違う」と前置きしながらも、「最初の契約書の中で一元的に処理されていので、著作権者が少ない分、許諾作業そのものは非常に早い」と、メリットがあることを認めている。

 ただし、このメリットもタイトルを調達するという段階の話だ。「総務省や警察庁を含めて、『こんなことやりますけど、どうですか?』というようなある種の確認作業は随時やっているんですよ。また、いわゆる倫理規定についても独自に社内で設けています。(ネット配信については)他に実例がなかったりもしますので、(倫理規定の策定作業は)手探りになりますよね。アダルトを実際にサービスとして配信するために必要な諸要素でいうと、それはもう、映画や音楽よりははるかにステップの多い作業だと思います」(高田次長)。

 いずれにせよ、高田次長は「うちもアダルトの作品を闇雲に増やすつもりではないので、どちらかというと、(権利処理がシンプルだという)そのメリットは十分に使っていないかもしれません」と述べている。


 このように、権利処理がシンプルであるため調達しやすいということは、一つの要因に過ぎない。五十川取締役はさらに、「もう一つ、いろんなメディアに対応しやすいということ」が大きいと指摘する。

 「AVって1タイトルが60分間あるいは90分間ありますが、それって実は最初から最後までしっかり見なければならないという理念のものじゃないんですよ。部分部分を取り出して見ても、視聴者の方にとって興味が持てる内容であれば、極端な話、その中の5分間とか1分間だけでもコンテンツとして生きてくる。一方、映画だと2時間、最初から最後まで見なければいけない」(五十川取締役)。

 ここで五十川取締役は、かつてのビデオCDの事例を挙げ、「これは70分しか入りません。したがって『映画は入りません、ダメですよね」ということになった。しかしAVだったら、もともと60分間程度っていうこともあるんですが、60分間のAVを10本集めてきて、それぞれ5分間ずつ突っ込んでしまおうということが可能なわけです」と説明する。

 これは、インターネットでも同様だという。今度は容量の制約ではなく、「PCベースという制約」である。「視聴するときに『PCパソコンの前に2時間じっと座って映画見てますか?』ってきいたら、誰も『見ない』って言うと思うんですよ。私は見ません。でも、アダルトの場合は60分間のタイトルの中で、自分の好きな5分間あるいは1分間を探し出せればいいわけです。『切り刻める』という言い方をすると失礼かもしれませんが、AVは切り刻みやすいんですよ」。ビデオCDだけでなく、CD-ROMでも「ハイライト集」という商品が流行したが、「それと一緒で展開しやすいんですよ、やっぱり」と五十川取締役は述べている。

 同様の制約からだろうが、映画のネット配信では現在、ショートフィルムというジャンルが注目されている。それに対して、たった1分間でも視聴者のニーズを満足させうるAVというコンテンツは、ネット配信との相性のよさではショートフィルムの比ではないかもしれない。AVがブロードバンドのキラーコンテンツになるかどうかは別として、ネット配信への取り組みが素早いというのもおおいにうなずけるわけである。

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特集 AVはブロードバンドの“キラーコンテンツ”なのか?

(2002/3/26)

[Reported by nagasawa@impress.co.jp]


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