【イベントレポート】

~「テクノロジー自体には問題ないが、ビジネスモデルに問題」James Gosling氏、Webサービスについて語る

サン、Java開発者向けイベント「JavaOne」を開催

■URL
http://servlet.java.sun.com/javaone/

 サン・マイクロシステムズ株式会社は25日、Java開発者向けイベント「JavaOne 2002 Japan(以下、JavaOne)」をパシフィコ横浜にて開幕した。期間は27日までの3日間となっている。米国以外では2度目の開催となる今回のJavaOneでは、昨年の72を越える120以上のテクニカルセッションが開催され、パビリオンでも100以上の企業がJava関連商品や技術などの展示を行なっている。

 25日に行なわれた基調講演では、Sun MicrosystemsのChief Researcher and Director、Science OfficeであるJohn Gage氏とChief EngineerのRob Gingell氏がモデレーターとして登場、Javaプラットフォーム担当Vice PresidentのRichard Green氏が講演を行なった。

モデレーターの
Rob Gingell氏(左)と
John Gage氏(右)
タマちゃんもJavaOneに参加しに来た!? 講演を行なう
Richard Green氏

 講演でGreen氏は、エンドトゥーエンドのワイヤレスJavaプラットフォームやWebサービス、Javaセキュリティーなどについて語った。まず、ワイヤレスJavaプラットフォームについて、ここ数年で日本を中心としたアジア圏で顕著に成長しているとし、「携帯電話を中心としたワイヤレスJavaプラットフォーム分野では特にその傾向がみられ、日本の携帯電話会社などはその80%がJavaに対応している。米国などは、2002年になってからやっと5社が対応を開始したばかりで、アジアより遅れている」と語った。その成長要因として、ネットワーク帯域の増加とデバイスの高性能化を挙げた。これは携帯電話のみならず、ワイヤレス分野全般の成長に不可欠な要因でもあるとしている。その成長度は全世界のPCのうち、2007年度までにワイヤレスがデスクトップを追い抜くだろうと予測している。ワイヤレス分野におけるSunの戦略は「1~2年後に全てのワイヤレスデバイスにJavaを入れることだ」(Green氏)としており、「Javaを用いて、エンドトゥーエンドで全てのデバイスをワイヤレスで繋げたい」(同氏)との目標を示した。

 続いて、Webサービス分野について同氏は「最もWebサービスに重要なのは、セキュリティーとエンドトゥーエンドのアイデンティティーだ」と語った。これに対する具体的な説明として、個人のネットワークIDが重要だとしており、そのIDのセキュリティー保持のためには「デバイスに依存することなく保障されなくてはならず、尚且つオープンなものでなければならない」(Green氏)などの要件が必要だとしている。この要件を満たすためにもSunの提唱するLiberty Allianceが有効であり、ユーザーに安全で安心できるセキュアなWebサービス環境を提供することが可能で、なおかつユーザーが任意で公開する情報や共有する情報を選べることから、セキュリティー面においても「.NET」を上回っているとしている。


左からJohn Gage氏、Rob Gingell氏、James Gosling氏、Richard Green氏

 基調講演後に行なわれた記者会見では、基調講演に出演した3氏に、Vice PresidentのJames Gosling氏を加えた4名が出席し、会見を行なった。まず、Gage氏は日本以外でのJavaOne開催について「確かに、中国やインドでのJavaOne開催は魅力的だ。中国で開催すれば、1~1.5万人が来場するだろう。しかし、コスト面を考えると、アジア代表として日本で開催している今の形が現状ではベストだ」としている。続いて本日発表された「Mobile Information Device Profile Version 2.0(MIDP 2.0)」の前バージョンとの違いについて「MIDP2.0では、セキュリティー面が特に向上している。また、ムーアの法則によってデバイスの性能は上がっているが、それに反比例してバッテリーの持ちが悪くなっている。2.0では、如何にデバイスの性能向上のメリットを享受しつつ、バッテリーをできる限り消費しないか、という点まで考慮にいれたものだ」(Green氏)としている。

 また、基調講演でも取り上げられたWebサービスについて、Gosling氏は「現状ではWebサービスのテクノロジー自体には問題が無いのだが、それを利用したビジネスモデルや、XML開発のコスト面に問題があり、普及の障害となっている」と、Webサービスの普及を妨げている障害について分析を行なった。その例として、「Amazonの検索で欲しい本を検索する際に、XMLを利用すれば目的の本の紹介ページへのリンク以外にISBN(国際書籍番号)も同時に表示することができるが、もしこれをやってしまうと、Amazonの検索で得たISBNを元に、他の書店で目的の本を購入できてしまう。これでは、ビジネスにならない」と語っている。このように、テクノロジー的には可能でも、ビジネスに直結できないWebサービスやアイディアが多数あるとのことだ。逆に、今後の課題は、如何にこれをビジネスにできるかだという。

 最後に「.NET」との違いについてGreen氏は、「情報管理の仕方や考え方が全く違う。Liberty Allianceでは、個人情報をローカルに保存するが、『.NET』では全てマイクロソフトが管理している。これは、自分の情報を自分で管理して間に他者が入らない当方の方が、セキュリティーが高いと言えるだろう」と語り、続いてGosling氏は「このことは、『自分の情報を完全に自分でコントロールできる』という点で全く異なる。Liberty Allianceではどの会社にどの情報を渡すか自分で選べるが、『.NET』ではマイクロソフト1社が管理しているので選択の余地が無い」と説明した。そしてGage氏は「1社しか選べなくても、その1社がセキュリティーが高く安心できる会社であれば問題ないだろうが、OSのセキュリティーホールを見ている限り、不安は拭えないだろう」と皮肉って締めた。

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(2002/9/25)

[Reported by otsu-j@impress.co.jp]

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