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大物シンガーが訴える著作権侵害問題 (97/09/22)

9月17日、カントリーシンガーのJohnny Cashが、コンピュータ専門のニュースサイトNEWS.COMの第一面を飾った。インターネットでの新しい企画でも始めたのかと思いきや、「Johnny Cash、議会で『著作権侵害ブルース』をうなる」というタイトル…。インターネット上での文章・映像・音声などの知的財産の保護に対し、WIPO(世界知的所有権機関)がジュネーブで条約を取り交わしたのが去年の12月。しかし、米国では議会の批准を得なければ法律として施行することができない。米国レコード産業協会(RIAA)ソフトウェア出版協会(SPA)などが集まり、議会に批准を要請する審議会が9月17~18日に行なわれた。そこで被害者の1人として証言台に立ったのがCashだった。

Cashの被害例というのは、ヒット曲「Ring of Fire」にまつわる話。スロヴァニア共和国のWWWサイトからこの曲が自由にダウンロードできた、というのが問題だった。そもそもこの曲、米国での著作権はCashのものだが、外国に対しては著作権を売却してあるらしい。従って外国では著作権所有者が使用の権利を持つわけで、通常の販売網がその国内に限られている場合はとくに問題はないということになる。が、一旦インターネットに載ってしまえば、ダウンロードは世界のどこからでも自由自在。Cashが著作権を管理する米国からでも、もちろんすぐに手に入ってしまう。それでなくても今まで海賊盤や盗み録りなどで悩まされてきたミュージシャンたちのこと、Cashの証言はまさに「著作権侵害ブルース」と呼ぶにふさわしいものだったのだろう。

Johnny Cashといえば、カントリー音楽史上大物中の大物。1950年代から現在までに録音した曲数1,500、収録アルバム500、グラミー賞受賞8回などそうそうたる経歴を持つ。ビルボードのランクインは48回で、この回数はRolling Stonesとほぼ同じというから、その凄腕のほどが分かるだろう。日本では馴染みの薄いカントリー音楽だが、米国白人社会ではまさに演歌のようなもの。未だ開拓精神が根付く中部南部を中心に絶大な人気だ。近年ではGarth Brooksなど、若者に人気の歌手も多数活躍し、カントリー熱はますます健在。審議の証言にCashが選ばれたのも、その影響力が考慮されたのかもしれない。

音楽や映像の著作権保護に関しては、議会の批准を待たずに自主的な規制に出る動きがすでに起っている。ParamauntはStar Trekファンサイトに画像や音声の撤去を命じたし、SonyがOasisファンサイトに同様の処置を施した例もある。今後のそうした規制強化を見込んで、WWWサイトを巡回し無断転載の画像や音声を自動的に探知する「Intersect」なるサービスも存在する。どの程度までの使用を認めるかは、その著作権を持つ者の判断次第。使用をオープンにして実利を得たテレビ番組「Babylon 5」の例もあるから、使用が全て不可能になるというわけではない。結局のところ、使用者は使用者としての自覚を持ち、許可を得たり、正規の料金を支払ったり、従来の決め事を徹底する必要に迫られることになるだろう。

それにしても、このCashの証言、予定では米国レコーディング産業協会の作成した原稿を読むはずだったのだが、壇上に立つやいなや、いきなり原稿を無視してのアドリブ演説になったという。通常一般人には分かりにくい議会での発言原稿、「そんな文章を読んでいられるか!」とばかりに、天下の議会演壇で自分の言葉でとうとうと話し始めたCashに、会場は一瞬唖然としたそうだ。これも出席者の大半が聴き育った大御所だからできる荒業で、説得力のほどは抜群だったらしい。批准も時間の問題と言われている世界知的所有権条約とはいえ、こうしたドラマチックな場面の報道のインパクトは大きい。私などの一般人も、思わず著作権問題に引き込まれてしまう。少なくともJohnny Cashファンの支持は確実につかんだことだろう。

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