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【不定期連載】

使ってみました!インターネットショッピング決済技術

第3回「acosis(アコシス)」


 昨年から本格的に始動したエレクトロニックコマースだが、昨年まではそのほとんどが実験的に行なわれるもので、実際に使える所は少なかった。しかし今年になってようやく私たちにも利用できるものが増えてきた。一口にエレクトロニックコマースや電子決済と言っても、クレジットカードを使った支払いから、カラオケを一曲歌ったときにわずかな金額を支払うといったような使い方まで幅広い。このシリーズでは、WWWサイトのセキュリティの信頼性や「本当にお金を払ってまで使う価値があるの?」といった不安要素を検証し、さまざまな支払い方法(決済技術)を体験レポートする。

 さて3回目は、オンラインクレジットサービス「アコシス」をお送りする。


■アコシスっていったい何?

 アコシスとは、「ラララむじんくん♪…」でおなじみの、消費者金融のアコムが行なっているインターネット上のオンライン決済サービスだ。商品購入の申込や与信、利用明細の通知といった、クレジットカードで行なわれる一連の確認作業を、アコムがインターネットで行なう。言ってみればカードクレジットならぬ、「オンラインクレジット」だ。インターネットを活用した結果、購入時にかかる経費がほぼ0円になったため、入会金や手数料といった利用者への負担は少なくてすむ。また、加盟店側の手数料も売上の3%なので、従来のクレジットカードの手数料に比べるとかなり割安になっている。1回の利用金額も1円から20万円までと幅広く、大抵の決済には利用できるだろう。

 なお、アコシスの会員データは、アコムのデータベースとはまったく別に管理されている。そのため、アコシスに入会したからといって、突然アコムから利用案内が送付されてくることはないとのこと。アコムとの関係が気になる方も多いと思うが、その点は安心してアコシスを利用できそうだ。

■購入手順は4種類

 アコシスには4種類の購入手順があり、それぞれ若干違っている。ひとつは、文章や画像のようなデジタル情報を販売するために使われる「オンラインサービス」。これはWWWで購入申し込みを行なうと、その場でデータの引き渡しを行なうと同時に決済も完了する。このほかに、WWW上から申し込んだものに対して、後から電子メールで購入確認通知がくる「スタンダード」、「セミスタンダード」、「メンバーフィーサービス」がある。そのうち、スタンダード、セミスタンダードは1回限りの支払いを行なうが、メンバーフィーサービスは講習会の月謝やプロバイダの利用料などの定期的な支払いをするためにある。4種類の購入手順は、予め店舗や商品ごとに決められているので、利用者は選択できない。

 また支払い方法は、いずれの購入方法を使っても銀行の自動引き落しだ。ただし高額な商品を購入したときに、一括払いだけでなくリボルビング(月々定額支払い)を選択した場合はこの限りではない。

 実際にアコシスで買い物をする手順は、後程紹介するが、メンバーフィーサービスはスタンダード、セミスタンダードと支払い方法が同じなので、ここでは省略する。

予想外に簡単な入会手続き

入会までの大まかな流れ

  1. WWWより入会申込書の取り寄せ
  2. 郵送によりアコシスより入会申込書到着
  3. 郵送にてアコシスへ入会申込書発送
  4. 電子メールにてアコシスより入会完了の通知

■会員申込書類を手に入れよう(1日目)

 アコシスのWWWサイトから、「会員になるには」を選んでみよう。アコシスの利用ガイドや会員規約なども見ることができるので、一度は目を通してほしい。また、仮申込みをするにはWWW上のフォームから名前・連絡先など打ち込む。セキュリティを考慮してSSLモードで打ち込むようになっている。







■郵送にて入会申込書が到着(3日目)

 WWWサイトから仮申込をしてから、申込書類が2日後に到着。記入する書類は、クレジットカードの申込書のような「アコシス入会申込書」のみ。このとき、利用時に使うパスワードも一緒に記入し、捺印した後にアコシスへ郵送する。

■これで終わり!?(6日目)

 3日後に電子メールにて「アコシス入会手続き完了のお知らせ」が届く。この電子
メールでアコシスのIDナンバーと利用限度額が通知される。これで手続き終了だ。予
想外にあっけなく入会できてしまった。
 また、IDナンバーがクレジットカードと同じ16桁の数字なので、何か意味があるのかと思い、念のためアコシスに確認してみたところ、海外加盟店利用や提携クレジットの可能性があるために、日本クレジット産業協会経由でISOコードを取得しているとのことだ。

■予想外に簡単な入会手続き

 WWWサイトから仮申込をしてから、わずか6日目で入会手続きが完了してしまった
。このうち郵送の待ち時間があることを考慮すると、実質1~2日のスピード入会だ。
また、WWWブラウザやパソコンに特別な設定を行なわないので、誰でも簡単に手続き
をすることができるだろう。

さっそく、使ってみよう



購入手順は4種類あることは、前に書いた通りだが、では具体的にどういう手順になっているのだろうか。まずは、「スタンダードサービス」を見てみよう。なお、流れ図はこの後に説明する「スタンダードサービスとセミスタンダードサービスの違い」のところを参照してほしい。

■「スタンダードサービス」で、何か商品を買ってみよう

 アコシスで買い物ができる店が集まっているacosis info mallへ行ってみる。モール内のショップの紹介は、コピーライターがコメントを考えているだけあって文章が簡潔で分かりやすい。その中で目についた「THE ARK III」を買ってみることにする。この商品は非常時に、これだけで3日間生き延びられるという保存食品らしい。買い物をするには、WWW上から商品を送るための送付先や連絡先を指定し、送信ボタンを押す。すると先ほど入力した内容の確認画面になり、ここで入力内容に間違いが無いことを確認すると、SSLが利用されたアコシスの管理画面に変わる。再度内容を確認し、問題なければ入会時に取得したIDナンバーと暗唱番号を入力すると、申し込みが完了だ。

■購入確認が来る(3時間後)

 WWW上から購入の申し込みをしてから、3時間程たって利用確認メールが届いた。メールに書いてある内容に問題がなければ「yes」、気が変わったり、間違えて申し込んでしまった場合は「no」、注文した覚えがない場合は「stop」を返信する。確認を返信する場合は、コンピュータで自動的に処理されるため、サブジェクトは変更してはいけない。そして、本文はyes、no、stopのいずれかの文字だけを書き込む事になっている。

 この購入の確認だが、送料が明確に記載されておらず、備考欄へ送料は別途、支払
時に加算するといった表示がされていた。他の商品の場合もチェックしてみたが、シ
ョップによって、購入確認の表示方法が異なるのが気になった。

 また、購入確認メールに対し、24時間以内に返事を出さないと、24時間後、48時間後に再度メールが送られてきて、72時間経っても返事がなければ、その取引は取り消されてしまう。

 安全対策としては、1件の取引に何回も返事を送っても、1回しか受け付けないよ
うになっている。

 ちなみに電子メールのサブジェクトを見ると、日付と番号、そして意味不明の文字
列が書かれている。この文字列はアコシス署名と呼ばれ、アコシスから正規に発行さ
れた文章の根拠となる文字列のことだ。このアコシス署名により、送付されてきた文
章が改ざん(文章が不正に変更されること)されていないかを、アコシス側で確認す
ることができる。

■商品到着(3日目)

 申し込み完了後、3日目には商品が到着。5年間有効の保存食だけあって、すべてア
ルミパックされている。開けて味見をしたい気もしているが、もったいないのでまだ
そのままだ。

■利用明細(5日目)

 そして遅れること2日、アコシス「お客さまご利用控え」が電子メールで到着。時折、商品が届くより前に利用明細が届いてしまうこともあるらしい。今回は問題なかったが、物流と電子メールの時間差により発生するので、焦らず少し様子をみてほしい。







■スタンダードサービスとセミスタンダードサービスは、何が違う?

スタンダードサービス
セミスタンダードサービス
1.店舗WWWより商品購入の申し込み  1.アコシスWWWよりID、パスワード入力し申込受付ナンバーを取得する
2.店舗WWWより申し込み内容を確認 2.店舗WWWより申込受付ナンバーを入力し、商品購入の申し込み
3.アコシスWWWより申し込み内容を確認後、IDパスワード入力 3.店舗WWWより申し込み内容を確認
4.アコシスより電子メールにて、申し込み内容の確認 4.アコシスより電子メールにて、申し込み内容の確認
5.アコシスへ電子メールにて、申し込みの返信 5.アコシスへ電子メールにて、申し込みの返信
6.店舗より、商品発送 6.店舗より、商品発送
7.アコシスより電子メールにて、利用明細の通知 7.アコシスより電子メールにて、利用明細の通知

            
 スタンダードとセミスタンダードを比べると、「セミスタンダード」の場合には購入前にひとつ作業が必要になる。注文を行なう前に、アコシスWWWより申込受付ナンバーを取得するのだ。

 ここでもSSLが使われており、通信内容がすべて暗号化された状態でIDナンバー、パスワードを入力すると、WWW上に申込受付ナンバーが表示される。そして注文を行なう店舗WWWから、控えておいた申込受付ナンバーと購入する商品や商品の送り先などの入力を行なう。このときはSSLが使われておらず、購入内容を見られる可能性はある。しかし、申込受付ナンバーは本人が1回のみしか使えないため、不正に使用されることはない。

 なぜスタンダードとセミスタンダードという同じようなサービスがあるかと疑問を持つ人もいるだろう。これは店舗側の問題で、スタンダードサービスを利用するためには、CGIなどを自由に使えるWWWサーバが必要になってくる。これに対し、セミスタンダードサービスでは、レンタルサーバーでも使えるので、資金が少ない店舗でもアコシスを使えるようにということなのである。

■「オンラインサービス」でデジタルコンテンツを買ってみる


オンラインサービスで購入時の大まかな流れ

  1. 店舗WWWへ購入申込
  2. 店舗WWWより、アコシスご利用確認
  3. アコシスWWWより、アコシス利用入力でID、パスワードを入力
  4. 商品をその場で入手
  5. アコシスより電子メールにて、利用明細の通知

■今日の運勢、その場で1回200円

 文章や画像などのデジタル情報は、一度見ると、もう必要ではなくなってしまう。
このため結果を見せると同時にお金を徴収しなければならない。その点がどうなって
いるか、試しに「マドモアゼル・愛先生の占い」をやってみよう。自分の生年月日と運勢をみてほしい年月日を入力してボタンを押す。するとスタンダードサービスと同じように「アコシスご利用確認」が表示される。その後、IDナンバーとパスワードを入力すると、すぐに占い結果が表示され、後から電子メールで利用通知が来た。

■支払は1ヵ月まとめて

 月末になると1ヵ月の利用金額をまとめた銀行引き落し明細が電子メールで来る。
このとき1ヵ月の利用料金が2,000円以下の場合、翌月にまとめて引き落される。こ
れは銀行に支払う引き落し手数料を考えると、2ヵ月分まとめて処理したほうが割安
だからとのことだ。

■アコシスを使ってみて

 入会から利用、支払いなどインターネットで買い物をするには、使いやすく考え
られている。また、現実社会で加盟店による架空売り上げが問題になっているが、アコシスは利用者の情報を加盟店に知らせない(そのためか商品を購入する際は、毎回送付先を入力する必要がある)など、安全面でも考慮されている。

 また、アコシスの設計コンセプトは、経費的な面でも合理的に考えられている。経費的な面では、1ヵ月の引き落し金額が2,000円以下の場合は、翌月にまとめて引き落しを行なったり、利用者との連絡をすべてインターネットで行なうことにより、トランザクション当たりの経費0円を実現した。このため、利用者一人当たりの利用額の採算分岐点が、カード会社の3,000~4,000円に比べ、2,000円以下に抑えられている。加盟店の面からは、高価なWWWサーバを使わなくても、アコシスを利用できるように暗号化をする部分を最小限に抑えてある。利用者も、特別なソフトを用意をしたり、複雑な設定をしなくても、すぐに利用できる使いやすさがポイントだろう。

 6月時点で約650名の利用者が登録しており、63の加盟店でアコシスを利用できる。年内にも200店舗を目指しているとのことだ。

 今回、調査や取材をしてみて、システム全体の調和がとれていて、使いやすく良い
システムだと感じた。

ACOSIS スペック


●入会にあたって
入会条件:

  1. 日本国内に居住している人
  2. Netscape Navigator 1.1以上、Internet Explorer 2.0以上、Power Browser 1.0以上のいずれか
  3. 日本語の電子メールソフトが利用可能な人
  4. 20歳以上で安定した収入がある人、および18歳以上の学生の人(高校生はのぞく)
  5. 所定の審査をクリアした方

●利用にあたって
プラットフォーム:

  1. Netscape Navigator 1.1以上、Internet Explorer 2.0以上、Power Browser 1.0以上のいずれか
  2. 日本語の使用が可能な電子メールソフト

費用:315円/年
利用技術:SSL、電子署名
利用限度額:月額20万円
リボルビング:月1万円/月2万円

評価基準(三段階評価)
 設定の簡便 :★★★
 安全性の配慮:★★1/2
 利用金額  :★★★
 コメント:
 ○クライアント側の設定はまったく無く、日本語環境でSSL対応のWWWブラウザと電子メールさえ使えれば即利用できる。
 ○安全性ではWWWブラウザでIDやパスワードを流すときにSSLを使っている点やIDや
パスワードがアコシス以外(購入した加盟店にも)には知られない点は安全性はかな
り高い。また電子メールで確認メール等を送ったときにも、本文を変更できないように署名を付けている点は、高く評価できる。唯一、電子メールの本文自体が暗号化されていないので、取引内容を見られてしまう可能性は残っている。
 ○利用金額も1件1円~最大月額20万円まで購入でき、幅広く対応している。

('97/8/15)

[Reported by Watcher小林(chibiayu@sag.bekkoame.or.jp) ]




第1回「TSM(トッパン・セキュア・モール)」
/www/article/970509/ec.htm


第2回「BitCash」
/www/shopping/bitcash.htm


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