アイスランドで最大の通信事業者である「Siminn」。アイスランドテレコムの愛称で、直接的な意味は「金色の糸」で電話の“銅線”を表し、一般的には電話そのものを指す。もともと国営企業として1906年に創業されたアイスランドテレコム(当時はアイスランド国営テレフォニーサービス)は、当初は郵便事業と電信電話事業を独占的に扱っていた。その後民営化され、1998年に郵便事業と電信電話事業を分離。2003年に経営刷新が図られ、2004年からSiminnの愛称で事業展開しているという。
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レイキャヴィク市内のSiminn本社受付
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アイスランド全土を見守るオペレーションセンター。見学した際のスタッフは2人だった
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● 安さではADSLで日本、携帯電話でアイスランドに軍配
Siminnでは、固定網の音声通話やデータ通信のほか、GSM方式の携帯電話サービスも提供する。シェアは、固定網の国内通話で84%、国際通話で80%。インターネット接続では58%で、ADSLサービスに限っていえば60%のシェアを獲得しているという。また、携帯電話のシェアも68%に達する。なお、携帯電話で残りの32%を握るのはライバル事業者である「オグ・ボーダフォン」だ。
インターネットの利用料は伝送速度以外に、月あたりの最大利用容量が定めれているケースが多く、いずれも日本と比べると高価だ。例えば、最も安価な下り伝送速度が最大8Mbpsの「ADSL 1000」で、転送量100MBまで利用できるプランが月額3,820アイスランドクローネ(ISK)。日本円では約6,000円となる。最も高価なプランは、下り伝送速度が最大45Mbpsで転送量4GBまで利用できる「ADSL 3000」で、月額8,500 ISK(約13,200円)。また、利用者は少ないながらISDNも利用されており、伝送速度が64kbpsで月額1,090 ISK(約1,700円)からとのこと。別途料金が必要ではあるが、iPassによる公衆無線LANサービスも提供している。
GSMの携帯電話については月額基本料金が550~1,345 ISK(約850~2,100円)、こちらは日本よりも安価な印象だ。なお、通話料は時間帯などで細かく異なるようで、1分20~40円程度だという。
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速度に応じて3種類のADSLを用意
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Siminnが発表したマーケットシェア
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● 携帯電話と連携するクアドラプルプレイを目指す。3Gの普及には後ろ向き
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Siminnのトリグソン氏
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「今後は光ファイバによるコンシューマサービスを普及させていくつもりだ」と、同社リサーチアンドビジネスデベロッパー事業部のスベイン・トリグソン部長。すでに1985年から基幹網の光ファイバ化は進んでおり、家庭までのラストワンマイルを光ファイバ化することで、インターネット、IP電話(VoIP)、デジタルテレビコンテンツ配信(TVonIP)の「トリプルプレイ」に留まらず、携帯電話との連携も視野に入れた「クアドラプルプレイ」を目指すという。クアドラプルプレイの具体像として、携帯電話でホームサーバーを操作し、テレビ番組を予約したり、携帯電話からホットスポットの申し込みを行なうなどの想定利用シーンを語った。なお、デジタルテレビの番組配信はすでにテスト運用を開始しており、ADSLサービス上で数十チャンネルの配信を行なっている。
Siminnでは、クアドラプルプレイを目指す一方で、「携帯電話については当面GSMの提供を続ける」(トリグソン氏)とコメント。「クアドラプルプレイはGPRS(GSMのデータ伝送技術)上でも十分可能だ。3Gはライセンスフィーや施設面などで費用がかさむ。また、現状のようなQCIFサイズの小さい画面にリッチコンテンツを配信しても、ユーザーは利用料に納得しないのではないか」と指摘し、「携帯電話のグレードアップは3Gではなく、次世代の4Gで行なうべきだ」との考えを示した。
このほか、日本のiモードFeliCaのような電子マネー搭載端末に関しては、「キャッシュバリューを携帯電話に入れるつもりはない。リスクが高いのではないか」とコメント。クレジットカードによるキャッシュレス化が進むアイスランドだが、携帯電話による電子マネー利用については、現時点ではあまり積極的に推進する気はないようだ。とはいえ、「マイクロペイメント(小額決済)であれば」と利用を限定しての導入は検討中であるという。
関連情報
■URL
Siminn(英文)
http://www.siminn.is/english/
( 鷹木 創 )
2005/03/22 11:27
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