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ウォッチャー金丸のNEWS Watch

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1998年4月6日


HEADLINE 3 articles

通信事業者のxDSL技術対応が本格的に
取り引き交渉調整を行うエージェント・ソフト
丸紅の全額出資子会社が第一種電気通信事業者の資格取得
余談4題:NTTの電力自給率アップ/デジタル広告の実態調査/NC普及の遅れ/特集「技術 燦々-ミレニアム企業への挑戦-」


 

[xDSL](レベルA'
通信事業者のxDSL技術対応が本格的に

 日経産業新聞19面には、米大手地域通信会社のGTE加入者向け回線の光ファイバー化を取りやめ、過去に実施した光化関連投資を一括償却するという記事が掲載されている。現在の回線で高速通信を実現する「デジタル加入者線」(DSL)の実用化にメドが付いたためという。GTEは人員削減を含む幅広いリストラ計画をまとめ、この中に光ファイバーと同軸ケーブルを組み合わせたハイブリッド(HFC)技術関連投資の一括償却も盛り込みんで、98年1~3月期に総額7億5,500万ドルの特別費用を計上するという。
 また日刊工業新聞1面には、NTTが簡易型ADSLの普及を目指している米業界団体の「Universal ADSL Working Group (UAWG)」に近く参加するという記事も掲載されている。UAWGは米MSやコンパック、スリーコムなど情報通信関連の約70社で構成されており、日本からはNECと富士通が参加しているが、日本の通信事業者が参加するのは初めてという。

 このGTEの方向転換は、米AOLとの協力によるxDSLインターネット接続サービス(試用期間で月$49.95の定額にて約720kbpsデータ転送を提供)にも反映されているようだ。
 まだxDSL技術は確立されたとは言い切れず、GTEの方針転換も一つの賭けとも見える。しかし、光ファイバー網拡張が高速デジタル通信への唯一の方法というわけではないので、GTEのような大手通信業者の選択にも先んずるが故の利があるとも思われる。
 NTTもそういった意味で、FTTHなど国内で推進しつつも米ADSL推進団体への参加も行い、高速ネットワーク構築への方向性に幅を持たせようと模索している、というところだろう。




○取り引き交渉調整を行うエージェント・ソフト
 日経新聞17面には、多数の売り手と買い手の取引など利害がなかなか一致しない複雑な交渉の調整を、PCがネットワーク上で自動的にこなす「代理人」(エージェント)ソフトウェアを、三菱電機東京電力が共同開発したという記事が掲載された。ネット上でそれぞれのエージェントとなるソフトが交渉を引き受け、調整を繰り返して妥協点を見つけ出す方式を取っており、通信網で企業間の取引や連携業務など様々な仕事を効率的に進めるツールとなると書かれている。取り引き交渉では売り手や買い手はPCをネットワークにつなぎ、交渉条件(物資の調達なら必要な量や時期、輸送距離、価格など)を決めるだけで、後はエージェント・ソフトに任せれば良いだけとしている。

 まだ専用の企業間ネットワーク内で使えるエージェント・ソフトのようで、取り引きのスケジュール管理なども行う機能を持っているようだ。
 東電のような巨額な資材調達を行う企業でのインターネット取引において、このエージェントを使用するようになれば、オープンなオンライン環境での受発注業務などへのエージェント技術の応用も、活発になってくるであろう。


丸紅の全額出資子会社が第一種電気通信事業者の資格取得2月27日号のNEWS Watchも参照)
 日経新聞13面には、丸紅が全額出資子会社を通じて国内で通信設備を自ら保有する第一種電気通信事業者の資格を取得するという記事が掲載された。一種免許は丸紅が全額出資するグローバルアクセス社がすでに郵政相に認可申請済みで、月内にも免許を取得できる見通しと書かれている。これまでも商社が他企業と共同出資で一種事業に参加する例はあったが、全額出資により経営を主導する形での参入は初めてという。丸紅は米グローバル・クロッシング社と組み太平洋横断の光海底ケーブル「パシフィック・クロッシング1(PC-1)」を2000年をメドに建設する計画を持っており、グローバルアクセスは茨城県に設置予定のPC-1ケーブル陸揚げ局と東京都心を直結する回線を敷設するとしている。

 PC-1は総回線容量が80Gbps~100Gbps(2本のケーブル合計)で、通信事業者や一般企業にも使用を開放する予定の光海底ケーブルである。それはインターネットを含むデータ通信向けに使われることを前提としており、そのための前準備としてデータ通信量の多い都心とケーブル陸揚げ点を結ぶ回線敷設も、自前の第一種電気通信事業者を使って行うということだ。
 一般商社が(特にデータ伝送を中心とした)情報通信というものに対して、これまで石油や商品等の流事業にかけていた比重を情報へとシフトさせてくる動きの一つと言える。



余談その1:NTTの電力自給率アップ
 日経新聞1面トップには、NTTが国際的に割高な(日本の)電力料金の支払い負担を軽減するため、電力自給率を2010年までに現在の2%から15%に引き上げるという記事が掲載された。まず東京・大手町の自社ビルにコージェネレーション(熱電供給)システムによる大規模自家発電設備を導入し、同地区での完全自給を達成して、地区内7施設の電力コストを43%削減するという。

 2月19日のNEWS Watchでは、NTTグループの電力消費量が2010年には1990年時点の3倍の約百億kWに達する見込みという話を紹介した。その電力を何割かでも自給することが、通信事業にかかる費用の削減につながれば、通信料金の値下げなども期待できそうだ。

余談その2:デジタル広告の実態調査
 日経新聞15面には、日経広告研究所が「デジタル広告の実態調査」をまとめたという記事が掲載された。広告費上位830社のうち回答のあった350社の調査結果をまとめ、そのうちバナー広告を出稿したことのある企業は46社(13.1%)で、出稿予定の企業39社と合わせるとほぼ4分の1となるようだ。また出稿している企業の年広告費予算額は平均1,178万円で、出稿先は新聞社HPに52.2%、検索エンジンHPに50%となっており、印刷媒体などと組み合わせたバナー広告が多いという。

 バナー広告を出した企業が15%にも満たないのは、まだまだその効果がはっきりしないためと思われる。日本ではこれから延びる広告市場、と言えるだろうか。

余談その3:NC普及の遅れ
 日経産業新聞19面には、ネットワークコンピューター(NC)の97年の世界出荷台数がわずか14万4千台にとどまったという記事が掲載された。ソフトや製品開発の遅れに加えて、PCの低価格化がNC普及の足かせとなったという。米調査会社のデータクエストの予測によると、98年の全世界でのNC出荷は48万2千台で、97年に比べ3.3倍に伸びるという。しかしJavaの導入が遅れていることや、高速な通信インフラを使える環境が限定されていること、そして1千ドルを切る低価格PCが企業ユーザーにも急速に浸透し始め、98年の出荷台数は全世界で1億台近くに達する見込のため、普及のペースはメーカー側の想定よりも大幅に遅くなるとしている。

 構想だけが先走って、実動アプリケーションもほとんど整備されていない現状では、普及が遅れるのも当たり前と言えるだろう。せめてNC機器の共通仕様など、推進企業グループからの提示でもあれば、もう一歩普及も進むと思われるのだが...

余談その4:特集「技術 燦々-ミレニアム企業への挑戦-」
 今日から日経産業新聞には、創刊25周年を記念する特集「技術 燦々(さんさん)-ミレニアム(千年)企業への挑戦-」が連載される。同紙の1面では、新技術が生み出す新たな成長市場を探るため、国内主要300社を対象に156の技術分野についてアンケート調査を実施して未来の市場規模を予測したところ、その合計は2020年時点で国内99兆円(98年で20兆円弱)、全世界2兆3千億ドル(98年で5千億ドル弱)にのぼるという。2020年ごろまでの開花が見込まれる技術からは、バイオエレクトロニクスソサエティー(社会)、マイクロインフォメーションコミュニケーションという6つの言葉が引き出せ、これらの頭文字にテクノロジーのTを加えると、21世紀の技術のキーワードは「ベストミックス(BESTMICs)」となる、などとしている。

 今の日本の産業不況から脱出するためのブレイクスルーを見い出すには、興味深い特集となりそうだ。
 私なら、「ビー・モザイクBE MoSaIC」として、モザイク模様のように各々の技術が影響しあい、各々の分野が関連しあって発展するのが、21世紀の技術のキーワードではないかと思う。


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