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「P2Pを遮断すれば問題が解決していたのは2005年まで」

アンリツネットワークスに聞く、トラフィック増加の現状

 ADSLの高速化競争は一段落したが、ADSLからFTTHのユーザー移行は進んでおり、CATVインターネットもこれに対抗するために高速サービスを提供するなど、ユーザーが利用する回線の高速化はまだまだ進んでいる。これに歩調を合わせるように、GyaOやYouTubeといった動画コンテンツの利用者も増加しており、プロバイダーや企業などではトラフィックの増大が問題となっているという。

 2006年7月にアンリツの情報通信事業を継承したアンリツネットワークスでは、こうした問題に対処するための帯域制御装置を販売している。多くのプロバイダーに機器を納入している側から見て、現在プロバイダーや企業のネットワークにはどのような問題が起こっていると感じているのだろうか。アンリツネットワークスの森一弘氏と西澤政樹氏に話を伺った。


帯域制御装置「PureFlow」シリーズを展開

アンリツネットワークスの帯域制御装置、PureFlow SS10/FS10シリーズ

アンリツネットワークスの森一弘氏
――アンリツネットワークスが販売している帯域制御装置はどのようなものなのでしょうか。

西澤氏
 現在、アンリツネットワークスの帯域制御装置「PureFlow」シリーズとしては、3種類の製品があります。ストリームシェーパーと呼ばれるトラフィックの平滑化を行なう「PureFlow SS10」、ネットワークの公平制御を行なう「PureFlow FS10」、そして小型の制御装置「PureFlow GS1」です。

 PureFlow SS10は、映像配信などのサーバー向けに、「バースト」と呼ばれる一時的なトラフィックの急増を平滑化することで、高品質のコンテンツを配信するのが主な用途です。ぷららネットワークスの「4th MEDIA」をはじめ、日本でサービスされているVOD系のサービスには、ほとんどこの装置が入っています。

森氏
 PureFlow FS10は、ネットワークの公平制御を実現する製品で、P2Pなど帯域を大きく占有するアプリケーションの出現により、それをどのように制御するかを従来の制御装置の切り口とは異なった解決方法を提案し、プロバイダーに採用いただいた製品です。特定のユーザーやアプリケーションなどを狙い撃ちにして制御するのではなく、総帯域をユーザー数で頭割りにする形でユーザーに公平に帯域を割り当てられるのがその特徴です。このシリーズでは、2006年11月には、ケーブルテレビ事業者向けの製品として「PureFlow FS10 CATV」もリリースしました。

 PureFlow GS1は、価格を抑えた企業向けの製品です。SS10やFS10は通信事業者向けの製品ですが、企業からも同様に帯域を制御したいという要望がありました。ただ、これらの製品は通信事業者向けのハイスペックな製品なので、標準価格も700万円程します。GS1は導入しやすいよう標準価格を98万円からに抑え、通信事業者だけではなく企業ユーザーのニーズも取り入れた製品となっています。従来、それなりのスペックを持つ帯域制御装置はだいたい400万円以上しますので、100万円を切るGS1は多くの方にご利用いただける製品だと思います。


――企業での帯域制御というと、どのような用途で用いられているのでしょうか。

西澤氏
 IP電話やテレビ会議など、確実に帯域を確保したいアプリケーションを使用する場合などに用いられます。また、IP-VPNのように、使用帯域が料金と比例するようなサービスですと、帯域を高精度かつ効率的に制御することでコストが下げられるという点もアピールしています。

――逆に、こうした装置の効果が出にくい場合というのはあるのでしょうか。

森氏
 回線の品質そのものに原因がある場合には、効果が出にくいというか製品ではどうにもならないですね。特に国際回線でありがちなのですが、国内の企業が海外の拠点との通信がうまくいかないので設置したいという要望があっても、回線の品質自体が悪いのでどうにもならないということはあります。こうした場合を除けば、導入することにより効果を期待できます。特に海外では回線品質以外にも、普通に導入できる回線が最高でも1.5Mbpsであるとか、回線事情が日本とは異なる問題もありますので。

――海外の企業は、そうした1.5Mbpsの回線に高価な帯域制御装置を導入しているということなのでしょうか。日本の感覚からすると不思議に思えますが。

森氏
 それはやはり、回線が細いだけではなく高いからだと思います。1.5Mbpsよりも高速な回線を使おうと思うと、とたんに回線使用料が月額数百万円になるような状況なわけです。そうなると、とにかく1.5Mbpsを徹底的に使おう、そのためなら少し高い装置を入れても構わないといった事情があると思います。従って、使い方としてはどちらかと言うと優先制御が中心になります。一方、国内での活用やこれからのグローバルな環境での活用は異なります。というのは、回線の容量はあるけれども、その中にTV会議やIP電話、基幹業務フローなど様々なサービスを高品質に展開したい、確実に一定の帯域を確保したいといったニーズが出てきています。当社の製品は、10M/100Mbpsが企業ネットワークの中で当たり前な日本の通信環境をベースに作っているので、海外で育った製品とは性格が異なり、これらのニーズに的確に対応できます。


ソフトウェアアップデートのような機械的なトラフィックの増加が問題に

アンリツネットワークスの西澤政樹氏
――ケーブルテレビ事業者向けの製品(PureFlow FS10 CATV)をリリースされましたが、ケーブルテレビ事業者はどのような問題を抱えているのでしょうか。

西澤氏
 これまでも、ケーブルテレビ事業者はインターネットサービスを展開していましたが、流通コンテンツの変化により、加入者数増を上回るペースでトラフィック量が増えていました。さらに、P2Pなど一部ユーザーによるトラフィック占有などもあり、トラフィックの最適化が重要な課題となっていました。もちろん、従来から帯域制御装置を導入する事業者もありましたが、高価であること、ケーブルテレビ事業者の通信設備の特性上、ユーザー毎の細かい制御が難しいことから、思い通りの効果が出にくい状況でした。そこで、ケーブルモデム終端システム(CMTS)と連動することで最適な帯域制御が可能な専用装置を開発しました。これにより、帯域制御の自動化も可能となり、専門オペレーターの負荷軽減も実現できます。

 ただ、帯域を制御するといっても、常に人数で帯域を頭割りするような動作ではなく、帯域がある一定の値を超えたら制御を開始するといった使用が可能です。帯域が不足しているのであれば、根本的には帯域を増やさなければ問題は解決しません。ただ、一瞬だけトラフィックが急増するとか、一部のトラフィックが帯域を占拠してしまうとか、そういった問題には帯域制御装置が有効です。帯域制御がオンになっている時間の統計なども取れますので、そうしたデータを見ながら回線を増設すべき時期を判断するといった使い方が有効だと思います。

――ケーブルテレビでもトラフィックの増加が問題だということですね。

森氏
 ケーブルテレビに限らず、多くのプロバイダーが困っています。というのは、加入者も増えてはいるのですが、それを上回る勢いでトラフィック量が増えているからです。加入者が増えているからトラフィックも増えているのであれば、プロバイダーとしてはむしろありがたいことなのですが、加入者がそれほど増えていないとなると、収益の問題から簡単に回線の増強はできません。そうなると、増設できるまでの間はとりあえず装置を導入して、ユーザー全員が公平に帯域を利用できるようにしようという考え方から導入が検討されています。

――トラフィックの増加は何が原因なのでしょうか。多くのプロバイダーはファイル交換ソフトを問題と考えているようですが。

森氏
 2005年頃までは、WinMXやWinnyなどファイル交換ソフトを利用している一部のユーザーが最も大きな問題でした。ところが、現在はトラフィック量が全体的に増加しています。P2Pを規制しても効果はもちろんあるのですが、それ以外のトラフィックも増えています。たとえばiTunesやナップスターのような音楽配信サービスであるとか、Windows Updateやウイルス対策ソフトなどのアップデート、YouTubeをはじめとする動画共有サービスやGyaOなどの動画配信サービス、こうした要素が積み重なってトラフィック全体の量が増えているのです。


――ファイル交換ソフトだけが突出した問題ではなくなっていると。

森氏
 現在でも比較的問題と言えば問題ですが、ではそのトラフィックを遮断してしまえば問題は解決するかと言うと、そうして空いた帯域にはすぐに他のトラフィックが流れ込んできます。P2Pだけを遮断すれば問題が解決するという状況ではなくなっています。ですから、やはり総帯域をどのように制御していくかといったアプローチが必要になってきていると思います。

 また、WinMXやWinnyのように既知のアプリケーションであれば、トラフィックパターンやパケットの中身を調べるといった手法で遮断することもできますが、その方法では新しいアプリケーションには対応できません。現在の制御装置の中には、通信の振る舞いから「これはP2Pだ」と判断して制御するものもあります。しかし、そうした装置には「誤検知」が付き物です。たとえばSkypeであるとか、分散型のファイルバックアップシステムであるとか、本来遮断すべきでない通信が誤って遮断されてしまうケースもあります。

――こうしたトラフィックの増加傾向は今後どうなるのでしょうか。

森氏:現時点では音楽配信サービスや動画サービスもトラフィック増の大きな要因ですが、ソフトウェアのアップデートも無視できない量になってきています。今、普通にPCを買ってきてネットワークにつなぐだけでも、Windows Updateから始まってOfficeにセキュリティソフトのアップデート、さらには各種アプリケーション、たとえば年賀状ソフトなども最近では更新ファイルをチェックするようになっています。ユーザーは何もしていないつもりでも、PCをネットワークにつないだだけでトラフィックが発生します。

 また、iPodのように、インターネットにつなぐのが当然というサービスモデルのハードウェアもこれからどんどん増えてくるでしょう。最近発売されたゲーム機なども、ネットワークからコンテンツをダウンロードするのが前提になっています。こうした機器が設置される台数分だけトラフィックは増えます。コンテンツをユーザーが見るという人為的なトラフィックよりも、むしろこうした機械的に発生するトラフィックの方が大きな問題になってきていると感じています。

――ありがとうございました。


関連情報

URL
  アンリツネットワークス
  http://www.anritsu-networks.com/
  PureFlow SS10
  http://www.anritsu.co.jp/J/Products/IPNwk/PureFlowSS10/
  PureFlow FS10
  http://www.anritsu.co.jp/J/Products/IPNwk/PureFlowFS10/
  PureFlow FS10 CATV
  http://www.anritsu-networks.com/Products/Outline.aspx?PrID=420
  PureFlow GS1
  http://www.anritsu.co.jp/J/Products/IPNwk/PureFlowGS1/

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( 三柳英樹 )
2006/12/26 12:18

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