ウォッチャー金丸のNEWS Watch

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1997年10月2日





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日米の国際通信事業再編が激化
インターネット家電とWebTVなど
余談2題:Web to CD-ROM/情報武装スーツ



[通信事業][M&A](レベルA'本日のINTERNET Watch Web記事も参照
●日米の国際通信事業再編が激化


 日経新聞1面には、米長距離通信4位のワールドコムが1日、同2位のMCIコミュニケーションズに買収提案すると発表したという記事が掲載されている。提案した買収額は約300億ドル(約3兆6千億円!)で、実現すると米M&A史上最大規模となるらしい。同社のプレスリリースでも、MCI株を1株41.5ドルとしてワールドコム株を割り当てるとして、前日のMCIの株価より41%高く評価し、MCIとの合併に合意している英ブリティッシュ・テレコム(BT)の評価額よりも約20%以上高くなるとしており、MCI株主にとってより有利な条件を提示している。
 同じく日経新聞の9面には、この買収提案に関する解説記事が載っており、BTとMCIの合併合意が白紙に戻る可能性を示している。また同じく日経新聞9面には、英BTの10月1日の反応が記事になっており、「詳細がわかるまではノーコメント」と声明を控えている事からも、かなりの衝撃が走っている様子も分る。

 昨年の11月3日にBTとMCIが合併合意を発表し、新会社Concertを設立する(昨年の11月5日のINTERNET Watch参照)としてから約1年弱、今年の8月には米連邦通信委員会(FCC)も条件付きながら合併を正式承認したあたりから、両社の合併条件の見直しの話しが上ってきており(8月25日のINTERNET Watch参照)その動向が注目されていたのだが、思わぬ強烈な横槍が入った形となったようだ。ここ1年でのMCIの収益が伸び悩んでいることが、特にBTの株主が合併に対する懸念を抱く原因ともなり、そんなこんなでBTが合併に躊躇している隙にワールドコムが得意技の買収提案を割り込ませてきたという構図が浮び上がってくる。ワールドコムの提案も、現在のアメリカ企業を再生させた要因でもある、今一番会社で強い立場にいるボード(取締り役員)と株主に対する直接的な利益提示(株価つり上げ)となっているだけに、かなりのインパクトを与えているのも確かだ。
 まだ、この提案条件ですんなりワールドコムがMCIを買収できると考えるのは楽観的観測であるだろうし、世界の通信業界の再編が進む中で、BTもアメリカへのパイプを失う事は非常な痛手を被る事になるのでそう簡単には引き下がる事は出来ない事情が或るにしろ、MCIとの合併への道のりが相当に厳しくなったと言えるだろう。

 他方、日本の通信業界の合併状況を見てみると、日経産業新聞の裏一面のビジネスTODAYコーナー(24面)では、日本国際通信(ITJ)と合併して誕生した新生「日本テレコム」の合併への経緯が解説してあり、変化が激しい業種ほど合併によって競争力を付けるための時間稼ぎ(開発などの時間を買う)が図られているとしている。その合併に対する期待や成否予測は敏感に株式に反映され、日経新聞9面にはBTやMCIの株がこの買収話の影響で株価を上げた(BTにとっては損な合併を回避する事として、MCIにとっては株価に有利な合併提案という両社にとって好材料として受けとられた)事や、同じく日経新聞の18面では日本テレコムの株式が、今回の合併が逆に不安材料として受けとられ、売りに出されてしまった事が記載されている。

 合併の効果が上がってくるのはまだまだこれから先の話しではあるのだが、先が見えないような今の時代では、その期待感や不安感といった雰囲気だけで企業などの動向の趨勢が決まってしまう可能性もあるだろう。そういった意味では、BTとMCIとワールドコム、そして新生・日本テレコム共々、どちらにどう転ぶか、まだまだ予断を許さない状況にあるといえる。



[インターネット家電][WebTV][伝送速度改善](レベルA'7月17日のNEWS Watch及び本日のINTERNET Watch Web記事も参照
●インターネット家電とWebTVなど


 日経産業新聞10面と日刊工業新聞11面には、ソニーが11月20日から、今年末からサービスインするWebTV用の専用接続端末「INT-WJ200」を発売すると発表したという記事が掲載されている。
 ウェブ・ティービー・ネットワークス(WebTV)社の10月2日のリリースでも、12月1日より家庭のTVでインターネットが利用できる「WebTV(ウェブ・ティービー)」を国内向けにサービスを開始するとしており、機器共々、サービスの準備も整ってきたようだ。

 このところインターネットTVなど、日本の家庭向けインターネット家電機器が今ひとつ売上が伸びずに苦戦しているケースが多いのだが、これまではただインターネットに繋ぐだけという仕様が追加されただけで、TVとPCを2台買わずに済むというレベルにまでは達していなかったのがその原因と思われる。また、TVで見るような受け身での面白いコンテンツがまだ少なかったのもその要因で、今回のWebTVサービスは番組提供も含めたサービスとなっている事からも、コンテンツ不足を補うサービスになると期待できそうだ。

 ただしもう一点、インターネット家電の普及でネックになっている点としてデータ伝送速度の遅さの問題があり(TV放送の画面のデータ量と比べるのは酷だが)、実際にはメガbpsオーダーの伝送速度を要求されているのが現実だ。にもかかわらず、モデム伝送速度が28.8kbpsから33.6kbpsに上がったくらいでは、相変わらず改善されていないレベルといっていいだろう。こうした通信インフラの貧弱さを補うために、例えばIIJなどのIPマルチキャストサービス実験7月1日のINTERNET Watch参照)によるインターネット放送の回線混雑の緩和策や、今日の日刊工業新聞9面に載っているような、日本シスコシステムズが10月1日から発売(同社の9月30日のリリース参照)する、Web情報をローカルで保存する「Cisco Cache Engine(シスコ・キャッシュ・エンジン)」(約543万円)や、ミラー・サーバー間でのトラフィックを軽減できる「Distributed Director(ディストリビューテッド・ディレクタ)」(約308万円~)装置などは、データの分散化を促進し通信インフラへの負担を減らすことができる地道な改善技術を導入していると言える。

 NTTのFTTH(ファイバー・トゥ・ザ・ホーム)などが実現しないと、高速放送型インターネット通信は無理なのではという声も聞こえてきそうだが、上記の様なインターネット放送コンテンツの拡充化とインフラ負担改善技術の普及の度合で、じわじわとインターネット家電機器も浸透していくことになろう。
 




余談その1:Web to CD-ROM
 
日経産業新聞3面には、新潮社のホームページ「Web新潮」で 掲載してきた小説をCD-ROM化して、10月下旬に発売するという記事が掲載された。ホームページで無料提供する小説やコミックなどのコンテンツも連載が終わり次第、順次CD-ROM化するとしており、第1弾として「四畳半襖の下張」と「赤い帽子の女」の2作を1,500円で販売するらしい。
 これも上記NEWS Watch第2項目目と同様に、インターネット・インフラが貧弱な事から、CD-ROM化によるデータ分散(ローカル化)がなされたとも言えようか。この様に現実的なインターネット事業としては、リアルタイム(Web)情報は無料サービスとしても、ストックされた(CD-ROMの様な)情報は有料にせざるを得ないというのが、現状だろう。

余談その2:情報武装スーツ(今日の面白記事)
 
日刊工業新聞24面と日経産業新聞15面には、サンリット産業(大阪市)が1日から、携帯情報端末などモバイル機器が上着の内ポケットに収容できるスーツを考案し、発売したという記事が掲載された。価格は上下セットのスーツで3万6千8百円、ジャケットは2万2千円ということで、同スーツには落下防止のファスナー付き内ポケット(モバポケ)を、既存の内ポケットとは別に左右2カ所付け、両ポケットには電磁波の遮断効果があるシールドクロスも組み込んでいるらしい。
 9月30日のやじうまPC Watchにも、「wearable computer(着ることができるコンピュータ)」なるものが紹介されており、情報武装が必要な日本のサラリーマンには必需品となるかも...(^_^)




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