■URL
http://www.p2pconf.com/ (P2P Conference in JAPAN 2002)
4月11日、東京・渋谷で開催されたP2Pによる技術・ビジネスに焦点を当てたカンファレンス「P2P Conference in JAPAN 2002」で、Jnutella.org代表の川崎裕一氏が「P2Pがもたらす収益機会の可能性」と題した講演を行なった。
●P2P関連企業は、ファイル交換サービスだけではない
川崎裕一氏 |
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P2P技術の名を一躍有名にしたものは、中央にサーバーを配置し、各ピアーとインデックス情報のやり取りを行なった「Napster」だ。川崎氏は、「Napster」が、Microsoftの「hotmail」やインスタントメッセージ「ICQ」に比べて急速に、そして劇的に普及したことに注目する。
だが、P2P技術が利用されたサービスは、ファイル交換サービスだけではないとして、川崎氏は、海外のP2P企業を紹介した。ファイル交換分野では、Napsterのほかに、Sharman Networks社が運営する「KaZaA」、分散コンピューティングでは米United Devices社が医療関連分野で成功を収めているし、コンテンツ配信では米Kontikiが、コラボレーションウェアでは米Groove Networksが有名だ。
例えば、米Groove Networksは、米Dell Computerに1万ライセンスを納品したほか、米Microsoftから5,100万ドルの出資を受け、戦略的パートナーとなっている。また、米Kontikiは、米eBayのチャリティオークションや、PalmOSを搭載しているPDA向けサービスの提供も手がけている。それ以外にも、「米国に本社を持つP2P関連企業は、何らかの形で投資家と良好な関係を築いている」という。ところが、「ビジネス案件として契約締結に至っても、実際に収益をあげた企業は少ないのが実情だ」と語り、「ビジネス展開のために、何らかの異なる『仕掛け』が必要な状況」と分析する。
ここで同氏は、「すでに日本のP2P企業も先にあげた枠組にマッピングできる」という。それによると、ファイル交換分野には、裁判で負けてしまったが日本MMOが運営している「ファイルローグ」があり、コンテンツ配信では、株式会社アンクル(ANCL)がアドホックネットワークコンピューティングをJavaで実現している。また、コラボレーション分野では、ネットイヤーグループ株式会社が、分散コンピューティングでは、NTTデータやインテル、日本SGIなどが活動を開始しているという。
●P2P企業が収益をあげるにはどうしたらいいか
ここから、「P2P企業が収益をあげるにはどうしたらいいか」という話題になる。まず、川崎氏は、「社会構造が、組織の細分化と自立分散型社会へと変革しつつある」と分析する。その結果、小さな組織を束ねた大企業では、従来のクライアント・サーバー型システムでは、多額の情報設備投資が必要になり、「分散しつつ中央から管理する、ハイブリッド型P2Pモデルの需要が増大する」という。この構造が、「LotusキラーとしてGroove Networksが、AkamaiキラーとしてKontikiが台頭してきた土壌になっている」というのだ。
しかし、Napsterやファイルローグなどのファイル交換サービスがP2P技術のイメージを破壊してしまった。そこで川崎氏は、「P2Pという名前を捨てる時が来ているかもしれない」という。代替案として、コラボレーションや、グリッドコンピューティングなどが挙げられた。
次に、「既存のネットワークやハードウェア上にP2P技術を適用することで得られる生産性の高さをアピールすべき」と語った。例えば、vTrails社が「P2Pによるストリーミングを使うことでテレビ会議のコストを90%削減する」とコメントしていることや、Kontikiが「eBayなどの協力を得て、非公開で実施したβテストの結果、TV画質並みのビデオの配信を、従来のコンテンツ配信ネットワーク(CDN)に比べて、配信速度を最大10倍、配信コストを3分の1以下にできた」と発表していることを紹介する。
このほかにも、P2Pベンチャーが有名企業と提携して信頼を獲得していることや、分散環境での課金の仕組みが重要なファクターになると分析した。最後に川崎氏は、想定例として、ポータルサイトが提供しているオンラインストレージサービスを、P2Pによるファイル共有にして運営コストをユーザーに負担させる案や、金融業界や製薬産業でのグリッドコンピューティングなどを挙げた。
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(2002/4/11)
[Reported by okada-d@impress.co.jp]