【行政/e-Japan】

首相官邸、「e-Japan重点計画-2002」を公開

■URL
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/020618honbun.pdf
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/020618gaiyou.pdf (概要)

 首相官邸は26日、「e-Japan重点計画-2002」をWebサイト上で公開した。これは、2005年までに世界最先端のIT国家になることを目指す「e-Japan戦略」を具体化するための施策として6月18日に策定されたもの。

 e-Japan戦略では、「我が国が5年以内に世界最先端のIT国家となる」という目標の下、2001年1月より高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)がさまざまな施策を展開してきた。その結果、インターネット普及率が44%に達し、公立学校のインターネット普及率がほぼ100%となった。

 今後は、「すべての国民がITのメリットを享受できる社会」として、3,000万世帯に高速インターネット接続を、さらに1,000万世帯に超高速インターネット接続を導入する。「重点計画-2002」では、重点政策5分野として、「世界最高水準の高度情報通信ネットワークの形成」「教育及び学習の振興並びに人材の育成」「電子商取引等の促進」「行政の情報化及び公共分野における情報通信技術の活用の促進」「高度情報通信ネットワークの安全性及び信頼性の確保」を挙げている。

●世界最高水準の高度情報通信ネットワークの形成


 高度情報通信網の形成分野では、2005年までに30~100Mbps程度の超高速アクセス網の整備を行ない、必要とする全ての国民にインターネット接続を低廉な価格で提供することを目指している。また、インターネット端末の普及促進のため、プライバシーとセキュリティの保護が容易なIPv6網への移行に注力するほか、無線アクセスを活用した移動体通信サービスの実現や、放送のデジタル化による通信と放送の融合や双方向サービスを本格化する。

 具体的な施策としては、新たなインフラの形成に向けて、高速道路の高架橋脚空間に光ファイバーを敷設する方法を2002年度中に検討(国土交通省)したり、ファイバー設置のための路上工事規制の緩和(国土交通省)、それにともなう道路使用許可手続きの改善(警察庁)を行なう。また、集合住宅への超高速インターネット網の普及に向けて、既存集合住宅のIT化標準や、改修のための合意形成マニュアルを2002年度早期に作成する。

 一方、総務省では2002年中にIPv6移行へのロードマップの作成、電気通信基盤充実臨時措置法に基づいた税制優遇措置、無利子・低利融資支援などを講じる。さらに、電波の有効利用促進のための再配分ルールの具現化に向けて検討を行ない、2003年度中に結論を出すとしている。

 ダークファイバーの開放については、国土交通省や農林水産省の持つ、道路・河川の公共施設管理用光ファイバーの民間開放や、国営排水施設に敷設された光ファイバー情報の公開を行なう。また総務省でも、地方公共団体を対象としたダークファイバーの民間への貸し出し手続きを策定する。

 このほか、「いつでもどこでも安心して利用できるネットワークの構築」として、ユニバーサルサービス制度の整備(総務省)、超高速インターネットの地域間格差の是正などを行なう。

 ユーザーが安価な情報通信インフラを入手するために、自由で公正な競争環境の整備も促進する。総務省では、電気通信事業法における一種・二種の事業区分の廃止も視野に入れた見直しを2002年度中にまとめる予定だ。また、MVNO(仮想移動通信事業者)参入のガイドラインや、NTT東西の業務支援システム「OSS」の開放、コロケーションルールの見直しなども早急に実施する。

 IP電話に関しては、一般加入電話からIP電話端末に着信する時に必要になる電話番号の具体的な番号体系の検討を2002年度中に実施するほか、IP電話のサービス品質に関する評価方法も検討する。

 放送と通信の融合については、国民が特別な教育を受けることなく容易に公共情報などさまざまな情報を入手・利用できるようなサービスを、世界に先駆けて実現する。また、公正な競争の促進のため、伝送路やコンテンツ配信およびコンテンツ制作などの各階層にまたがる問題の解決にむけ、公正取引委員会では独占禁止法の観点から指針を2002年度中に策定・公表する。コンテンツ制作者、権利者、流通事業者向けには、それぞれ正当な報酬を得られるようなモデル契約書の策定(経済産業省)、コンテンツ流通のビジネスモデルや民間における権利処理ルールの確立(総務省)も行なう。

●教育及び学習の振興並びに人材の育成


 教育分野では、2005年のインターネット個人普及率が60%を大幅に上回ることを目指し、小学校から大学までのIT教育体制の強化と社会人に対する情報生涯教育の充実を図る。

 具体的な施策としては、2005年までに公立小中高等学校が高速インターネットに常時接続できるようにし、校内LANやIT授業を行なう「新世代型学習空間」の整備を行ない、すべての教室をインターネットに接続させる。また、2002年度から開始される「総合学習」において、情報通信ネットワークに慣れ親しませるとともに、中学校では技術・家庭科で「情報とコンピュータ」を、高等学校では普通教科「情報」を必修科目にする。

 さらにネットワークコンテンツ利用における著作権知識や意識を持たせるため、教員向け指導書を作成するほか、2004年までに子供たちが楽しみながら著作権を学べるソフトを開発する。

 そのほか、さまざまな教育用コンテンツを授業の中で適切に利用するために、毎年1,000件程度の教育用コンテンツの実践事例を教育情報ナショナルセンターに登録したり、産業界の協力を得て教育用コンテンツを3,500件以上作成する。

 社会人に対しては、今後も継続的に550万人を対象としたIT講習会を実施するほか、約30万人の中小企業経営者を対象に、ITが経営に与える影響などを理解するための講習会、および農林漁業者約1万人を対象とした講習会をそれぞれ2002年度中に開催する。また、2002年度中に図書館を地域の「IT学習プラザ」にする。

 一方、IT人材の育成のため、大学・大学院や専修学校・専門学校に対して必要な環境整備を実施する。また、世界最高水準のコンテンツを制作するクリエイターを育成し日本のコンテンツ発信能力を強化するため、制作ツールの開発や政策支援、ベンチャー企業支援に注力する。

●電子商取引等の促進


 電子商取引分野に関しては、B2B事業で1998年の10倍にあたる70兆円程度、B2C事業で同じく50倍にあたる3兆円規模の市場の創出を目指す。このため、取引の安定性・信頼性の確保を図るため電子署名・認証制度の普及促進を実施する。2003年度中には、官報や公告の電子化のための商法改正を目指す。

 また、ITを活用した新ビジネスを創出するための環境作りとして知的財産権の保護や利用のために、コンテンツにかかわる契約慣行・流通慣行の見直し、著作権保護技術開発に注力する。著作権保護に関しては、2002年度中にコンテンツIDを活用した権利情報検索システムを開発する。2004年度までには、コンテンツ流通の不正利用を防いだ形の権利処理システムを開発し、放送コンテンツを権利者と利用者の間で安全に取引できる市場を形成する。また同時に、コンテンツ創作者と利用者がインターネット上で直接契約を結べるバーチャル著作権マーケットの研究開発を行なう。

 企業のIT活用を促進する施策としては、中小企業を対象としたIT共通基盤の整備を実施する。このため2003年度末までに、中小企業の規模や業種・業態の違いによるIT化の進展度合いに応じて、きめ細かい支援を実施する。また経済産業省では、ICカードを活用した電子商取引の実証事業を行なう。

 このほか、消費者保護の観点から、不当表示に対する規制を行なうために電子商取引監視調査システムの運用を開始する。2004年度には、インターネットを利用した悪質犯罪に関する情報を全国警察で共有するほか、オンライン詐欺などの広報・啓蒙活動を促進する。

●行政の情報化及び公共分野における情報通信技術の活用の促進


 行政の情報化では、申請・届出などの手続きの電子化、文書の電子化などを推進し、2003年度までに電子情報と紙情報を同等に扱う行政を実現する。

 また、公共分野のネットワーク化では、学術研究機関を最速10Gbpsの回線で接続するスーパーSINETを、2002年度中に6大学、1大学共同利用機関、および5大学付属研究機関で開始し、2005年までに全国25~30ヶ所に拡大する。さらに、日本原子力研究所や理化学研究所など6機関のスーパーコンピューターを2003年度までに、国内すべての研究機関のそれを2005年度までにネットワーク上で共有する。

●高度情報通信ネットワークの安全性及び信頼性の確保


 ネットワークの安全性確保に関して、電子政府、電子商取引、重要インフラにおいて、情報セキュリティの不備による不正アクセス、ウイルス、Dos攻撃などに起因するサービス提供機能の停止をゼロにすることを目標とする。

 具体的な施策として、情報セキュリティポリシーの継続的な評価や見直しを実施し、擬似アタックを含めた情報セキュリティの強化を行なう。セキュリティポリシーについては、2000年7月に定めた「情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」を改定する。電子政府のセキュリティに関しては、政府の緊急対応支援チーム(NIRT)の緊急時対応能力の向上のための訓練を実施し、内閣官房を中心とした24時間監視体制の実証実験を行なう。

 サイバーテロ対策では、民間インフラ事業者の取組みを促進するために、重要インフラ分野ごとに具体的方策を確立するほか、警察庁ではサイバーテロ発生時の被害を最小限に押さえるための機動的技術部隊(サイバーフォース)の対応能力の強化を行なう。また防衛庁でも、運用ガイドラインの策定を行ない、ネットワークを一元的に監視・統制する組織を新設する。

 民間企業における対策としては、総務省がファイアウォール装置を購入した法人、個人事業者に対して税制優遇措置などを実施する。また経済産業省では、情報処理振興事業協会(IPA)やコンピュータ緊急対応センター(JPCERT/CC)などを対象に、不正アクセス対策やウイルス対策に関する情報提供体制を強化する。

 情報セキュリティに関する基盤整備では、2005年までのできるだけ早い時期に各種ハイテク犯罪に対する罰則、情報通信ネットワークに関する捜査手続きなどの法整備を行なう。

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(2002/6/27)

[Reported by okada-d@impress.co.jp]

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