1997年7月1日版
HEADLINE 3 articles
●次世代携帯電話システムの世界標準化調整
●身障者のインターネット利用促進するサービス実験「ドーナツパーク」
○IBMとNTTのエクストラネットサービス
余談1題:マルチメディア時代の通信料金
[次世代携帯電話][MOBILE
COMPUTING][規格](レベルA')
●電波産業会(ARIB)は次世代携帯電話システム「IMT-2000/FPLMTS」の世界標準化に向けて欧米と調整に入る
日刊工業新聞9面には、電波産業会(ARIB)は次世代携帯電話システム「IMT-2000/FPLMTS」(International
Mobile Telecommunications - 2000/Future Public Land
MobileTelecommunicationSystems)の世界標準化に向けて、7月から欧米の標準化機関と調整に入るという記事が掲載されている。現在の規格作成のタイムテーブルでは、98年半ばまでに国際電気通信連合(ITU)に対して各国が規格提案をすることになっているが、現時点では提案段階で規格を一本化することは困難と見られている。そこで、欧州のETSI(欧州電気通信標準化機構)や、米国のTIA(米国電気通信工業会)などと日本の提案との擦り合わせ(ネゴ)を行うようだ。
IMT-2000とは、静止した状態でのデータ伝送速度が2Mbps、歩行時などでも384kbpsを目指す次の世代の携帯電話システムのことで、ITUが世界標準化案を99年までにまとめる年次計画になっており、日本ではPHS等のデジタルデータを伝送出来る携帯電話等の次に開発されるシステムと目されている。4月4日のNEWSWatchでも、NTTDoCoMoが、この次世代携帯電話(IMT-2000)規格となるであろう通信方式:CDMA方式の開発に着手している事を取り上げたが、この規格案の裏付けを取る為にも、こういった研究開発が進められているということだろう。
また、同じく日刊工業新聞9面には、ドイツの大手通信機メーカーのシーメンスは7月1日付で電波産業会のFPLMTS研究委員会事業に加盟するという記事も掲載されている。欧州の通信機器メーカーとしては、スウェーデンのエリクソン、フィンランドのノキアに次いで3社目で、近く3社は連名でIMT-2000規格の独自案を電波産業会に対して提案するらしい。
最近の6月3日のFPLMTS研究委員会会合には、米国のモトローラやルーセント等の日本法人も数社出席しており、欧州(GSM主流)、米国(PCS規格)、日本(PHS方式)と韓国という、現在の携帯電話規格の対立(互換性の無さ)の縮図がそのまま研究委員会の中に存在しており、欧州勢の追加参加はますます規格の調整を難しくする可能性もある。
折しも、日経産業新聞9面及び日刊工業新聞9面には、日産自動車が、携帯・自動車電話事業分野での技術開発・研究の一層の充実を図るべく、新会社「日産コミュニケーションシステム株式会社」を7月1日付で設立するという記事も掲載されており、こういった異業種からの新規参入組から出されてくる技術的要望などにも、広く応えることの出来るような早期の規格提案を期待したい。
[3D技術][身障者サービス](レベルA')
●野村総研は身体障害者のインターネット利用を促進するサービス実験「ドーナツパーク」開始
日経産業新聞2面には、野村総研が7月1日、3D構築技術を使って身体障害者のインターネット利用を促進するサービス実験「ドーナツパーク」を始めるという記事が掲載されている。ユーザーは3D仮想空間の中をアバターとなって自由に歩き、音声入力で会話を楽しむことができる。98年10月まで遠隔教育や雇用セミナーなどへの応用を実験、その後は自治体に対する運用コンサルティングや運用代行を手がける考えで、自宅や医療施設などからも利用できる福祉関連の情報提供や遠隔教育、雇用募集セミナーなどの無料サービスなどを展開するようだ。
6月30日の野村総研のニュースリリースにも、実験概要として障害者と健常者をつなぐ共有(バリアフリーな)空間の構築や、障害者向けインターネット3Dインターフェースの研究開発などを挙げており、実験フェーズも、平成9年7月~12月の6カ月と、平成10年1月~12月の12カ月と分けて具体的な事業展開も視野に入れれているのが分る。実験参加協力も心身障害児総合医療療育センターや社会福祉法人の東京コロニートーコロ情報処理センターが行い、技術協力にもソニーやコンテンツ制作会社のアイ・エム・ジェイ(IMJ)などが名を連ねており、「障害者にとって有用なものというだけでなく、健常者にとっても障害者とのコミュニケーションの機会が与えられることになり、今後の社会福祉を考える上で双方公平な立場での議論が可能となる」としている。
単にヴァーチャル環境だから、身体的な移動がなくてもコミュニケーションが取れるということでネットを利用するという根本的な部分から、実験によってヒューマン・インターフェースなどが改善されることにより、よりメンタル(精神的)な広がりや繋がりを持てるツールとしてのネット利用まで踏み込めれば、この実験が目的とする真のバリアフリーな空間を構築出来ると思われる。
[エクストラネット・サービス](レベルB)
○米IBMとNTTはTCP/IPベースの大規模ネットワーク構築サービス開始
日経産業新聞9面及び日刊工業新聞8面には、米IBMは6月30日、NTTと協力してTCP/IPベースの大規模ネットワーク構築サービスを始めると発表したという記事が掲載されている。7月1日からメガネ業界最大のネットワークであるメガネット協会(東京・八王子市)と、ニコンオプティカル(東京・墨田区)の連携ネットワーク向けに同サービスを始めるということで、IBMとNTTの2月のネット分野での提携の第1弾事業となるようだ。
日本IBMの6月30日のプレスリリースでも、今秋でのメガネレンズとフレームの受発注エクストラネット本格展開を目指し、ISDN接続を含むOCN指向のネットワークをNTTが利用し、使用するミドルウェアやゲートウェイ技術、アプリケーションの運用をIBMが行うということになっており、TCP/IPベースとOCNなどを使う以外は、今までの企業間業務システム構築事業といえるだろう。
今回のメガネット協会とニコンオプティカルのネットワークは、メガネメーカー10社と卸約60社、そして全国約4千の小売店で組織された業界最大規模のものらしいので、システムのオープン性も必要となってくることから、エクストラネット利用が”おメガネ”に適ったということだろう。(^_^;)
余談その1:
日経新聞5面及び日刊工業新聞2面には、郵政省の「マルチメディア時代の料金・サービス政策研究会」が30日、将来の通信料金のあり方に関する中間報告をまとめたという記事が掲載された。
NTT再編後の事業者間競争を促すため、長距離や国際通信市場では「上限価格方式」を、地域通信市場では通信事業者の経営努力を競わせる「ヤードスティック方式」を軸に検討を進めるよう促しているらしい。
難しそうな両方式名だが、要は長距離をわずかに定額制に近づけ、近距離はNTTの寡占を和らげるための(苦肉の)策と言えそうだ。現実的に通信料金の”大競争”時代はまだ先なのだろうか...
|