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【レポート】実用化への検討段階に入った「ENUM」

第57回IETF Meetingから

 「第57回IETF Meeting」が7月中旬、オーストリアのウィーンで開催された。今回は、特に動向が注目されている「ENUM(tElephone NUmber Mapping)」に関する状況を中心にレポートする。


ENUMとは何か

 ENUMとは、電話番号をドメイン名形式で表わすことにより、DNSで検索できるようにする仕組みだ。例えば、「03-1234-5678」という電話番号は、以下の6段階の手順によりドメイン名へ変換される。

 1) ITU-Tによって定められた国番号つきの「E.164番号」にする
    +81-3-1234-5678
 2) 先頭の「+」と数字以外の文字を抹消する(ここで「+」を抹消しないのは、
   将来E.164以外の別の番号体系にも対応できるようにするため)
    +81312345678
 3) 数字以外の文字を抹消する
    81312345678
 4) それぞれの数字の間に「.」(ドット)を挿入する
    8.1.3.1.2.3.4.5.6.7.8
 5) 数字を逆順にする
    8.7.6.5.4.3.2.1.3.1.8
 6) ENUMのドメイン「.e164.arpa」を追加する
    8.7.6.5.4.3.2.1.3.1.8.e164.arpa

 このような手順をどこかで見たことがあると思われた方もいるだろう。そう、ENUMでは、DNSにおけるIPアドレスの逆引き検索(IPアドレスから該当するドメイン名を識別)とよく似た仕組みが利用されているのだ。逆に言えば、インターネット全体をカバーする唯一の分散データベースであるDNSを利用することで、ある電話番号に結び付けられた各種サービスを検索する仕組みを構築しようというのが、ENUMが作られたそもそもの動機なのである。

 IPアドレスの逆引きの際にはDNSの「PTRレコード」が使われているが、ENUMではこれに相当するものとして、「NAPTR(Naming Authority Pointer)」というリソースレコードが使われる。以下にNAPTRレコードの記述例を紹介しておく。記述内容に関する技術的な説明はここでは省略するが、このような形でひとつの電話番号について、電話やメールなど複数のサービスへのポインタを列挙することができるという点に注目しておいて欲しい。

 $ORIGIN 8.7.6.5.4.3.2.1.3.1.8.e164.arpa.
  IN NAPTR 10 10 "u" "sip+E2U" "!^.*$!sip:info@jprs.jp!" .
  IN NAPTR 102 10 "u" "mailto+E2U" "!^.*$!mailto:info@jprs.jp!" .
  IN NAPTR 102 10 "u" "tel+E2U" "!^.*$!tel:+81312345678!" .

 このように、ENUMによって、ある電話番号により提供されるサービスを、インターネット上で統一的に取り扱うことができるようになる。すなわち、既存の電話網とインターネットとの間を相互接続するサービス、例えばVoIPなどを利用する場合に特に有用となる。このため、最近のいわゆるIP電話サービスの急速な普及にともない、世界的に非常に大きな関心を集めている技術のひとつとなっている。


実用化への課題はセキュリティとプライバシー

オーストリアによるENUMトライアルのデモ会場
 IETFにおけるENUMの標準化活動は、「ENUMワーキンググループ(ENUM WG)」において進められている。ENUM WGにおけるこれまでの活動により、ENUMそのもののプロトコル仕様についてはおおむね合意が得られ、現在はENUMの普及を図る際に考慮すべき、さまざまな事項についての議論が進められている段階だ。今回は特に、「登録情報の取り扱い」と「セキュリティおよびプライバシー」を中心に議論が行なわれた。

 インターネットでは管理運用を円滑に行なうため、ドメイン名やIPアドレスといったインターネット共通資源の登録情報は、WHOISなどにより広く公開されている。ENUMにおいても同様に、登録情報を公開すべきかどうかの議論がある。

 また、ENUMを普及させる際のセキュリティとプライバシーに関する事項についても検討されている。今回のENUM WGでは、セキュリティについてはプロトコルおよび実装の観点から、プライバシーについてはデータの取り扱いという観点からそれぞれ議論しようという提案がなされ、技術的な検討課題に絞って検討を進めようという方向性が示された。

 ENUMはその性格上、電話番号の保有者に関する情報を取り扱うことになるため、前述した情報公開やセキュリティ、プライバシーに関する課題に加え、各国における電気通信事業の取り扱いにも関わってくることになる。

 そのため、各国とも技術的な実験(ENUMトライアル)を進めながら、手探りでさまざまな経験を積んでいる段階にある。今回のENUM WGでは、オーストリア、韓国、イギリス、スウェーデンにおけるENUMトライアルの状況がそれぞれ報告された。その中でも特に印象的だったのが、オーストリアと韓国だ。


ENUM先進国のオーストリアとアジアで先行する韓国

Cisco IP Phoneからの通話デモ
 オーストリアは、従来からENUMの研究開発に力を注いでおり、ENUMにおいて先行しているヨーロッパ地域の中でも特に先進的なトライアル環境を構築・運営している。すでにENUMで使用するためのドメインである「3.4.e164.arpa」(オーストリアの電話番号「+43〜」に相当するドメイン)のデリゲーション(委譲)も受けている。IETF Meetingでは、ENUM WGにおける発表に加え、ターミナルルームに機材を持ち込んだ上で別途時間を取ったデモが実施され、注目を集めていた。

 今回のオーストリアの発表で特筆すべきことは、他国のENUMトライアルとの相互接続のサポートや、ENUMによるPBXへの接続を実現していたことである。実際に今回のデモでは、現場に設置されたCisco IP Phoneから、「1.2.4.e164.arpa」(スロバキアの電話番号「+421〜」に相当するドメイン)配下のNAPTRレコードを参照することにより、スロバキア工科大学内に設置された電話との間の通話を実現していた。また、従来のENUMでは実現が困難であるとされていた、PBXのダイレクトダイヤルイン機能(DDI Extensions)をサポートするための技術実験も進められているとのことである。今後、各国においてENUMトライアル環境が整備されていくにつれ、ENUMトライアル間における国際的な協調や実用化に向けたさまざまな技術実験が進行していくだろう。

 オーストリアのENUMトライアルの技術責任者のひとりで、デモの説明を行なっていたMichael Haberler氏によると、本年9月に開催される予定のRIPE Meetingにおいて、ENUMに関するチュートリアルを計画しているとのことであった。ヨーロッパ地域におけるENUMの研究開発では、今後もオーストリアが重要な役割を担っていくことになるだろう。

 韓国のENUMトライアルの特徴としては、PC上でENUMを利用するための各種ツールや、Internet Explorer用のプラグインなどの各種アプリケーションソフトウェアの開発を同時に進めている点が挙げられる。報告では、発表者が持ち込んだ携帯電話にPCからENUMを使用して実際に電話をかけて見せるデモを実施していた。まだ「2.8.e164.arpa」(韓国の電話番号「+82〜」に相当するドメイン)のデリゲーション自体は受けていないものの、ENUMの普及に向けた準備が着実に進行しているという印象を受けた。


IPv4アドレスの枯渇は2028年?

 最後に、ENUM以外の話題をいくつか簡単に紹介しておこう。IETF Meetingで毎回、初日に行なわれている「IEPG Meeting」において、IPv4アドレスの枯渇時期に関する興味深い報告が豪Telstra社のGeoff Huston氏からあった。それによると、IPv4アドレスの枯渇は従来IANAによって予測されていた2019年よりも先で、今から24年後の2028年1月になるとのことであった。

 これは、IANAにおいてすべてのIPv4アドレスブロックを割り当ててしまった後も各RIR(Regional Internet Registry)に残存しているアドレスプールが存在すること、また、RIRにおける割り振りが終了した後、実際にアドレスが使われるまでの時間差についても考慮した値であるとのことで、よりインターネットの現状を反映した形での調査であると言えるだろう。このような体系的かつ具体的な予想がなされたことはこれまでにないことであり、今後継続した調査が行なわれることになると考えられる。

 IETFは、インターネット技術の標準化を推進することを目的に、インターネット上の各種プロトコルの開発を行なっている重要な団体で、年に3回の会合を開催している。今回の出席者は総勢1,331名と、3月にサンフランシスコで開催された前回の会議から300人以上減少した。特に米国からの参加者の減少が著しい(米国以外の参加者は逆に増加している)。これには、今回のIETF Meetingが米国外での開催であったことや、米国における景気の減速も影響しているようである。

 しかし、少なくとも筆者が参加した「DNSOP WG」や「CRISP WG」などの各ワーキンググループでは、議論はいつも通り活発であり、精力的な意見交換が行なわれていたように思われた。ミーティングにおいて精力的に活動している人々の「標準を作ってやろう」というモチベーションは、実は参加人数にはあまり依存していないのかもしれない。


関連情報

URL
  IETF Meetings
  http://www.ietf.org/meetings/meetings.html
  ENUM WG
  http://www.ietf.org/html.charters/enum-charter.html
  Austrian ENUM Website
  http://enum.nic.at/
  Korean ENUM Trial
  http://www.enum.or.kr/en/index.html
  IEPG Document Archive
  http://www.iepg.org/
  関連記事:総務省、VoIPに関する報告書を発表〜電話番号の割り当てなど
  http://internet.watch.impress.co.jp/www/article/2002/0108/iptel.htm


( 森下泰宏/日本レジストリサービス )
2003/08/08 14:44

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