1997年8月11日
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●日本国内外の通信インフラストラクチャー拡充実験2題
○富士ゼロックスの情報コンビニ「DOCST(ドクスト)」
余談4題:7月のウィルス被害/仮想電気街/銀行倒産/Apple関連
[インフラ構築][政策](レベルA')
●日本国内外の通信インフラストラクチャー拡充実験2題
8月9日(土)の日経新聞10面には、科学技術庁と通産省、厚生省が来年度から共同で、傘下の研究機関同士をつなぐ1Gbpsの通信網構築に着手するという記事が掲載されている。現在の基幹網の20倍以上となる通信試験システムを5年以内に構築するようだ。
現在、国立研究機関などを結ぶネットワークは、東京-筑波間が最大で45Mbpsとなっており、来年初めには155Mbpsに拡大されるのだが、スーパーコンピュータ用にはもっと伝送速度の速い回線が必要になってきたことから、着手するらしい。
また8月10日(日)の日経新聞3面には、郵政省が今秋から、アジア・太平洋地域に光ファイバー網を敷設し、マルチメディア技術の国際利用を進める実用化実験を始めるという記事も掲載されている。アジア太平洋経済協力会議(APEC)が95年に打ち出したアジア太平洋情報基盤(APII)構想を具体化するための初めての試みであり、第1弾として10月からシンガポールと、98年初めには韓国と共同で遠隔医療/会議や高機能インターネット実験を実施するようだ。
記事では日本とシンガポール、韓国の間に、アジア地域では最高速の2Mbpsの海底光ケーブルを敷設するとあるが、5月26日のNEWS
Watchでも紹介したアジア・インターネット・ホールディング(AIH)の汎アジア高速インターネット網「A-Bone」は既にシンガポールとも6Mbpsの回線を持っており(回線接続図参照)、またAT&TやKDD、NTTなどが推進するChina-US太平洋海底光ケーブルネットワーク計画(4月1日のNEWS
Watch記事を参照)においても、中国と韓国、日本を80Gbpsで結ぶ計画となっており、それらに比べて伝送速度などでも、ちょっと寂しい内容ではある。
米国では、インターネットの始祖でもあるARPANETの時代から現在のギガビット伝送実験まで、絶えず研究機関の実験が通信インフラ向上を引っ張っている。それに対して上記2題とも、日本の行政のインフラ構築への実験取組みが、米国どころか国内の通信業者にも遅れをとるような内容となっているようだ。先進技術の実証実験の成果を、民間事業への活用へと下ろしてくるような構造にしないと、今後も通信業者の営利目的でしか高速通信インフラが整備されていかないという事態を招きかねないのではないだろうか。
[情報コンビニ][SOHO](レベルB)
○富士ゼロックスの情報コンビニ「DOCST(ドクスト)」展開
8月10日(日)の日経新聞1面には、富士ゼロックスが在宅勤務者や個人事業主向けに情報関連機器を扱うコンビニエントストアー「DOCST(ドクスト)」を展開するという記事が掲載されている。OA機器のレンタルからPCや周辺機器のトラブルの出張サービスなどを手掛けるようで、既に千葉・新浦安駅付近にモデル店をオープンしており、来年には1号店出店、2000年までには300店を出店する意向らしい。
現状の情報機器サービスでは、OA機器やPCなどのメーカーがサービス・ステーションを独立させてユーザーへのアフター・サービスにあたるケースが多く、当然自社製品をメインにサービス展開を行うのが一般的である。また、機器販売店がサービス店を兼ねる場合は、販売機種を中心にサービスを行っている。こういったサービス体制がある程度整備されている状況で、情報コンビニと銘打って差別化を図るのならば、時間的なサービスの拡大(24時間営業)や、対象機種の拡大(携帯電話やFAXなどにも広げる)事が必須だろう。ただし、そこまで充実したサービスを展開しても採算がとれるようになるのが、2000年よりもっと遅くなる可能性も、最近のPC売上や普及の鈍化を見ていると感じられてしまう。通常のコンビニが、数年かけて生活文化に定着したように、情報コンビニが定着する為には、もっともっと情報機器が身近で簡単に操作・運用出来るようになり、一般への浸透が家電並かそれ以上に広がる必要があるだろう。
余談その1:
8月9日(土)の日経新聞34面及び日刊工業新聞10面には、日本の7月のコンピューターウィルス被害の届け出が32種類、353件で過去最高を記録したことが8日、通産省のまとめで分かったという記事が掲載された。今年4月以来4カ月連続で情報処理振興事業協会(IPA)への月間届け出が過去最高を更新したことで、同省などは最新のウィルスワクチンの使用などを記したPCユーザー向けの「ウィルス対策7ヶ条」を明記するよう、PC関連業者に要請しているらしい。やはり「マクロウイルス」が猛威を振るっており、全届け出件数の66%を占めているようだ。
6月9日のNEWS
Watch余談その4で話題にしたときには、5月の届け出数が230件と、2カ月連続の過去最高件数だったのだが、ウィルスは単なる脅威から、(かなり細い川の)対岸の火事くらいになって火の粉が少し我身に降り掛かってきているようにも感じられる。自分の身近で痛い目に会うほどくらいにならなければ本腰の対策は行われそうになく、まだまだ被害件数は増え続けそうな気配である。
余談その2:(11日のINTERNET
Watch-Web記事を参照)
8月9日(土)の日経新聞夕刊1面には、ラオックスや上新電機、エイデンサカキヤ、サトームセン、デンコードー、和光電気、カメラのきむら、スーパーのベイシアを中心とするいせやグループをはじめとする大手家電量販店など8社が組んで、11月をめどにインターネット上に“仮想電気街”を開設するという記事が掲載された。8社は7月末に「サイバー電気街」(仮称)の開設に向けた協議会を発足しており、金融機関や情報機器メーカーと連携して事業化し、電気街共通の電子マネー決済システムも導入する計画のようだ。
現実の電気街が単独店舗で成り立っているわけではなく、それぞれ特長のある店舗の集中度で集客力が上がってので、サイバー空間にもその特長を持ち込もうとしているのだが、サイバーらしく(店舗間が巡回しやすく製品説明が分り易くて、即決済出来るような)即時性があって、かつ店揃いも満足いくモールが構築され(全て揃えるのは本当に難しいのだが)れば、サイバー空間に集う意味合いも倍増するだろう。
余談その3:
8月9日(土)の日経新聞夕刊2面には、9日付の英紙デーリー・テレグラフが、「インターネット上に登場した初のオフショア銀行」をうたい文句にしたカリブ海アンティグアバーブーダのヨーロピアンユニオン銀行(EUB)が倒産した、と報じたという記事が掲載された。設立者のロシア人2人は、預金を持ち逃げして行方をくらませたという。
元々高金利の金融商品などを扱っていて、ヤバイ銀行ではあったようで、記事のとおりに今までのURLにはリンクも出来無くなている。今はヤジウマ的に取り上げられている事件だが、金融自由化によって必ず数年後には日本でも引き起こされうる事件として記憶しておいた方が良さそうだ...
余談その4:
8月8日と9日、及び10日の日経新聞には、「マイクロソフト、アップル 戦いの果ての連合」という題名で上、中、下3回連載の特集記事が掲載され、また8日と9日の日刊工業新聞には、「落ちた果実 アップル苦悩の選択」という上下2回連載の特集記事が掲載された。
先週のWatch編集長の金曜コラムを始め、各マスコミ総出で今回の総括、賛否両論、今後の予測などを展開しているので、今更解説などは不要と思われるが、私感を1つ。
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フラワームーブメントの中で生まれたアメリカのX世代の苦悩と悲哀を、そのまま体言していると思えて何とも...(-_-)
(本日のNEWS Watchは、新聞各紙が休刊の為、主に土日の新聞をWatchしております)
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