ウォッチャー金丸のNEWS Watch
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1997年5月30日版


HEADLINE 3 articles

CATVデジタル放送に関する技術標準
米HPの無線情報ネットワークシステム「LMDS」
OracleとNetscapeの家庭・ビジネス用端末開発
余談5題:電子認証業務調査研究会/国際ビジネスIP/複雑系プログラム解析/第7回流通システム大賞/連絡事項


[デジタルCATV][技術標準](レベルA')
日本CATV技術協会のCATVデジタル放送に関する技術標準


 今日の日刊工業新聞1面トップには、97年度内にも一部地域で始まるCATVのデジタル放送に関する、社団法人日本CATV技術協会の技術標準の骨子が明らかになったという記事が掲載されている。通信衛星(CS)放送のPerfecTV!や来春開局予定のJスカイBなどの方式と同様に、顧客の契約内容や課金情報を書き込むICカードを受信端末(セット・トップ・ボックス:STB)に組み込んだり、画像の多重方式もMPEG2に準拠するなど、各CS衛星デジタル放送に準じた標準となっている。これがどうやら、民製機器のデファクト・スタンダードになる見込みで、この仕様共通化によりCATVデジタル放送用受信機の開発が早まりそうな気配のようだ。
 また、同紙9面には、日立が12月にも、CATVデジタル放送用受信機を商品化する記事も掲載されている。上記の技術標準の骨子が固まったのを受けて、商用化を目標にした、ICカードを挿入するタイプのSTBの試作機を開発したようだ。
 ここにきてのデジタルCATV技術標準がCS衛星放送に準じるという発表は、5月19日のNEWSWatchにも書いたような、日本でのCATV普及がCS衛星放送の広まりなどで難しくなるという状況を打開する一方策となるだろう。STBの方式共通化は、開発費削減をもたらし量産効果も見込めることから、製品価格も安価に抑えられるというメリットもある。
 しかし、今回一つ気になるところは、データ通信の話がすかっり抜け落ちているという部分だ。5月6日のNEWSWatch記事でも、松下電産が英国の衛星放送のBスカイB用のSTBを納入する件で、インターネット接続機能もそのSTBに持たせる事を報じたが、こういった海外向けのSTBとは、このままで行くと国内のSTB標準仕様が、異なってくることにもなりそうだ。
 折角デジタル化されるCATVを、インターネット接続に生かせないとなると、また日本国内だけ世界標準と異なるものが普及することも考えられ、技術的にも孤立を招く恐れもある。インターネット接続も含めたデジタルCATVデータ通信の部分も充分検討して、何らかの指針を盛り込むべきだったのでは無いだろうか。



[無線データネットワーク][ホームユース](レベルA')
米HPの無線情報ネットワークシステム「LMDS」


 同じく日刊工業新聞1面には、米ヒューレット・パッカード(HP)が28日、無線方式の情報ネットワークシステム「LMDS」(LocalMultipoint DistributionService)実験開始に合わせて、今年後半にモデム等の関連機器の出荷を開始するという記事が掲載されている。28GHzのサブミリ波を使い、高速で多チャンネル通信に対応しており、一般家庭などのエンド・ユーザーと通信基地局を無線でつなぐシステムのようだ。
 既にStanford TelecommunicationsInc.社との共同開発が進んでおり、米連邦通信委員会(FCC)も今年3月には方式承認(27.5~28.35GHz、29.1~29.25GHz、31~31.3GHzの1.3GHz帯域幅の周波数使用許可も含む)を出して(HPのプレスリリース参照)いることから、実験とは言え、かなり製品に近い形でのものとなりそうだ。
 利用周波数がサブミリ波と高いので、PHSを使った場合のようなkbpsクラスの低速無線データ転送よりも、Mbpsクラスのファイバー・トゥ・ザ・ホーム(FTTH)における利用の方が適しているだろう。実際、一軒一軒に光ファイバーを敷設するよりも、ある程度近所同士でまとめて無線などで通信した方が、工事費はもちろん、通信効率も上がることから、情報利用の効率化につながる技術と言えよう。SOHOなどで使う場合も、LAN無しでいきなり複数台のPCを中継局につないでデータ転送する利用方法も考えられ、このシステムの仕様や製品価格など、どの様に設定されるのか注目される。



[NC][クリスマス商戦](レベルA')
●「家庭・ビジネス用端末」by Oracle & Netscape Communications


 日経産業新聞6面には、既に情報家電ソフト技術などを開発する子会社を合併することで合意した米ネットスケープ・コミュニケーションズオラクルとが、インターネットに接続して情報収集や娯楽に使う「家庭・ビジネス用端末」の開発を加速するという記事が掲載されている。今年の冬のクリスマス商戦向けに第一弾を発売する計画らしい。
 5月21日のinternetWatch記事でも報じられた、NavioCommunications社NetworkComputer(NCI)社を合併した成果が、早くも今年の末に出て来ることとなり、大いに注目される。
 このところのオラクル社などのNC攻勢はかなり急を告げており、その勢いもあるのだが、今のところのNC製品は企業LAN内で使うタイプのものがほとんどで、一般家庭向きとは言い難いものばかりであった。多分、この企業向け端末の市場を、ある程度はNCに食われるのではとWintel(NetPC)陣営も予想しているだろうが、これがパーソナル(ホーム)ユースにも広がるとなると、黙って見過ごしてはいられないだろう。「とても家庭用機器としては使い物にならないだろう」という発売前のNC潰し論争や、発売後の「ほら、やっぱり使えないじゃないか」的なあげ足取り論など、色々な圧力や牽制がWintel陣営から浴びせかけられるのは、火を見るより明かだろう。
 NetPCなどとの様々な意味での競争は今後も続くのだろうが、まず今年のクリスマスでサンタが良い子に渡すプレゼントは、NCになるのかNetPCになるのか、それとも?(^_^)



余談その1:
 日経新聞5面及び日刊工業新聞2面には、郵政省の「認証業務に関する調査研究会」は29日、インターネット上の電子認証を行う専門機関についてのガイドラインを盛り込んだ報告書をまとめたという記事が掲載された。暗号技術など認証機関が満たすべき要件や本人証明、内容証明などの業務内容、顧客情報の保護などの責任範囲を示しているようだ。
 これも、このところの電子認証業務が民間ベースで次々に組織化されて来たことに対する行政の対応であり、民が官を動かした好例ではないだろうか。

余談その2:
 日経産業新聞2面には、KDDが、イントラネットを構築する「国際ビジネスIP」サービスを拡充する。今秋にもグループウェアを利用した付加サービスや、データ遅延を解消して高速伝送を可能にするサービスを開始するようだ。
 今年の3月末からスタートし(3月28日のNEWSWatch参照)、主に米国間とのサービスとなっているわけだが、昨日のNEWSWatch余談その4にもあるように、インターネットのトラフィックが着実に通信のメインストリームになっていく中で、KDDとしてもこういったインターネット付加価値サービスをどんどん投入して行かざるを得ないのだろう。

余談その3:
 日経産業新聞5面には、東芝は、複雑なコンピューター・プログラムの改良作業を支援するソフトを開発したという記事が掲載された。膨大なプログラムの中から、問題の発生しそうな部分とプログラムの複雑さの度合いを表示し、改良すべきプログラムの優先順位が決められるので、高品質のプログラムをこれまでより最大20%の短期間で開発できるようになるらしい。
 このソフトは品質評価ツール「ESQUT」(Evaluation of Software Quality forUser'sviewpoinT)を元に開発されたようで、PC用としてMSのVisualBasicに対して動作するので、「ESQUT-VB」と言うようだ。
 MS関係のソフト・プログラマーなら、混然としたプログラムを読み解いてくれるこういったツールは開発時には有り難いものになろうが、ソフト・ユーザー側もこれでソフトの出来を評価するようになったら、プログラマーもかなり辛いだろうか。

余談その4:
 日経産業新聞1面には、第7回流通システム大賞の募集広告が掲載された。
 募集は6月2日から開始し、期間は7月までの2カ月間、応募対象は「開発から運用に至る各過程の一部または全般において、先例となるような先進性、社会的な貢献性、あるいは十分な改善効果を上げた流通サービス情報システム、もしくはその関連システム」となっている。
 昨年から新設されたインターネットを活用した流通情報システム部門(日刊工業新聞社インターネット大賞)も1点選ばれるが、その栄えある第一回の受賞者が、『電子メール新聞「インターネットウオッチ」(インプレス/インプレス販売)』なのは有名(!?)な話だ。この賞を受賞した後も、PCWatchやMUSICWatchなど(NEWSWatchも?)、次々に新企画を成功させているインプレス/インプレス販売には、再度ノミネートされて大賞を取ってもおかしくない実力があると確信している(のだが)。(2年連続というのは、選考上も本当に難しいのだが...)

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