【業界動向】

インターネットラジオが死滅する!? ~著作権使用料率で米業界が猛反発

■URL
http://saveinternetradio.org/ (SaveInternetRadio)
http://www.loc.gov/copyright/carp/webcasting_rates.html (CARPの報告書)

「Save~」のWebサイト
 米国のインターネットラジオのほとんどが、5月21日で営業を停止する……こんな事態を招きかねない状況が米国で起こっている。インターネットラジオ局に対する音楽著作権使用料が、法外な料率に設定される可能性が高まっているためだ。

 米著作権庁(US Copyright Office)は、2000年12月に「デジタルミレニアム著作権法」(Digital Millennium Cpiyright Act、以下DMCA)に基づき、インターネットラジオ局から音楽著作権使用料を徴収する方針を発表した。これに伴い、著作権使用料の料率を決めるために、米レコード協会(以下RIAA)などレコード業界とインターネットラジオ業界間で交渉を開始した。しかし“収益の15%”を料率に主張するレコード業界側と、従来の音楽著作権利用料(作曲者らが対象)である“収益の3%”に近い値を求めるインターネットラジオ側とが対決し、物別れに終わっていた。

 そこで著作権庁は2001年、著作権仲裁使用料委員会(Copyright Arbitration Royalty Panel、以下CARP) を設置。CARPは両業界の代表や企業などへヒアリングを行ない、2002年2月20日に、インターネットラジオ局に対する著作権使用料についての報告書を提出した。そのなかで、CARPは推奨する利用料金を「インターネット専用ラジオ局は、楽曲1曲が1ユーザーに配信されるたびに0.14セントを使用料として支払う」とし、さらに「DMCAが制定された1998年10月まで遡って支払う」とまとめている。報告書の内容は著作権庁で検討され、5月21日までに報告書を受理するか(すなわちこの利用料を認めるか)、拒否するかを決定する形となる。


 この「1曲1人につき0.14セント」が決定するとどうなるか? CARPの報告書に反対するために結成された団体「SaveInternetRadio」の試算では、数人で運営している独立局(インターネットラジオ局の8割以上がこのタイプという)の場合、1時間で1,000人のリスナーに15曲を配信したとして、1時間21ドル(0.14セント×15曲×1,000人)が徴収される。さらに1998年10月まで遡り、また施行まで放送を続けたと仮定すると、徴収される使用料はなんと55万2,000ドル(約7,200万円)に達する。これは当初RIAAなどレコード業界側が提案していた“収益の15%”よりはるかに多く、またほとんどの独立局にとって収益の数倍に上る額となり、インターネットラジオ局の運営そのものができなくなってしまう。

 なぜこうした料率が設定されたのか? これにはCARPの調査方法に大きな欠陥があったという声が出ている。報告書によると、CARPはレコード業界、インターネットラジオ業界、アーティストなど数十人からヒアリングを行なっているが、インターネットラジオ業界からは「Launch.com」、「Spinner.com」などの大手、かつ大企業の傘下であるサービスが多く、独立局の姿はほとんど見られない。またDMCAが施行されてから約4年が経過し、その間のインターネット技術の進化を考えると、1998年まで遡って徴収することは無意味だとの見方もある。さらに、そもそも低いビットレートで配信し、またダウンロードできない点が特徴のインターネットラジオ局に対し、DMCAを適用させること自体が間違いだという指摘もある。

 インターネットラジオ局側は当然猛反発しており、「Listen.com」などいくつかの局は共同で訴訟を展開している。また「SaveInternetRadio」のサイトを通じて、リスナーや他局に対して議会や著作権庁への働きかけを求める独立局も増えているほか、「Live365.com」ではユーザーに独自の反対活動を呼びかけている。また「Salon.com」などのWebメディアでは、この活動をサポートする動きも出始めている。

 この料率が確定した場合、米国のインターネットラジオ局は、いくつかの大手を除いたほとんどがサービスを中止することは確実だ。日本で米国のインターネットラジオを愛用するリスナーとしては、そうした事態にならないことを祈るばかりだが…。

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(2002/3/28)

[Reported by aoki-m@impress.co.jp]


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