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Mobile-IPっていったい何者? スタンフォード大編(その2) (97/11/14)
前回は、なぜこれまでのインターネットの仕組みでは移動するコンピュータをうまく取り扱うことができないのかをお話しました。今回は、実際にMobile-IPの仕組みについて見ていくことにしたいと思います。なお、Mobile-IPの詳細は「RFC2002」に書かれていますので、詳しく知りたい場合にはそちらを参照してください。
移動 = = = = = = = = = = = => MH +-+ +-+ ----+ | | | | | +-+ ++ ++ ++ +-+ <-+ | : + + + + | | | +++++ + + +++++ | | +Net H+----+ Internet +----+Net F+ | | +++++ + + +++++ | | | + + + + | | | +-+ ++|++ ++ +-+ | | HA| |==========|=============| |FA | | +-+ ---------|-----------> +-+ --+ | ^ (2) +-+ (3) | +--------- | | <------------------+ (1) +-+ CN (4) |
《図1:Mobile-IPの仕組み》 |
さて、ここで、MHがNet Fに移動したとしましょう。このとき、MHはまず移動先で「FA(Foreign Agent)」と呼ばれるコンピュータを探します。これは、移動先のネットワークでMHの「お守り」をしてくれるコンピュータなのです。そして、MHはFAに自分が何者かを伝え、そのネットワークを利用して良いという許可を得たら(誰もが勝手に他人の組織のネットワークを使えるのでは、セキュリティは簡単に破られてしまいますよね)、FAに自分のいる場所をHome Networkに知らせるのです。Home Networkには、自分のネットワークに所属するMHの居場所を管理するコンピュータ「HA(Home Agent)」がいて、FAから送られてくるMHの現在の居場所を記憶しておきます。正確には、どのFAがMHの管理をしているかを知り、そのFAとHAの間に仮想的な回線を用意するのです(トンネリングと呼ばれる技術を利用します)。これで準備が完了しました。
さて、ここでインターネット上のあるコンピュータCNがMHと通信をしたいと考えたとします。CNはMHがどこにいるか知りませんから、当然Net Hにいるとして情報を発信します(1)。データはNet Hに届きますが、そこにはMHはいません。そこで、代わりにHAがMH宛のデータを受け取るわけです。そこで、HAは先ほど用意したFA(移動したMHを「お守り」しているFA)との仮想回線を利用して、データをFAに送ってやります(2)。FAは受け取ったデータをNet Fに送り出すとMHがそれを受け取るというわけです(3)。MHからCNへの返答は、通常の手続きでネットワークに送り出されます(4)。
ただ、この図を見ても分かる通り、CNからMHへいく通信はいったんHA-FAを経由していかなければならなく、場合によっては非効率的です。たとえば、Net Hが日本にあって、Net Fが米国にある場合、米国内のCNとMHが通信しようとすると、毎回CNからMHへの通信はいったん日本を経由して届くという変なことになってしまいます。このような問題点を解決することが現在のIETF(Internet Engineering Task Force)で検討されているのです。
すでに、Mobile-IPはいくつかの場所で実装が進められており、たとえばカーネギメロン大学からFreeBSD等のBSD系のOSで動作するバージョンが入手可能ですから、興味がある人は利用してみると良いでしょう(CMU Monarch Project版Mobile-IP)。ただし、実験をするためには、MH、HA、FAの少なくとも3台のコンピュータが必要になりますので、ちょっと大変かもしれませんが…。
次回は、Mobile-IPが利用できるとどんな世の中になるかを見てみることにしましょう。
このビル、新しい割には外見は他の建物にあわせてちょっと古めかしい雰囲気がするのですが、実は結構ハイテクビルだったりします。たとえば、入口は障害者の人たちに配慮してボタンを押すと電動で開くようになっています(スライド式では無く、いわゆる普通のドア)。しかも面白いことに、わざわざボタンを押さなくても、扉をちょっと動かすと、あとは自動的に開いてくれるのです(最初これが分からず無理矢理閉めようとして苦労しました)。さらにもっとすごいのは鍵です。単なる普通の鍵に見えるのですが、実は赤外線で鍵と錠が通信をして、その鍵で開けられる場所か否かを判断するようになっています。つまり、各学生や教官達は1つだけ鍵を持っていれば、自分の部屋や研究室といった必要な場所に出入りできるようになっているのです。
なお入り口にはX端末が置かれており、そこから目的の人の部屋を探したり、横に置かれた電話でその部屋に電話をしたりすることができるようになっています。Gates Buildingという割には、こうした施設がUNIXで構成されているのが面白いですね。
スタンフォード大学のComputer Science学科は歴史が非常に長い学科で、この新しいビルを作るに当たり、さまざまなコンピュータの歴史を示す展示スペースを設けました。Apple IIが置いてあったり、VisiCalcのマニュアルが置いてあったり、結構面白いですが、圧巻はなんといっても入口を入った正面にある直径1mもあろうかという金属の円盤です。DECのPDP-6(1967年とある)というコンピュータのディスク盤だそうですが、こんなに大きいのに容量は48MB程度しかないとのこと。しかも、ディスク全体でです。この円盤1枚で約1cmの厚みがあるのですが、これが6枚。全部で10面(一番外側は使わない)で48MBですから、1面あたりたったの4.8MBということになります。今やPCカードディスクだって540MBもあるものが出ていますから、記憶密度はこの30年間に何倍になったことになるでしょうか?
さらに面白いのは、円盤に傷が残っていて、そこに「これは何年にヘッドクラッシュしたときの傷である」などと書かれていて、当時は多少ヘッドクラッシュしても、その場所を避けて大切にディスクを使っていたんだなあと思わせる記録です。
この他、IBM360というメインフレームの名機の操作パネルなど、歴史を感じさせるものでした。日本の大学もこういうことをやってみれば良いのにと思うのですが、どうでしょうか。
[Reported by suna@wide.ad.jp]
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