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タグに頼らない画像検索に挑む北海道発のプロジェクト「Viewサーチ北海道」


「Viewサーチ北海道」のトップページ
 北海道の風景画像を直感的なインターフェイスで検索できる「Viewサーチ北海道」が1月31日、実証実験サイトを公開した。

 Viewサーチ北海道は、経済産業省が次世代検索技術の開発・実用化を目指して2007年度から開始した「情報大航海プロジェクト」の採択事業として、北海道大学と札幌に本社を構える5社(ソフトフロント、データクラフト、JR北海道、北海道新聞社、インテリジェント・リンク)がコンソーシアムを構成。文字に頼らない次世代画像検索技術「ビジュアル・コンテクスト・サーチ」を応用したサービスの開発・実用化を目指している。

 今回の実証実験の目的について、コンソーシアムに参加する、ソフトフロントの村田利文氏とデータクラフトの鵜川久氏に話を伺った。


類似画像をうまく並べれば、人間は瞬時に大量の画像を一覧できる

画像の一覧画面。サムネイルのサイズは可変で、似たような画像が並ぶように配置される

各写真からは撮影地や撮影時期、周辺情報などを見ることができる
 Viewサーチ北海道で利用しているビジュアル・コンテクスト・サーチという技術は、北海道大学の長谷山美紀教授が開発した技術をもとに、画像の類似性を認識して分類する「クラスタリング技術」と、ユーザーとの対話的なやりとりで画像を探していく「ユーザーインターフェイス技術」の組み合わせからなっている。

 具体的には、Viewサーチ北海道では約2万枚の北海道の風景写真が検索可能で、トップページには2万枚のうち代表的な写真200枚程度が3次元空間に配置されており、その中から写真を選択すると、選んだ写真に類似する写真が2次元マップに表示されるという仕組みになっている。写真は、北海道の写真家27人から提供されたもので、サイト上で散歩を楽しむような感覚で、風景写真の検索・表示が可能になるとしている。

 データクラフトの鵜川氏は、この技術が必要とされている理由を「タグ付けではもう間に合わなくなってきているため」と説明する。例えば、データクラフトでは約51万件の写真素材を販売するサイト「imagenavi」を運営しているが、この中からタグやキーワード検索だけで欲しい画像を見つけ出すのは大変だという。細かくカテゴリーを分類し、1枚の写真に100種類のタグを付けても、「こんな感じの写真が欲しい」という漠然とした要求に応えるのは難しいからだ。

 しかしその一方で、「人間は多くの画像を一度に処理できる能力を持っている」という。それは、画像をうまく分類して並べれば、サムネイルのような小さな画像であっても、何百という画像の中から「だいたい自分が求めている画像」に近い画像を探し出せるのだという。そこで、類似している画像同士が近くに並ぶように配置し、地図を眺めるように目的の画像に近づいていく、というのがビジュアル・コンテクスト・サーチのコンセプトだ。

 ソフトフロントの村田氏はこの手法について、「2次元平面上に2万画像を配置しているが、並べてしまえば数百枚×数百枚ぐらいなので、似ている画像同士を近くに並べるという部分の技術さえしっかりしていれば、ユーザーが全ての画像を眺めることはそんなに難しくない」と説明する。色相や輪郭、絵の複雑さ、配色など、様々な要素を「特徴量」として計算し、特徴量の近い画像が並ぶようにすることで、多数の画像の中から直感的に自分の求めている画像を見つけることができるというものだ。

 従来のキーワードによる画像検索は、例えば「福田首相が映っている写真」といったようなゴールが明確なクエリーに対しては有効だが、そうした明確なゴールが無い要求に対しては、ビジュアル・コンテクスト・サーチのような技術が有効で、画像検索に対する新たなアプローチとして期待しているという。


タグを利用しないので海外展開も可能、画像検索に広く応用していきたい

ソフトフロント代表取締役の村田利文氏(左)と、データクラフト経営企画室イメージズ事業部プロダクトマネージャーの鵜川久氏(右)
 Viewサーチ北海道は、この画像検索の技術を「北海道の観光案内」という用途に応用したものだ。北海道の風景写真の検索を軸にして、各写真の撮影場所や撮影時期、周辺情報、旅行情報などを画像や地図とともに表示するサイトとなっている。

 今後はさらに関連情報を充実させるとともに、画像の枚数をさらに増やすことを計画しているという。2008年度には、ユーザーからの写真投稿に対応する予定で、最終的には100万枚の画像を扱えるシステムまで拡大することを視野に入れている。

 鵜川氏によれば、「アルゴリズム的には1,000万枚まではハンドリング可能なもの」だということで、表示の高速化などが課題となるという。また、現在は風景写真というテーマに沿った写真のデータベースとなっているが、自由なテーマの画像に対してもこの技術がそのまま有効であるかは検討課題で、「技術としては、あるテーマに沿った画像を効率よく検索するのが得意分野かも知れない」(鵜川氏)としている。

 さらに、要素技術としての外部への提供も検討している。タグやキーワードを用いず、画像の特徴のみで検索する技術のため、海外での展開も考えられる。また、「例えばファッション業界で、この服に似ている他の服を検索するといった用途など、画像と画像を比べるような検索にも有効と考えている」(村田氏)として、広く画像を扱う分野への応用も視野に入れている。

 「ユーザーの漠然とした検索要求に応えたい」というテーマは、多くの検索エンジン企業も課題として挙げている。そうした中で、人間が持つ「画像を一覧できる能力」に着目した今回のViewサーチ北海道のアプローチはユニークなもので、今後画像検索の分野にどのような応用ができるかに期待したい。


関連情報

URL
  Viewサーチ北海道
  http://www.view-hokkaido.jp/

関連記事
北海道の風景写真2万点を直感的に検索できる「Viewサーチ北海道」(2008/01/31)


( 三柳英樹 )
2008/02/01 15:18

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