【業界動向】

電力線インターネットの高速化へ向けた規制緩和は見送り
総務省の研究会、現在の技術では時期尚早との結論

■URL
http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/chousa/denryoku/index.html

 国内における電力線ブロードバンドの実用化は、当分先の話になりそうだ。電力線搬送通信(Power Line Communication:PLC)で使用できる周波数の拡大について検討を進めてきた総務省の「電力線搬送通信設備に関する研究会」は31日、PLC用に高周波帯(2~30MHz帯)を開放することは困難であるとの報告書案をまとめた。

 研究会が電力線モデムを使って実際の家屋などで行なった実験で、同じ周波数を使う航空管制や短波放送に対して有害な混信源となる漏えい電波が確認された。製品によってそのレベルにバラツキがあり、漏えい電波が少ない製品もあったが、今の技術レベルでは既存無線通信への妨害が避けられないと判断した。

 その一方で、今回の実験により電力線モデム技術がまだ未熟であることが判明。今後の技術開発の余地を残すため、研究・開発目的に限定して、条件付きの許可制で高周波帯利用を認める制度の必要性が盛り込まれている。

 なお、今回の規制緩和を見据えた検討はあくまでも既存の無線通信業務に影響を与えないことが前提に開始されたものだ。したがって、漏えい電波のレベルがどの程度まで抑えられれば問題ないのかということも焦点の一つだった。しかし、報告書案では、その許容値を示すまでには至らなかった。現在、CISPR(国際無線障害特別委員会)で国際的な基準の策定作業がスタートしているとしており、ここで1、2年後にも示される見込みの許容値を待つことになる。

 漏えい電波を含め、PLCの性能は、利用する電力線自体の特性に大きく影響されるという。それに加え、電力線の特性が家屋ごとに大きく異なっている実状もあり、漏えい電波の影響などを計算で予測することはきわめて難しい。研究会は今年4月末に開催されのたのち、約3カ月にわたって実環境などにおける実験を行なってきたわけだが、それでも十分なデータは得られていないという。今後、モデムメーカーなどが実証実験を円滑に開始できる制度を整えることで、技術開発を促す一方、CISPRでの検討材料となる多くのデータの収集に結びつける狙いもある。

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(2002/7/31)

[Reported by nagasawa@impress.co.jp]

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