Mozillaがオープンソースソフトウェアとなってから10年、「Firefox」となって最初の正式版であるバージョン1.0が出てからは4年。今ではすっかり人気のブラウザとなったFirefoxが、6月18日にメジャーバージョンアップしてFirefox 3となった。ユーザーのシェアではまだInternet Explorer(IE)に遅れをとっているが、INTERNET Watchの読者ならFirefox派はかなりの割合を占めるのではないだろうか。
読者の中にはとっくにインストールしたよという人もいるだろうが、バージョンアップはまだという人のために、2回に分けてFirefox 3の新機能を細かく紹介しよう。まずは、アドレスバーとブックマークの機能を中心に、最先端のブラウザと呼ぶにふさわしいインターフェイスの改良点を見てみよう。
● 今回の目玉「ロケーションバー」の新機能
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ロケーションバーにキーワードを入れると、履歴、ブックマーク、タグを元に候補が一覧表示される
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・進化したアドレスバー
Firefox 3を使い始めてみて、最初に目に付くのはロケーションバー(アドレスバー)のポップアップリストだ。Firefox 2まではロケーションバーにURLの一部を入れると履歴にあるURLが候補として並ぶ。Firefox 3では履歴のURLだけでなく、履歴+ブックマークのURLとページタイトルを元にしたリストが表示される。さらに後述するタグの語句からも探してくれる。URLを覚えていなくても、タイトルを覚えているページに簡単にアクセスできるのが便利だ。
ちなみに、「会社や家庭でこんなロケーションバーを後ろからのぞかれるのはイヤだ」という方は、アドオン「oldbar」を使うといいだろう。このアドオンをインストールすると、ロケーションバーをFirefox 2のものに戻してくれる。
■URL
oldbar
https://addons.mozilla.org/ja/firefox/addon/6227
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ロケーションバーに表示されるブックマークの編集画面
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・ロケーションバーでブックマークを追加
Firefox 3では、ロケーションバーにブックマークを表わす星印が表示される。白抜きの星印をクリックすると、それだけで現在のページがブックマークの「未整理のブックマーク」フォルダに追加され、星が黄色に(Mac OS Xでは青に)変わる。黄色い星をもう一度クリックすると、ブックマークの編集画面がポップアップ表示され、名前やフォルダ、タグを設定できる。
「タグ」とは、ソーシャルブックマークサービスでおなじみのタグと同じもので、ブックマークに短い語句で印を付けておくものだ。タグを付けたブックマークは、メニューの「ブックマーク」→「最近付けたタグ」からアクセスできる。
「気になったページはじゃんじゃん星をクリックする」のが、おすすめの使い方。いくら星をクリックしても、メニューの「ブックマーク」直下には表示されないので邪魔にならない。クリックしたページをあとで思い出したら、「履歴とブックマークの管理」で「未整理のブックマーク」から別のフォルダに移せばいい。
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「検索バーの管理」で検索語句に付けるキーワードを設定できる
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・ロケーションバーからの検索
ロケーションバーに「g 語句」のように入力すると、Googleなど特定のサイトで語句を検索できるようになった。これはIEに昔からある機能だが、レジストリをいじらないと設定できない。Firefox 3では、検索バーのアイコンをクリック→「検索バーの管理」から「キーワードを編集」で「g」のような文字を簡単に設定できる。
● 履歴とブックマークの管理も進化
Firefox 2までの「ブックマークの管理」画面は、「履歴とブックマークの管理」画面に進化した。履歴に残っているページもブックマークと同様に扱うことができる。履歴のページにタグを付ければ「最近付けたタグ」フォルダからアクセスできるし、履歴からブックマークのフォルダにドラッグして保存することもできる。
また、管理画面には4つの新しいフォルダが誕生した。「よく見るページ」「最近ブックマークしたページ」「最近付けたタグ」「未整理のブックマーク」だ。「よく見るページ」は表示回数の多いページを集めたもので、ツールバーに表示される。「最近ブックマークしたページ」はその名前のとおり。「最近付けたタグ」はタグごとにページを分類したもの。「未整理のブックマーク」はアドレスバーの星をクリックしたときにとりあえず保存される場所だ。
「よく見るページ」「最近ブックマークしたページ」「最近付けたタグ」は、「ブックマークメニュー」と「ブックマークツールバー」に移動できる。「よく見るページ」をツールバーからはずしたり、「最近付けたタグ」をツールバーに表示させたり、といったカスタマイズが可能だ。
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履歴にタグを付けたり、履歴のページをブックマークに移動したりできる
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「最近付けたタグ」を「ブックマークツールバー」に移動したところ
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● 洗練されたユーザーインターフェイス
・OSのデザインに合わせたデザイン
Firefoxが登場したとき、それ以前のMozillaベースのブラウザよりも支持を集めた理由の1つには、「Windowsアプリケーションとして違和感のないデザイン」があった。Firefox 3のユーザーインターフェイスも、「OSにデザインを合わせる」という方針が強化されている。今回はWindows版だけでなくMac OS X版とLinux版でも、ツールバーやHTMLのフォームが、そのOSにふさわしいデザインに変更された。Windows版のFirefox 3も、Vista上では見た目がいっそうVistaらしくなっている。
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Mac OS X版のFirefox(上が2、下が3)
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Linux版(GNOME)のFirefox(上が2、下が3)
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・「前へ」「次へ」ボタン
ツールバー左端の「前へ」「次へ」ボタンが、鍵穴型のデザインに変更された。2つのボタンにそれぞれ付いていたポップアップメニューは統合され、前の履歴と次の履歴が1つのメニューに表示されるようになった。これはIE 7と同じインターフェイスだ。
・ドラッグ操作もかっこよく
Firefox 3では、タブ、ブックマークの項目、ページ上の画像やテキストをドラッグすると、移動の対象が半透明のアニメーションで表示されるようになった。また、タブを大量に表示しているときに左右にスクロールさせると、なめらかなアニメーションで表示される。役に立つ新機能というわけではないが、「かっこよさ」を感じながら気持ちよく操作できるようになっている。
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新しい「前へ」「次へ」ボタン
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タブの順番を変えるためにドラッグしているところ
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● ちょっとした便利機能がもりだくさん
Firefox 3のこまごました改良点をリストアップしておこう。「これだけでも思わずバージョンアップしたくなる」という機能が見つかるだろう。
- アドレスバーと検索バーの間をドラッグしてサイズを調整できる。筆者お気に入りの新機能だ。
- 「ページ情報」画面(ページ上を右クリックして「ページの情報を表示」)が強化された。「サイト別設定」タブからサイトごとのCookieの保存などが設定できる。
- 「アドオン」画面(「ツール」→「アドオン」)で新しいアドオンの検索とインストールができる。また、同画面の「プラグイン」タブで、個別のプラグインを無効化できる。「Flashをいったんオフにしてページの表示をチェック」といったことができる。
- 「表示」→「ズーム」で画像ごとページの表示を拡大・縮小できる。画像をそのままにして文字サイズだけ変えることも可能。
- ブラウザを閉じるときに、タブの状態を保存するかどうか確認できるようになった。
- パスワードを記憶するかどうかを、送信後に選択できるようになった。ログインに失敗したときにはパスワードを保存しない、という選択ができるのが便利だ。
- ページ上のテキストを「Ctrl」キーを押しながらドラッグすると、複数の領域を選択できる(ただし、テーブルに囲まれているテキストでは効かない)。
- アドレスバーのURLにエンコードされた文字が含まれているときは「%E3%82%AA%E3%83%A9……」ではなく、漢字やかなで表示される。Wikipediaを利用しているときなどに便利だ。
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ログインに成功または失敗したあとでパスワードの記憶を選べる
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複数領域のテキスト選択
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アドレスバーと検索バーの間をドラッグ
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「ページ情報」画面の「サイト別設定」
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次回は、セキュリティとレンダリング(HTMLやCSSなど)関連の新機能について紹介しよう。
■URL
Firefox
http://mozilla.jp/firefox/
佐藤和人
フリーライター&プログラマー。著書に『できるホームページHTML入門』『基礎Ruby on Rails』など。現在は株式会社オイアクスでウェブアプリケーション開発に携わる。ちょうど10年前の今ごろ、「インターネットマガジン」にMozillaのソースコード公開の記事を書いたのが懐かしいですね。
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( 佐藤和人 )
2008/06/23 14:36
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