ウォッチャー金丸のNEWS Watch
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1997年5月26日版


HEADLINE 3 articles

日本版・気球でインターネット
アジア・インターネット・ホールディング(AIH)の日本-アジア間回線強化
東京インターネットの新サーバー運用管理サービス「東京サーバーファーム」
余談4題:地下情報ボックス/医師のインターネット利用状況/セガ・バンダイ/ハービー


[インフラストラクチャ][実験政策](レベルA')
●日本版・気球でインターネット


 日経新聞3面には、郵政省は98年度から、石川島播磨重工業など重機メーカーや通信事業者と共同で、飛行船を使った無線通信システムの本格開発に乗り出すという記事が掲載されている。高度20kmの成層圏に無人の飛行体を浮かべる構想で、来年度からインターネット通信や携帯電話の中継基地として利用する方式の実証実験を始める予定で、98年度概算要求で研究開発費として10億円程度を要求するようだ。
 既にNEWSWatchを良く読んでいただいている読者の方々ならお気付きのことと思うが、このシステムは3月3日のNEWSWatchでの「気球を使ってインターネット」で取り上げた、米スカイステーション・インターナショナルのインターネット・インフラ構想の日本版そのものといえる。
 上空約20kmに気球を静止させる構想はまったく同じ(スカイステーション社の解説図参照)だが、使用する飛行船(気球)のサイズが郵政側が全長270mとしているのに対して、スカイステーション側は直径50m、全長140mで総重量約10トンという具体的な予定形状が異なるようだ。また、使用する無線周波数もスカイステーション側は現在あまり使用されていない47GHz帯という、技術的に開発要素の多い周波数帯を利用するのに対して、郵政は自動車や船舶などの近距離での衝突予防レーダーでも実績のある、30GHz前後のミリ波帯の利用を促進するということらしいので、少なくとも送受信装置に関する開発では郵政側の方が速いと考えられる。
 奇しくも今日の日刊工業新聞9面には、米連邦通信委員会(FCC)が,47GHz周波数帯をこのシステムに利用する事を承認したという記事も掲載されて(既に5月6日付のスカイステーション社のリリースに掲載済)おり、着々と2000年からのサービスインに向けて動いていることが伺われる。スカイステーション社が、西欧や北米の航空・宇宙や通信関連の企業の支援で運営されている事も考慮すると、郵政省が目指す2002年の実用化を先倒ししないと、またもインフラのデファクトを米国に握られる可能性があるのではないだろうか。
 (多分この研究テーマを注目させたのは、3月3日の日経産業新聞「サイバー企画・第6部」(現在は「モダンタイムス2001」)の1回目において、この記事が新聞1面トップを飾ったことが大きかったと思われる。今回の郵政省の開発決定を促したということで、改めて新聞ジャーナルのパワーを見たような気がしている。(NEWSWatchもその一翼を担ったかどうかは疑問だが))

 



[プロバイダー][国際回線](レベルA')
アジア・インターネット・ホールディング(AIH)の日本とアジア地区を結ぶインターネット回線強化


 日経産業新聞2面には、IIJの関連会社の国際インターネット回線の運営会社:アジア・インターネット・ホールディング(AIH)が、日本とアジア地区を結ぶインターネット回線を強化する記事が掲載されている。6月末をめどにタイと、年内をめどに中国本土やベトナム、フィリピンなど3カ国への回線を開設、97年度中にはオーストラリアへの回線開設も計画しているようだ。
 5月7日のNEWSWatchでも、7月を目途にAIHの汎アジア高速インターネット網「A-Bone」とヨーロッパのEUnetが運用する汎ヨーロッパ高速インターネット網を相互接続して、世界主要地域から市内電話料金でインターネットに接続できるローミング・サービスを展開する記事を取り上げた(5月8日のinternetWatch記事も参照)が、そのサービスインに向けてのアジア側の通信インフラ整備の為に、AIHが実質的な回線拡大作業を始めたとも言えよう。
 現在のAIHのバックボーンである「A-Bone」の接続図にある、点線でかかれた接続予定の国々との回線が敷設されるようになることは、既に敷設済の北米との回線やEUnetとの相互接続を含めて、日本を情報ハブとしたアジア、北米、ヨーロッパを結ぶ回線が整いつつあることを示している。この試みが、インターネット・プロバイダーとしての基盤を世界に広げようとする、IIJの21世紀への展望の軸となっていくのは間違いないところだ。



[プロバイダー][サービス](レベルA')
東京インターネットの新サーバー運用管理サービス「東京サーバーファーム」開始


 同じく日経産業新聞2面には、東京インターネットが6月中旬から、多機能で大規模なサーバー運用を管理する新サービス「東京サーバーファーム」を開始する記事が掲載された。その第1号として、Yahoo!JAPANからサーバーの管理業務を受託したようだ。
 同サービスはユーザーが保有するサーバーやアプリケーションなどを24時間・365日体制で人を張り付けて運用監視する他に、各種ウィルス対策などのセキュリティ機能を持たせているということらしいので、高速接続性を保ったサービスを運用したいが、運用/管理者の確保が難しい企業(特にインターネット関連のベンチャーなど)にとっては、セキュリティ管理も含めて使いたくなるサービスではないだろうか。(もちろん、コストとの兼ね合いはあるのだが)
 このところの大手企業などのインターネット・コンテンツ・サービスなどでは、自前でサーバー立ち上げ/運用管理する場合に、ソフト等の開発費はもとより、特に管理者等の人件費(ランニング・コスト)も高度な知識を持つものを雇うだけに大きく、かつ事業拡大と供に人手も必要となることから、続いて行かないケースもまま見られるようになってきた。それだけに、インターネット・エキスパートに丸々管理してもらった方が、収益などを考慮した場合に得であるという方針も出てくるのだろう。
 このサービスは、前記事のIIJ(AIH)の通信インフラを強化することによる、インターネット・プロバイダーとしての事業拡大を押し進める方式とは別に、これまで培った大型サーバー管理などのノウ・ハウを活かしたコンテンツの取込みによるもう一つの事業拡大の仕方と言えるだろう。
 インターネット回線増強にこだわるIIJと、コテンツ・サービスの拡大を模索する東京インターネット。かつて学術ネットの時代から日本のバックボーンを支えてきた両老舗の取組みが、今後の日本のインターネットを含めた通信サービスの枠組みにどのような影響を与えるか、注目される。



余談その1:
 日経新聞1面には、日本の通信各社は、建設省が道路管理用の情報網などとして主要国道沿いに整備している情報ボックス(共有溝)を活用した光ファイバー全国基幹網づくりを進めているという記事が掲載された。DDIが2003年度までにこれを使って全都道府県に光ファイバー網を張り巡らせる計画を決め、KDDなども国道246号ルートなどを利用したい意向のようだ。
 情報ボックスを使えばケーブル敷設コストが1/10で済むらしいので、設備投資負担が通信料金に跳ね返る率も少なく、これまで自前の国内インフラを持たなかった通信業者も国内通信参入を考慮して、この道路歩道部地下30cmの溝を活用してくるに違いない。

余談その2:
 日経新聞13面には、医療情報サービスの日本医療情報センター(JAMIC)がまとめた「医師のインターネット利用状況」調査で、回答者の過半数(約54%)がすでにインターネットを利用していることが分かったという記事が掲載されている。
 回答率が約12%(調査総数全体が6万人)だったようなので、全国で7千人近くがインターネットを使っているということであり、こういったことに回答してくれる医師は、インターネット関連のアンケートには積極的に回答してくれたとも考えられ、これをもって医師半数がネチズンであるから遠隔医療や自宅からの診察などの環境が整いつつあると言えるかどうかは...

余談その3:1月24日のinternetWatch記事の関連)
 日経新聞13面には、バンダイが5月上旬に開いた臨時取締役会で、今年10月に予定しているセガ・エンタープライゼスとの合併の契約書調印を「当初の5月中から7月に延期する」決議をしていたことが明らかになったという記事が掲載されている。バンダイ社内で合併再考を求める声が大きいことからの決議のようで、再検討の取締役会が今日開かれているようだ。
 「たまごっち」の成功が、バンダイに有形無形の企業活力を与えているのだろうが、日本のM&Aの難しさを示す例ともなりそうだ。

余談その4:5月20日のinternetWatch記事も関連)
 日経新聞15面の「すぽっと」コーナーに、ジャズ・ミュージッシャンのハービー・ハンコック氏のインターネットと音楽についてのミニ・インタビュー記事が掲載されている。氏は、日本の音楽配信サイト:ミュージック・シー・オー・ジェーピーにも500万円出資しているようだ。
 60年代のジャズ・シーンをリードし、70年代からのヒップホップ・ムーブメントの火付け役とも目される氏が、90年代の音楽とインターネット(著作権問題も含めて)に関して、どのようなアプローチを見せてくれるか、楽しみではある。



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