|
【編集部から】
インターネットといえば、かつてはアメリカ独走の感がありましたが、最近ではヨーロッパやアジアなど、世界各国でインターネットが盛んに利用されています。この連載では、ドイツで暮らしているkajoさん・taogaさんのお二人が、現地の最新インターネット生活をレポートします。乞うご期待!
■本当に空っぽな部屋
イラスト・Nobuko Ide
|
---|
私が留学するためにカバン一つでドイツに来てぶつかった最初の難関は、この「何でも自分で作る」習慣だった。
入学試験を受けるために、最初に乗り込んだのはHamburg(ハンブルク)だった。最初はホテル住まいをしていたものの、続けていたのでは破産してしまう(!)ので、 安い学生寮に住みたいと思った。しかし、どこの学生寮も満員だったため、まずは部屋探しとなった。家具付の部屋というのも、あるにはある。これなら入居したその日から不自由のないように、家具に限らず必要な物がすべて整っている。しかし、貧乏学生が払いきれるような家賃ではないため、自分で安い部屋を探さなければならない学生がほとんど。私もその一人だった。日本での下宿生活の経験もなかった私が、何といっても驚かされたのは、「Unmoebliertes Zimmer」(家具なし部屋)とか、「Leere Wohnung」(空の貸家)などと称するこの手の安い部屋は、ドイツ語では「空っぽ」にあたる「leer」という言葉が付いているとおり、部屋というより住むための「箱」そのものなのだ。天井を見ても、裸電球一つ付いているわけでもなく、電気のコードが壁からニュッと出ているだけのものだった。
結局、その時は幸運にもなんとか学生寮に潜りこむことができて、日曜大工からは免れた。しかし数年後、Mannheim(マンハイム)に移ってきた時は事情が違った。仕事で移住する以上、もう学生寮に入ることはできない。とにかく部屋を探さなければ。
とりあえず、どこかに腰を据えなくてはならない。そこで最初は、ひとまずの落ち着き先として「Moeblierte Wohnung」(家具付き住宅)に入った。さあ、いよいよ本格的な住居探しだ。
■ドイツ流・部屋探しテクニック
現在はもちろんインターネットで。マンハイムの新聞「Mannheimer Morgen」の住宅情報
|
■部屋は自分で作らなければ!
では、どこから手をつけようか。普通なら電気まわり→水まわり→壁→床→家具あたりか。それなら、まずは天井に電灯を取り付けよう。そうすれば日が落ちてからも多少は作業を続けられる。じゃあ明かりから、町に探しに行かなければ。当時は車どころか免許も持っていなかったため、行動範囲が限られていた。そのため、高くつくが仕方なくデパートを利用していた。今なら、郊外にある大きな専門店に行く。マンハイムの近郊ならBAUHAUS。ここには、工具、木材、電器から園芸用の土まで何でもそろっている。
ところが、日本で見慣れていた蛍光灯が、売り場にはほとんど見当たらない。ドイツ人は蛍光灯が大っ嫌いというのは後で知ったことだが、目がチカチカするので嫌なのだそうだ。そう言われれば、日本にいる時は気にならなかったのに、最近は蛍光灯の部屋にいると、すぐに目が疲れることに気がつく。もしかしてドイツの蛍光灯は「のろま」の代表ではなくて「チカチカと目障り」の代名詞なのか……? 残念ながら聞いたことがないが。
ドイツ版“ホームセンター”のBAUHAUS店内。もちろんこれはほんの一部だ
|
さて、電気まわり、水まわりの工事が終わると今度は壁だ。壁が汚ければ、自分で壁紙を張り替える。そのためには、まず古いものを剥がさなくてはならず、これがひと仕事。模様のあるきれいな壁紙を買ったりした場合は、その模様を合わせるための苦労もある。天井から床までの長い壁紙を上手に張るには、1人では不便だから友達に手伝いを頼まなくてはならない。引っ越した先でこんなことを頼める人は、普通はまずいないことを考えると難関だ。
壁紙の表面が汚れているだけなら、別の手がある。新しい色を塗ることで、見違えるほどきれいになるのだ。大抵の場合は、白か、象牙色と呼ばれる若干くすんだ色の壁紙用の水性ペンキを上塗りする。色を混ぜれば、好みの色の壁になって、部屋の模様替えもできる。テクニックはこのページを参考にしてほしい。
壁がきれいになったら、次は床だ。絨毯も敷きたい。が、これもまた難関。ちょっと考えれば理解できるが、部屋の隅から隅まで繋ぎ目なしで絨毯を敷くためには、その部屋より少し大きめのものを買わねばならない。ということは、まずグルグルと巻いてある絨毯を部屋に入れるので難儀するということだ。またこれがとんでもなく重く、一人では引きずることもままならないという問題もあるのだが。手順としては、まず部屋の角に絨毯の端を、余裕を持たせて合わせる。ナイフでカットしながら少しずつ伸ばしていくのだが、都合よく長方形にできている部屋などないし、間違えて短くカットしすぎれば元も子もない。慣れないと大変な作業だが、このサイトで詳しく解説している。
家具は予算の関係から、一度に新調はできないので、古い箪笥類を同僚にもらったら、色を塗り替えてきれいにしよう。工作が得意な人なら腕のふるいどき、安く上がるキットを探して自分で組み立てることだ。IKEA(次項に登場)などがその代表的なメーカーになる。
■超力作のシステムキッチン
問題のキッチン・工事前バージョン
|
キッチンが完成。これが手作りとは!
|
町の中心部にある私の家には庭がない。家の外の仕事はそのおかげで省略できるが、郊外に住むことになれば、庭仕事も大変だ。定期的に芝生を刈り、垣根の木をきれいに整備し、四方は色とりどりの花を咲かせる。ドイツ人たちは家の内外を、こまめに、しかも丹念に整えていくのだ。夏になれば天気のよい日に、その庭にガーデン家具を並べ、庭の隅でバーベキューグリルだ。焼きたてのソーセージを食べながら、ビールやワインを一杯。(連載第18回参照) これぞドイツ式の優雅な楽しみ方か……。
えっ? 私は……といえば、花を咲かせる庭などない街中の小さな部屋で、書籍とコンピューターに埋もれて、せめても家の中にカビの花が満開にならないようにと気を使いながら、この記事を書いたりしている。
◎著者自己紹介 ドイツの冬は厳しく長い。……とは言うものの、今年の冬は長くはあっても厳しくはなかった。それだけにかえって身の引き締まる思いができず、ダラダラと一冬過ぎてしまった。しかも、今度は春が来ない。相変わらずダラダラと締まりのない冬が続いている。ましてや雨の振る日がやたら多かったこともあり、一日でもいいからカラッと晴れて欲しいと望んでいる私。散歩に出る気力もなく、おかげでこの「アウトバーン通信」の執筆には精が出ていたりして……。 →taogaさんのホームページはこちら
|
(2001/04/12)
[Reported by taoga]