【イベントレポート】

無線LANラジコンから光パケットスイッチまで
CRLが電波や通信の先端技術を紹介するイベント

■URL
http://www2.crl.go.jp/kk/e414/2002ippan/index.html

子供向けの実験・工作教室やスタンプラリーも実施しており、近所の小学生や親子連れの姿が目立つ
 独立行政法人通信総合研究所(Communications Reserch Laboratory:CRL)が2日と3日の2日間、東京都小金井市にある施設の一般公開イベントを開催している。CRLが研究・開発に取り組んでいる電波や通信の先端技術が紹介されている。本記事ではその中から、インターネット関連の展示をいくつかピックアップする。

 まずは、昨年の同イベント記事でもとり上げたIPコントロールカー。IEEE 802.11bの無線LANシステムと車載CCDカメラを搭載したラジコンカーを、あたかも自動車に乗っているような感覚でパソコンから操縦しようというものだ。昨年の展示後、IT関連のイベントなどで何度か一般にも公開されており、そこでの評価もふまえながら改良が施されてきたという。

 共同開発にあたっているユグドラジル・テクノロジーでは、車載機器や無線LANシステム、パソコン用の操縦ソフトなどをパッケージしたIPコントロールカーのソリューションを年内にも発売したいとしている。イベント関連会社などからの引き合いのほか、どうやら某玩具メーカーも某ロボットのラジコンへの搭載を想定して、このシステムに関心を持っている模様だ。

 次は、「雪ニモ負ケズ、風ニモ負ケズ、無線回線で学校をつなぐ」というキャッチフレーズのもと紹介されている「日本最北端の地域ネット構築実験」のパネル展示。CRLの電波観測所がある北海道稚内市において、地元の大学と共同で1999年から進められているもので、地域の中学校と高等学校を2.4GHz帯の無線LANやレーザー光空間通信装置で接続。北海道や東北、北陸地方などで無線系ネットワークを構築する際に懸念される、降雪や強風環境でのデータを取得している。

 無線LAN方式では、大型のアンテナを取り付けることで数kmにおよぶ接続を実現しており、“広域過疎地域”であるため、干渉などの技術的な問題は少ないようだ。ただし、10数km離れたさらに遠方の中学校が残されているとしており、2.4GHz帯の出力規制がネックとなっている。一方、光無線では、予想以上に降雪に弱く、一日中降り続くこともある冬期には不通となり、実用に耐えないという。

発熱や消費電流の大きいハブを使わない構成に改良。熱暴走を防止するとともに、走行時間も延ばすことができたという 展示されていた無線LANシステムは、性能、価格ともに家庭用とあまり変わらないものだというが、屋外に設置する指向性アンテナが併用されている

 CRLでは昨年度より、研究者の起業を支援する「プレベンチャー制度」を開始したが、会場では同制度に採択された研究の一つである「教育・地域・防災情報配信システム」が紹介されている。

 ポケットベルのインフラを使って各家庭の端末に情報を配信するシステムで、自治体の広報やお知らせ、商店街のチラシ、学校や保育所の保護者向け印刷物などの電子配信を想定している。対象となる家庭だけに同報配信できるのが特徴だ。カラー液晶を備えたA5程度のサイズの端末がすでに開発されており、10月には保育園とその職員や保護者の家庭100世帯以上を使ったフィールド実験も開始される。

 このシステムでは、配信側の情報入力や送信作業こそ、パソコン用の専用ソフトを使ってインターネット経由で行なうようになっているものの、配信サーバー以降は専用線を通じてポケベルの送信所に送られる。その後、ポケベル用に割り当てられた電波を使って最終的に各家庭に届く仕組みだ。

 このため、一見すると時代遅れに見えるかもしれないが、ポケベルのインフラを使うということで大きなメリットもある。まず、電波が届きやすいということが挙げられる。地下やよほど特殊にシールドされた家庭でなければ、アンテナを必要とすることなく受信が可能になるという。さらに、インターネットや電話線などへの接続が不要のため、設置に手間がかからず、高齢者向けのサービスにも活用しやすい。また、既存のインフラがそのまま使えるということで、かげりの見えてきたポケベルサービスのインフラの有効利用にもつながりそうだ。

 このほか、3次元メディア時空共有通信システム「NetUNIVERS」を使って遠隔地にいる人と一緒に鑑真和上像も拝めるバーチャル唐招提寺、2005年に打ち上げ予定の超高速インターネット衛星「WINDS(Wideband InterNetworking engineering test and Demonstration Satellaite)」、世界初だという光バッファーを備えた光パケットスイッチの試作機など、見所満載のイベントとなっている。

教育・地域・防災情報配信システムのフィールド実験で使われる実験端末は鷹山が開発したもの WINDSには、この試験モデルの4倍の大きさのフェーズドアレイアンテナが搭載される。右上に、1/66スケールの紙模型が置いてある

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(2002/8/2)

[Reported by nagasawa@impress.co.jp]

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