2007年もいろんなことがあったネット界。気軽に二つ返事で引き受けてしまったこの企画、手をつけ始めて愕然としてしまった。1年に書いたおよそ500の記事が、てんでバラバラ。半年以上前の出来事はもうほとんど忘れているし、かっこよくまとめることなんか不可能だった。というわけで、クリスマスイブも外出せずに書き上げた2007年の出来事をどうぞ。本日は前編、後編は明日掲載する。
● 有名芸能人
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ルー語変換
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2006年の年末。ルー大柴さんのブログ「ルー大柴のキャッチキャッチキャッチ!」に繰り出される、独特な和製英語「ルー語」を、はじめて知った世代の皆さんが猛烈におもしろがっていた(2007/01/09)。1990年代前半のブレイクから“潜伏”していたルーさんだが、この公式ブログをきっかけに、2007年は再ブレイクの年となった。インパクトのあるカタカナ英語を文章にちりばめるあのスタイルは、短い簡潔な文章向きだから、ネットとの相性は抜群だ。Webページやテキストをルー語に自動変換する「ルー語変換」も、ルーさんが公認して自らのブログからリンクする出来事もあった。公約だった紅白歌合戦出演は逃したものの、タレントさんが波に乗ると思わぬパワーを発揮してしまうことを証明していた。
しょこたんこと中川翔子さんは、新ブログの女王の地位をしっかりキープ。毎日大量に公開される日記は、常に高アクセスを集めていた。しょこたんブログにはつきものの、携帯電話で撮った画像に写ったPCの画面の中に、わずかに「セックス」と写っていたことがあった。それが、Googleツールバーの検索履歴だったものだから、しょこたんもそんな単語で検索するのかとネットで騒ぎに(2007/09/19)。昔のアイドルだったら芸能人生命の致命傷になりそうな出来事だった。
1月にブログデビューを果たした後、先行する眞鍋かをりさんや中川翔子さんのアクセス数にあっという間に近づいていた若槻千夏さん(2007/08/03)。11月末には、ブログで突然「時間ください」と休止宣言したところ、たった1日で1万件以上のコメントが寄せられた(2007/11/28)。この休止宣言、Wikipediaによれば、男性への人生初の告白で振られてしまい、風邪も重なって2、3日休もうとした、という事情だったようだ。
● イケたサービス、イケなかったサービス
やじうまWatchでは筆者の嗜好上、ライフハックにはあまり役立ちそうもない、娯楽色の強いサービスばかりがどうしても登場することになってしまうのだけれど、これも社会の役割分担だ。というわけで今年、良い意味でも悪い意味でも目立ったサービスを振り返ってみる。
4月に登場したのは「高校メーカー」(2007/04/23)。ユーザーが好きな学校名を入力すると、生徒数や卒業後の進路、偏差値、校訓、校歌を自動的に作り出してくれる。データ次第で校風が想像できてしまうことを実証した恐ろしいサイトだった。
この高校メーカーのサイト「usoko.net」はその後、6月にはあの「脳内メーカー」を公開して大ヒットをかっさらう。テレビなどでも続々と紹介され、累計で億単位のアクセス数になる。Googleなどの検索サイトで「脳内メーカー」と検索すると、同じ名前の似たサイトが広告に現われる、不思議なことも起こった(2007/10/04)。これは今でも続いている。こんなにあからさまな類似サイトが、広告に登場するとはびっくりだ。
デイリーポータルZでべつやくれいさんが描く円グラフを元ネタに、ネット界では老舗のエイプリルフール企画「イソプレスうぉっち」のウソ記事で名付けた「べつやくメソッド」。これがすぐに、本物のサービスになってしまった(2007/04/11)。エイプリルフールからわずか10日後には数サイトも立ち上がっていたのだから、べつやくさんファンのパワーはすごい。
人気を集めたものの、あっという間に消えてしまったのが「全国ヤブ医者マップ」だ(2007/04/16)。Yahoo! JAPANの「ワイワイマップ」を使って、「ヤブ医者」の所在地を手厳しいコメントとともに示すという過激なものだった。情報はたちどころに集まってきたものの、ヤフーの管理者によって削除されるのもあっという間だった。
ブログなどのコメント欄に批判が殺到する状態「炎上」の情報を共有する、とのふれこみで登場した「炎ジョイ」。存在がネットで知られるとともに、炎ジョイの運営者のブログに批判のコメントが殺到して炎上。自分自身の炎上で、わずか2日ほどでサイトが閉鎖となった(2007/11/22)。ターゲットのサイトに透明なレイヤーを1枚かぶせて、その上で批判を展開する機能もあったが、レイヤーを掛けられる元のサイトにとってそれがどううれしいのか、よくわからない。
● 都市伝説
光ケーブルが一般家庭までつながっているのが当たり前になった現代に「伝説」が生まれ、その光ケーブルを伝ってくるのも不思議だ。高速インターネットが普及して、当たり前に使うようになった動画配信のおかげで、具体的に映像が見えるからこそ生まれる都市伝説もいくつかあった。
豚肉をコーラに漬け込むと、肉の中から寄生虫がはい出てくる、というウソ情報が飛び交った時期があった(2007/03/13)。肉から虫がはい出てくる、ねつ造の映像付きで出回ったものだから、生々しい気持ち悪さが信憑性を高めてしまう。
消えた「苗山さん」、という恐怖体験もあった(2007/03/28)。3月に起きた能登半島地震を伝えるNHKのニュースで、アナウンサーが現地の町役場の男性「苗山さん」にインタビューをしていたときのことだ。突然、音声がとぎれたあと、まったく別の人が苗山さんとして登場。リアルタイムでテレビ放送を見た皆さんと、ネット上に出回った録画映像を見た皆さんが、2ちゃんねるなどのコミュニティに集まって「怖い」と書き込んでいた。
次は、伝説というかエイプリルフールなんだけれど、ネットで広く広まり、一部では本気で信じられていたという、良くできた有名なネタだ。「痛みの国際単位は『hanage』」を現実化したような機器がほんとうに出来ていてびっくり、ということもあった(2007/03/27)。医療機器メーカーのニプロが開発した「知覚・痛覚定量分析装置『Pain Vision』」で、ペインクリニックなどで活躍しているらしい。
● はてな村の「増田」さん
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はてな匿名ダイアリー
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愛称「増田」さんでお馴染みとなった「はてな匿名ダイアリー」。匿名日記を英語にした「アノニマスダイアリー」から「ますだ」のみを取り出した愛称で、匿名ダイアリー全体を指すときもあるし、投稿者ひとりを指すこともある。この増田さんを1人格として、アルファブロガー候補にも挙げられた(2007/11/02)。ジャーナリストの佐々木俊尚さんには、機会があったらなぜ増田さんを推薦したのか小一時間、問いつめてみたいところだ。
はてなの社歴をチェックしてみたところ、匿名ダイアリーについては記載されてなかった。実験サービス置き場「はてラボ」一員だからだ。ちょっとはじっこ、いつか家を建てられてしまいそうな下町の空き地、みたいなものなのだろう。
ひとつの日記帳に、どれだけの人数だか知らないのだけれど、大勢のユーザーがよってたかって書き込む。ひとつひとつは、よくあるネット日記と同じような内容だけれど、それがどんな立場の人物が書いたものなのか、あるいは創作なのか、そんな区別は一切なく、渾然としている。アカウントを取得してログインして書き込むから、自分の書き込みログをあとで眺められる。そんなシステムだからなのか、こってりとしたテキストを投稿する増田さんも多い。
たとえば、「エレベーターには裏技があるらしい」(2007/11/05)。エレベーターのボタンに隠された、ほんとうにある裏技を題材にして、恋愛もののショートストーリーに仕立てたものだった。
それから、「元彼女と旅行してきた」。男性が、別れた彼女とのことを回想するテキストだ。それだけなら単に恋愛ものの掌編だけれど、時間をおいて、今度は女性視点からの「元彼と旅行してきた」が出現したのには驚いた(2007/09/11)。このふたつのテキストの増田さんが同一人物なのか、別人なのかはわからないままだ。
● 事件
社会で起こった重大事件が、ネットで話題にされて関心の和が拡大されていくことは、今年もよく起こった。
マスコミが報道を取りやめたことが、かえってネットユーザーの皆さんの疑惑をかき集めてしまったペッパーランチ事件(2007/06/19)。民主党の新人議員が、テレビの生放送で口走ったほんの一言が公職選挙法違反だととらえられ、録画の動画ファイルが動画サイトにアップロードされて多くの耳目を集めてしまった(2007/08/06)。TBSがボクシングの亀田一家への過剰な身びいきをする内容で、放送を繰り返して、そのたびにネットから反発の声が上がっていたことなど(2007/10/15)。
マスコミが想定している、世論が向かって欲しいベクトルとは全然違うあさっての方向に、ネット世論が猛進してしまうのはもう日常茶飯事。口の悪いネットユーザーの皆さんから「アカヒ」だの「T豚S」だのと言われつつも、その一部のマスコミはまったくスタンスの変わらない伝え方をしているのだから、それはそれですごいことだ。
ネット発の事件もあった。当て逃げされたクルマの主が、車載のカメラでたまたま動画を撮影していて、ネットに公開したことで犯人捜しが始まったこともあった(2007/06/12)。元オウム真理教の上祐史浩さんがmixiに加入して、mixiのユーザーと直接対話を始めたことも、“事件”だった(2007/03/12)。
埼玉大学の男子学生の起こした不法行為が、ネットユーザーの大調査によって次々と明るみに出てしまった一件もあった(2007/08/21)。このきっかけは、mixiの日記でキセルまがいの行為を自慢していたこと。女子中学生との淫行、カンニング、医師の診断書を偽造したことなどを、ブログなどネットのあちこちで自慢していた。前後して、万引きなどの犯罪自慢をネットでしていた人たちが次々と表沙汰になって、そのたびに“祭り”となっていた。
そして、筆者にとって一番忘れられない事件は、不二家の消費期限問題。閉店中の店舗のシャッターに貼られた「お詫び」の貼り紙を、背伸びするように眺める女の子の写真を見てしまったことだ(2007/01/15)。もう1年近く経つから平気だろうと気楽にページを開いてみたら、今でもインパクトは同じだった。
明日の後編では、やじうまWatch内で今年最も話題に上った「初音ミク」の軌跡を追いかけるほか、やじうまWatch内で最も注目を集めたゲーム機「Wii」、というかWiiリモコンに関する話題などを紹介します。
関連情報
■URL
やじうまWatch
http://internet.watch.impress.co.jp/static/yajiuma/
■関連記事
・ やじうまWatchで振り返る2007年(後編)(2007/12/27)
( めたるまん(山崎一幸) )
2007/12/26 15:04
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