【イベントレポート】

ユビキタス時代は可変コンテンツが重要~光井隆浩東芝参事講演

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http://www.idg.co.jp/expo/wsc/

 12日、東京・青山で開催されたWebサービス関連のイベント「Web Services Conference」の2日目において、株式会社東芝e-ソリューション社参事の光井隆浩氏が「ユビキタス時代のコンテンツマネジメント」と題した講演を行なった。

 東芝では、ワールドカップのオフィシャルスポンサーとしてコンテンツ配信を実施したほか、貯蓄型コンテンツサービスを展開する110度CSデジタル放送「ep」なども手がけており、さまざまなネットワークを活用したコンテンツ提供を行なっている。光井氏は、ブロードバンドインターネット網だけでなく、衛星放送、携帯電話、車載システムなどさまざまなプラットフォームについて言及し、「ネットワークやユーザーの利用するハードウェアが変われば、当然コンテンツやサービスのあり方も変わってくる」と語った。

 光井氏は「ユビキタスに適するコンテンツ」としてMPEG7の必要性を説く。従来の映像や音声コンテンツには、「コンテンツそのものに検索される能力がない」と短所を指摘する。例えば、サッカーの試合で稲本選手のゴールシーンだけが見たくても、自動的にそのシーンだけを切り出すことは難しい。

 MPEG-7とは、デジタル放送で使われるMPEG-2やインターネット配信などで使われるMPEG-4などの映像の符号化方式ではなく、映像コンテンツに「ある映像がどこから始まって、何秒間続いているか」というメタデータを付与するXMLベースの構造記述方式だ。またMPEG-7は、MPEG-2/4だけでなくさまざまな映像コンテンツを対象にすることができる。光井氏は、「映像の符号化は一巡したと言える。今後、一層ブロードバンドになっても、ハードウェアが高解像度で映像を扱えるようになっても、人間の目にはMPEG-2以上の高画質は必要がない」と語った。そして、「今後は、MPEG-7とWebサービスをうまく連携させて、映像アーカイブ検索やクリップオンデマンドのようなサービスの提供が課題になるだろう」と予測する。

●可変するコンテンツの重要性


 ユビキタス時代のコンテンツにもう一つ重要な要素は「可変するコンテンツ」だ。光井氏は、「今後、個人の嗜好を自動的に収集するエージェント技術が発達する」と語り、「状況に応じて十人十色のコンテンツ配信、さらには十人百色のコンテンツ配信が可能になる」と予測する。

 この可変するコンテンツの例としては、個人プロファイル別のCM配信がある。これは、子供を持つ所帯には、育児・教育・貯蓄といった属性を持つCMを配信し、子育てが終わった富裕者層向けには、不動産・旅行・グルメ、高級車などのCMを配信するといったものだ。別の例としては、車載端末の情報の提示の仕方が挙げられる。これは、赤信号の時には動画・静止画・文字情報を、青信号の時には音楽、音声、Text to Speechなどで情報を伝達するといったものだ。また、交通状況に応じて渋滞時には“癒し系”の音楽を流すといった例も考えられるという。

 光井氏は、「エージェント技術が発達すれば、サービスはプッシュ型に変化してくる。また、常時接続環境が普及すれば、コンテンツをとりあえず流しておくといった視聴形態になるのではないか」と語った。

 このようなコンテンツ配信を支えるためには、現状では再利用可能なコンテンツが不足しているという。光井氏は「コンテンツそのものは1日に1,000時間分も生み出されているにも関わらず、権利処理の問題でコンテンツ不足になっている」と指摘する。将来的には、「素材レベルでの著作権管理と、使う都度のデジタルによる権利処理システムが理想」と語った。このようなシステムを運用するためにも、MPEG-7のようなコンテンツのメタデータとコンテンツ保護技術が必要だ。

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(2002/7/12)

[Reported by okada-d@impress.co.jp]

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