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JPRSが提供するのはドメイン名登録サービスだけではない〜東田幸樹社長


 2002年4月1日にJPドメイン名のレジストリ業務が、社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)から株式会社日本レジストリサービス(JPRS)に正式移管されて2年が経った。JPRSではこの間、“民間会社”としてどのような方針で、JPのレジストリとしてドメイン名事業を運営してきたのか? 今後の取り組みもあわせて東田幸樹代表取締役社長に話を聞いた。


JPのレジストリとしてDNSを安定運用することが公益性の観点から重要

JPRSの東田幸樹代表取締役社長
──東田社長は2年前、弊誌のインタビューに対して、JPNICが確立したJPの“信頼性”や“安定性”という側面を維持する一方で、民間会社として“利便性”や“経済性”も追求していきたいとコメントしている。この4点は、具体的にどのようなかたちで事業に反映されているのか?

 東田社長:まず信頼性だが、2002年6月にネームサーバーの誤更新を防止する仕組みを導入した。“管理ドメイン名”という概念によりドメイン名を管理する指定事業者(レジストラ)を設定し、その事業者だけがネームサーバーを更新できるような仕組みを導入した。また、レジストラとの申請情報のやりとりもPGPで暗号化した。大手レジストラはみな対応しており、申請情報を盗聴できないようになっている。

 安定性としては、DNSの安定運用を特に重視している。JPのレジストリとしてJRPSが提供するのは、ドメイン名の登録サービスだけではない。実際に登録されたドメイン名を日々利用できる状態に保つこと、すなわちDNSが一時たりとも停止しないように運用することが必須である。この、インターネットのインフラの一翼を担うDNSの存在が、ドメイン名事業を“公益的”なものと言わしめる所以である。DNSサーバーが東京に一極集中していたのでは問題があるため、昨年、大阪にサーバーを分散配置した。Anycast化による安定性向上も進めている。

 さらに、レジストリデータの“エスクロー”も実施している。これは、JPRSに万一何かあった場合に、すぐに別の組織がJPのレジストリ業務を引き継げるよう、第三者機関にあらかじめデータを預託しておくものだ。預託したデータからDNSやWHOISといったレジストリの基本機能を復元する仕組みもすでに実験を済ませている。エンドユーザーにはなかなか見えない部分だが、こういうところにもきちんとコストを割いている。


JPの登録料金には信頼性や安定性確保のためのコストが含まれている

──利便性という観点では、地方公共団体専用の「lg.jp」を新設したほか、企業の「co.jp」ドメイン名では、企業合併後に併用できる期間を延長したり、登記前の企業が登録できるようにするなど運用ポリシーに柔軟性を持たせた点が注目される。しかし、経済性という観点で見ると、「.com」などと比べてJPの登録料金は高いと言わざるを得ないのではないか?

 東田社長:これまでは信頼性、安定性、利便性を優先して進めてきたため、価格という面の施策がまだ十分でないのは事実だ。しかし、DNSの安定性や信頼性が完璧にならない限り、値下げしないというわけではない。価格という経済性の価値向上をなおざりにして、他の価値だけを追求していたのではバランスを欠く。JPRSとしては2005年に指定事業者向けの価格改定を計画していたが、これまでの施策を順調に進めてこられたことと、JPドメイン名の登録件数が昨年から順調な傾向を見せていることもあり、これを2004年度下半期の早い時期に前倒しして実施することを検討している。具体的な金額についてはまだ言える段階にないが、一気に1,000円以上引き下げたりしては他の施策に影響を及ぼすため、程度を見極めて決定したい。

──レジストラによっても異なると思うが、卸価格が数百円程度の値下げに止まるならば、エンドユーザー料金では「.com」とはまだ数倍の開きがある。個人などにとっては、依然として手を出しにくいのではないか?

 東田社長:先に「ドメイン名事業は公益的なもの」と述べたが、ユーザーがドメイン名を登録する際にどのTLDを選ぶか、という点では非常に強い競争状態にある。もちろん価格もユーザーがドメイン名を選ぶ際の判断基準の1つであるが、価格を安くすることでサービスの品質など、他の部分を削ってしまってよいのか? 要はどこにターゲットを絞るかが問題で、主に個人向けなら価格重視、企業向けならば信頼性や安定性重視になるだろう。JPRSでは信頼性や安定性に注力してきたわけだが、“社会の混乱を防ぐ”という意味では、JPNICから流れとして正しいと考えている。

 例えば、JPではドメイン名に関する紛争が少なく、DRP(紛争処理方針)で対応した件数もまだ30件以下だ。gTLDでは1万件近くあることを考えると、極端に少ない。1組織1ドメイン名の審査や、優先登録期間といった仕組みを、JPにおいて世界に先駆けて導入してきた結果だ。そういう意味では、登録料金には紛争を減らすためのコストや万が一のときのデータエスクローのためのコスト、DNSの安定性のためのコストが含まれていると言える。その分、価格は高くなってしまうが、それらが作り出すJPの価値がエンドユーザーの利益となっている。


ドメイン名市場が価格競争だけになるとDNSは破綻する

──価格重視の個人ユーザーにとっては、高いJPを無理に使わなくても、.comなどのgTLDという選択肢もある。実際、JPは高いけれども、逆に信頼性や安定性重視のブランドだととらえているユーザーも多いだろう。そこで、信頼性や安定性といった指標を、価格のような具体的な数字としてユーザーが判断できるようにする方法はないのか?

 東田社長:DNSの安定性を保つことは一般に言われている以上にコストがかかる。ただ、保険と同じで「どこまでやれば安心なのか?」というところを常に見極めることが必要だ。これまでも機器の障害やDoS攻撃などを経験しているが、バックアップや多重化など、事前に対処していたためにDNSの運用に支障は出ていない。今後、どのようなことが考えられ、どこまで対応できるサービスでなければならないのか、という指標としてサービスレベルを定義することが必要であると感じている。

 ドメイン名登録サービスは安ければいいという風潮もあるが、DNSに密接に結び付いていることを忘れてはならない。市場が価格競争だけになってくると、JPRSとしてもその方向に進まざるを得ない。安定性にどこまでコストをかければ十分かということは、時代とともに変わる。インターネットの利用が拡大し、マシンの高性能化も進む中で、ウイルスやワームに感染したマシンから吐き出される大量の不正なクエリがDNSに集中することも考えられる。「DNSはこれで十分だから、あとは価格に反映しましょう」ということでは、いつか破綻するだろう。信頼性、安定性、利便性、経済性の4つのバランスをとりながら、どこに投資するのかバランスを見ながら判断していかなければならない。


JPを使うメリットをユーザーにアピールすることで利用拡大へ

「価格については、個人で使われる方も増えているため、配慮していきたい」という
──最近は広告やテレビCMで、商品名などを使った汎用JPドメイン名をよく見かけるようになった。

 東田社長:汎用JPドメイン名のサービス開始当初は、商品名やイベント名などには主に.comが使われていたが、JPRSの営業活動として大手企業に汎用JPドメイン名を紹介し、その良さをご理解いただいて活用していただいた事例もいくつかある。また、そのような事例が世に出てきて多くの人の目に触れることで、汎用JPドメイン名の認知度が上がった。「.jp」は携帯電話からの入力とも相性がいいということもあり、映画会社やマンションデベロッパー、消費者金融などの大手をはじめとして、他の多くの方々に使っていただけるようになってきた。

 この他にも、「Webドメインマーケティング」の活動を後援し、「ドメイン名を企業のマーケティング戦略にどのように活用していくか」という流れを作り出してきた。JPの利用拡大のために、JPを使うメリットをユーザーにアピールするということは、公益法人ではやってこなかったし、できなかっただろう。

──この4月で、JPの正式移管を受けてから3年目に入る。今年、特に注力したいことは何か?

 東田社長:日本語JPドメイン名は登録開始から3年が経過し、この中で利用環境の整備を進めてきたが、十分に浸透しているとは言えない状況だ。日本語JPドメイン名の将来性は疑うべくもないが、レジストリとしてはまだまだがんばらなくてはいけないところだ。(Internet Explorerの国際化ドメイン名対応を促すための)Microsoftとの交渉をより進展させることも含め、今年はこれを第一に取り組んでいきたい。





 「公益法人からスタートしたことで、価格よりも信頼性や安定性、利便性を重視したということはある」。東田社長はそう振り返るが、JPのレジストリが民間会社に移管されたことで、公益法人時代から比べれば、サービスに対する同社の姿勢は着実に変化してきている。

 あるレジストラは、JPの登録申請業務について「以前は役所的でマニュアル通りの対応しかしておらず、イレギュラーな場合は一切受け付けない印象があった。しかしJPRSになってからは、きちんとした理由があれば、特別な対応もしてくれるようになった」という。また、別のレジストラは、「DNSの信頼性の向上を目指した活動は、地味かもしれないが、大切な活動の1つだ」と指摘したうえで、「JPをプロモーションする」という姿勢も評価している。

 その一方で、「(エンドユーザーから)年間維持手数料を安くして欲しいという声がある」のも事実だ。また、以前よりは審査手続きなどにかかる日数が短縮されたとはいえ、さらなる処理の迅速化や必要書類の削減も求められるだろう。公益事業的な側面を維持しながらも、JPの利用拡大とともに利益を追求しなければならない“民間会社”のレジストリとして、JPRSが今後、エンドユーザーのニーズにどう答えていくのかが大きな課題になる。


関連情報

URL
  日本レジストリサービス
  http://jprs.jp/
  関連記事:JPドメイン管理の民間会社「日本レジストリサービス」設立
  http://internet.watch.impress.co.jp/www/article/2001/0125/jprs.htm
  関連記事:JPドメインのレジストリ移管を受けたJPRSに聞く
  http://internet.watch.impress.co.jp/www/article/2002/0402/jprs.htm
  関連記事:JPRSが取り組む「Webドメインマーケティング」とは?
  http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2003/09/19/513.html


( 永沢 茂 )
2004/03/23 22:24

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