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livedoorは「情報発信の最良の場」でありたい

ライブドア・出澤新社長インタビュー

ライブドアの出澤剛代表取締役社長
 ライブドアグループは4月2日、メディア事業とネットワーク事業を新たに「株式会社ライブドア」として事業分割し、旧ライブドアは「株式会社ライブドアホールディングス」という名称の持株会社となった。

 旧ライブドアはグループ全体を統括する立場となり、新ライブドアではポータルサイト「livedoor」などのメディア事業と、データセンターなどのネットワーク事業に集中する。ライブドアの再生にあたって、インターネット事業に集中するとしてきたこれまでの流れをより明確化した形となった。新会社では今後どのような事業を考えているのか、ライブドアの新社長に就任した出澤剛氏に話を伺った。


新サービスのPRACやlivedoor Readerの英語版は独自ドメインで

livedoorのトップページ
――分社化して、社内の雰囲気は変わりましたでしょうか

出澤氏:そうですね、やることが変わったわけではないので、ある意味では淡々とやっています。ただ、形として明確に会社が変わって、新しい会社ではポータルとデータセンターという見えやすいインターネット事業2つになってスタートしたということで、今まで外から見て「ライブドアは何をやっている会社なんだ」というところがすっきりしたというか、我々の立ち位置であるとか進むべき道が明確になったという感じですかね。

――新会社になると同時にlivedoorのトップページもリニューアルされましたが、今回のリニューアルの狙いはどのような点にあるのでしょうか

出澤氏:大きなところでは、まず検索しやすくしたという点と、ソーシャルブックマーク(livedoorクリップ)をトップページに持ってきたことです。ページの上の方に一般のニュースやトピックスがあり、下の方にソーシャルブックマークの人気記事が並んでいる構造になっています。世の中で語られている話と、インターネットで語られている話がコントラストで見えるようにという考えです。ただ、ソーシャルブックマークというと、インターネットに詳しい人のツールというイメージがまだまだあるので、それをトップページに持ってくることでもっと一般の人たちにも知ってもらって使っていただきたいという狙いもあります。あとは使い勝手の良さというか、livedoorのトップページに来てくださる方が何を目的に来ているのかをもう一回きちんと洗い出して、メールやブログ、ソーシャルブックマーク、RSSリーダーといったそれぞれのものを、わかりやすい所に配置したというところです。


livedoor Reader
――新サービスとしてはブログサービスの「PRAC」がアナウンスされましたが

出澤氏:まずは4月末に新しいブログサービス「PRAC」と、それからlivedoor Readerの英語版を出していきます。その次に何をやろうかというのは、まさに考え中です。

――PRACは具体的にはどのような点が新しくなるのでしょうか

出澤氏:ブログでありながらSNSのようなつながりが楽しめるのと、Ajaxを使った直感的なインターフェイスが特徴ですね。面倒な操作を自分でしなくても、投稿した記事がカテゴライズされて構造化されていくという形です。あとはデータを構造化して保存できる仕組みであるとか、アクセス制限を付けたりであるとかといったことがあります。

――livedoor Readerを英語化しようというのは、どういう経緯で出てきたのですか

出澤氏:livedoor Readerの英語化については、開発者がやりたい、やらせろと言ってきたということです。確かに私も使っていて便利で速いし、比較の項目はいろいろあると思いますが、Google ReaderやBloglinesといった他のサービスに比べてもいい出来だと思っています。英語版についてはドメイン名も全く変えて、これまでのように「livedoorなんとか」という名前ではなく、1つの独立したサービスとして出していきます。チャレンジというか、まずは反応を見てみようという感じです。

――独自ドメイン名でのサービスになるわけですね

出澤氏:livedoor Readerの英語版もそうですし、新しいブログのPRACも別のドメイン名でやります。今までは、ライブドアというとポータルが前面に出ていて、その中のレギュレーションでやっていました。ただ、最近の新しいトレンドで言うと、ポータルとしてのルック&フィールにとらわれてしまうと、インターフェイス的に新しいものができないということがあります。新しいブログも、ドメイン名が別でインターフェイスもポータルとは別のレギュレーションになるので、見た目的にも新しい感があります。投稿画面もAjaxで直感的に使いやすいインターフェイスにしているので、初心者でも使いやすいようにしています。

――「livedoor○○」という名称はもう使わないのでしょうか

出澤氏:サービスにもよりますね。livedoorという名称を外した方が効果が高いのであれば、そこにはそれほどこだわってはいません。特にアルファサービスのようなものは、とりあえずちょっと始めてみよう感じで、スピーディーでフットワークが軽い感じというのも意識しています。

――無線LANサービスの「livedoor Wireless」はどうなるのでしょうか

出澤氏:インフラ系のサービスは非常に長い期間をかけて回収するものですし、投資も大きいものなので、残念ながら今の会社のサイズで言うと事業としてちょっと大きいという判断です。したがって、livedoor Wirelessについては新会社には継承せず、今はいろいろな可能性を模索しているというところです。


新たなCGM系サービスにも期待しつつ、まずは足元を固めていく

T-SELECT
――livedoorは、従来からある「ポータル」のイメージでコンテンツを充実させていく方向なのか、それともlivedoor Readerのようなツール、Webアプリケーションを充実させていく方向のどちらに進んでいくのでしょうか

出澤氏:我々としては2つの側面があると思っています。ポータルサイトとしてのlivedoorという意味では、1,800万人を超えるユニークユーザーがいて、ポータルサイトの2番手集団の中ではいい方にいるのではないかというところです。当面はそこから広告枠を売って収益を出すという、ある意味ではWeb 1.0的なスペース売りの広告もまだまだ伸びる余地があると思っています。他社に比べると我々は恥ずかしい話ですが、ユニークユーザーあたりであるとか、ページビューあたりの広告売上が低い状況にあります。それはもともと最後発であったということと、もちろん事件の影響があるわけですが、そこをきちんとしていくことでまだまだ伸びる余地があると考えていますし、そこを伸ばしていこうというのが当面の戦略です。

――ポータルサイトとしてはどのような部分をアピールしていくのでしょうか

出澤氏:どこを差別化していくのかと言えば、やはり情報発信をすごく意識しているポータルだという点です。livedoorは「情報発信の最良のプラットフォーム」でありたいと思っています。それはブログやソーシャルブックマークといったWebアプリケーション的な意味でもそうですが、たとえば「やわらか戦車」などもそうです。livedoorという場が、まだそれほど有名ではないアーティストやクリエーターの方が、世に出る際の触媒というかプラットフォームの役割を果たせればいいなと。そういう意味では、例えばパブリックジャーナリストという市民記者の取り組みも早くから始めていますし、「T-SELECT」というTシャツのデザインを応募して5枚以上オーダーが入ると実際に販売されるというサービスなども、仕組みとしての情報発信です。情報発信の最良の場でありたいということが、すなわちlivedoorというメディアの色付けというか、特徴になるのではないかと思っています。

――新しいWebアプリケーションについては

出澤氏:livedoorのもう1つの側面としては、いわゆるCGM的な新しいメディアという面があって、これはさきほど言った情報発信ということにも密接に絡んでくる部分です。また、我々はサービスの自社開発にこだわっていて、基本の部分は全部自社で開発しています。開発スタッフも50名ほどいますので、そこから出てくる新しいWebアプリケーションというのもあると思っています。そういうCGM的な新しいメディアとしてのlivedoorがあり、ポータルとしてのlivedoorがあり、その2つをうまくポートフォリオを組んでやっていきたいという感じですね。ただ、両方に言えるのは、やはり情報発信の最良の場でありたいということです。自分の作品を世に問うたり、自分の意見を世に出したりして、それがインターネットの中でシェアされて、それによって世の中がちょっと変わっていくといった、そういうことがあればいいなと思っています。


――何人ぐらいが新しいサービスの開発に関わっているのですか

出澤氏:明確なルールがあるわけではないので、たとえば全体の3割は新規開発担当ということではなく、みんなそれぞれ自分の案件を持っていて、さらに新しいことにもチャレンジしているという形です。ただ、Webのサービスで言えば、少人数でも完成度の高いものができたり、人を投入したからいいということでもなく、やはりそのプログラマーに興味や熱意があって、それこそゾーンに入って作れるというような状況を捕らえないと駄目だと思うので、そういうタイミングは大事にしています。

――個人の力に負うところが大きいということでしょうか

出澤氏:たとえば何人もかけて、事業計画をきちんと書いて、何か物を作っていくというスタイルも必要だとは思います。ただ、我々のポジションとしてはチャレンジャーなので、その意味では効率良くいろいろとやっていかなければいけないということもあります。ですので、そういう優秀なエンジニアに自由にやれる環境を提供していきたいと思うし、新しいサービスもそういう環境から出るのではないかと思っています。ただ、そこに過剰に期待しているわけでもありません。ビジネスはビジネスとして、きちんと通常の広告を取って営業をして黒字化していこうという部分がベースにあって、その上で新しいサービスも出していけたらいいなと考えているわけです。

――収益面ではまずはポータル側でという考えでしょうか

出澤氏:黒字化という意味では、まずは通常の広告をきちんと取るとか、コストをセーブするとかということです。その次にやることとしては、我々はブログのトラフィックがとても多いので、そのブログの広告単価をいかに上げるかということです。4月末に開始する新しいブログサービスも、そうした狙いがあります。もう1つは法人向けのOEM販売で、ブログやSNS、RSSリーダーといったツールを、企業向けに販売するというものです。社内向けに使いたいという相談を我々もよく受けますので、ニーズは高いと思っています。さらに新しいサービスという意味では、今の我々の開発スタイルをきちんと維持していけば、ひょっとしたら何か大きなものが出てくるかもしれないというのは、第3段階というか夢の部分になりますが、そこは信じたいし尊重したい部分だと考えています。


関連情報

URL
  livedoor
  http://www.livedoor.com/

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ライブドアがネット事業を分社化、新ブログサービス「PRAC」4月末開始(2007/04/02)


( 三柳英樹 )
2007/04/18 12:13

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