【イベントレポート】
近未来コーナー「デジタルスペース21」に注目
WORLD PC EXPO 98で「インターネット冷蔵庫」登場!
■URL
http://wpc98.nikkeibp.co.jp/
幕張メッセで開催されているパソコン関連の展示会「WORLD PC EXPO 98」に「インターネット冷蔵庫」が登場した。
インターネット冷蔵庫が展示されたのは、21世紀のホームオフィスを体験できるという「デジタルスペース21」のコーナー(展示ホール10)。ここでは、冷蔵庫のほか、「インターネットマホービン」や音楽自動販売機、カーナビシステムなど近未来の機器が展示された。
■なんで冷蔵庫がインターネットに接続?
http://www.musicpod.co.jp/if/ifindex.html (インターネット冷蔵庫)
http://www.okix.or.jp/ (岡山県高度情報実験協議会)
「インターネット冷蔵庫」は、その名の通り家庭向けの冷蔵庫がインターネットに接続されており、扉部分にはめ込まれた液晶ディスプレイで利用するというもの。岡山県の「岡山県高度情報モデル実験」の1プロジェクトとして研究されている(本誌'97年11月17日号参照)。出展社は、開発元である株式会社ブイシンク。
今回、会場で展示されたのは試作機として作成されたものの1台。現在6台を製作中とのことで、それらは'99年1月から岡山県で開始される「平成10年度岡山県高度情報化モデル実験」の1プロジェクト「地域イントラネット構築実験」において実際に家庭に設置されるとのこと。
デモ用に展示された「インターネット冷蔵庫」のベースモデルには、シャープ株式会社の左右開き冷蔵庫「ハイ!両開(りょうかい)」(形名SJ-WE44A)が使われていた。スペックは、CPUに「Pentium II 450MHz」、ハードディスクは3.2GBを搭載しているとのことで、ほとんどPC/AT互換機搭載の冷蔵庫といったところ。また、CCDカメラ、マイク、スピーカーも内蔵されている。操作は、DSTN 15インチの液晶タッチパネルで行なう。OSにはWindows 95を採用しており、WWWブラウザーは「Netscape Navigator」「Internet Explorer」が動作していた。そのほか、通常の冷蔵庫と異なる点といえば、扉の裏に熱対策用にスチロールのボードが貼られているところだ。デモでは、タッチパネルで夕食のレシピを次々と映し出していた。なお、インターネット接続部分と冷蔵庫本体の電源は別らしく、中に入っていた缶ジュースはぬるかった。
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メニュー画面
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ブラウザーの上にCCD
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扉の裏に熱対策加工
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パソコンとしての機能も備えた「インターネット冷蔵庫」であるが、一番の関心所はその使い道。まず思い浮かぶ「レシピを見る」「回覧板を見る」といった使い方のほかに、パソコンやテレビ、エアコン、お風呂など家電機器が家庭内ネットワークに対応した未来の家庭において、それらを制御する「24時間生活密着型ホームサーバー」になるとのこと。しかし、そのためには冷蔵庫がインターネットに常時接続している必要がある。また「回覧板を見る」といった利用例にあるように地域内でのネットワークの整備がポイントとなる。そこで、実験の地として岡山県の「地域イントラネット構築実験」が選ばれたという訳だ。
なお、この「インターネット冷蔵庫」、気になる値段の方は、ブイシンク社によると「冷蔵庫の定価+10万円程度」としている。ただし、ネットワークの整備等、必要条件が多いため「実際に市販するのは難しい」とのこと。また、試作機ではOSにWindowsを搭載していたが、安定性の問題から現在製作中の試作機も含め今後はUNIX系OSの「Linux」を搭載するとのこと。
■インターネットマホービンも登場、しかし…
会場で密かに注目を集めたのが「インターネットマホービン」。インターネット冷蔵庫と同じブースに「インターネットマホービン」の表示とともに電気ポットが置かれていた。しかし、この電気ポット、どう見ても、「マイコン電動給湯」と書かれてあるごく普通の電気ポットで、ネットワークに接続している形跡さえないものであった。実は、これはダミーのポットで、象印マホービン株式会社の「高齢者在宅安否確認システム」の展示の一部であった。このシステムは、電気ポットの使用状況を電話回線を通じてモニターし、自宅にいる高齢者の安否を確認するというもの(本誌'98年8月18日号参照)。システム自体は、確かに安否確認の手段として有用なものであるが、実際に「ネットワークに接続されたマホービンが稼働している様子」のデモを見たかった。
■音楽自動販売機、年末に都内で実験開始
http://www.musicpod.co.jp/pod/index.html (ミュージックPOD)
直接インターネットを利用するものではないが興味深かったのが、音楽の自動販売機「ミュージックPOD」(写真)。これは、サーバーに蓄積された楽曲を光ファイバーで端末「ミュージックPOD」に送信し、ユーザーが持参したMDにダウンロードするというもの。端末では、販売曲が一覧で表示されるほか、アーティスト名/曲名から検索も可能、試聴もできる。また、購入すると、歌詞カードがプリントされたシールも一緒に出てくる。ダウンロードするデータにはコピープロテクトがかけられており著作権管理の対策は万全とのこと。なお、ミュージックPODは、すでに日本レコード協会の承認を得ており、年末から実際に都内50カ所に端末を設置し販売実験を行なうとのこと。実験当初は、約3,000曲を用意し、1曲200円~700円で販売するとのことだ。なお、開発元は、インターネット冷蔵庫と同じく株式会社ブイシンクだ。
ほかに、「デジタルスペース21」のコーナーでは、すでにサービスを開始しているインターネット対応カーナビ「MONET」のデモや、「マルチメディア住宅」の展示などが行なわれた。MONETのデモは、会場に運び込まれたハイブリッドカー「プリウス」に搭載された形で行なわれた。また、マルチディア住宅の展示では、擬似的に構築されたネットワークで未来の家庭生活をデモしている。
このコーナーでは、パソコン関連メーカーのほかに、トヨタ自動車、ミサワホーム、コクヨなど他業界からの出展により「21世紀の生活」が複合的に展示されている。未来の生活の一端に触れられるのもよいが、「インターネット冷蔵庫」は少なくとも見た目にもおもしろいので、話の種に「デジタルスペース21」に行ってみるのもよいだろう。
('98/10/1)
[Reported by okiyama@impress.co.jp]
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ウォッチ編集部INTERNET Watch担当internet-watch-info@impress.co.jp