NHKは、2008年3月末より「NHK総合」月曜から土曜の午前0時台を若者向けの深夜枠と位置づけ、新ブランド「EYES」の名の下に6番組を展開している。「EYES」のWebサイトは、従来のテレビ番組サイトにはない奇抜なアイデアが盛り込まれ、これまでのNHKとは違った雰囲気を演出している。NHKの「EYES」戦略について、編成局編成センター副部長の清水聡氏、編成局ソフト開発センター(現・編成センター)の追杉恭光氏、広報局広報部チーフディレクターの津曲信幸氏に話を伺った。
|
|
(左から)編成センターの追杉恭光氏、清水聡副部長
|
広報局広報部の津曲信幸チーフディレクター
|
● 若い視聴者も増えてきている“兆し”はある
NHK総合の深夜枠ブランド「EYES」のターゲットは10代後半~30代。ブランド名は、若い世代の方々がNHKに向ける「眼差し」を意識すること、また、NHKが若い世代に「目」を向ける姿勢を表したものだという。現在「EYES」では、毎週月曜から土曜の深夜、午前0時10分より若者向けの番組を放送している。
月曜日は各界の著名人にインタビューする「トップランナー」、火曜日は視聴者の投稿動画を紹介する「テレ遊び パフォー!」、水曜日は女性向けのファッション情報を紹介する「東京カワイイ☆TV」、木曜日は音楽番組「MUSIC JAPAN」、金曜日はNHK教育や衛星波で放送した若者向けの番組を紹介する「とくせん」、土曜日は、番組が提示したお題に対し、視聴者が携帯電話でネタを投稿する「着信御礼!ケータイ大喜利」と、レギュラー化を目指したトライアル番組を放送する「番組たまご」の2番組を隔週で放送している。
──EYESを開始された経緯をお聞かせください。
清水氏:若い人たちの(NHKへの)接触が少なくなってきている中で、新しいことができないかと考えたのがきっかけです。編成の若いスタッフが中心となって企画をしました。
──若者向けのゾーン編成は初めてでしょうか。
清水氏:「EYES」というブランド名を打ち立てて取り組むのは新しい試みです。
──開始されてからの反応はどうですか。
清水氏:もともとは再放送をしていた枠に新たに参入したわけで、すぐに結果が出るとは思っていません。「EYES」のサイトなどを通じて、徐々に若者向けだというとことを知ってもらいたいと思います。民放チャンネルに若い視聴者が流れて行っていることを知った上で、いろいろとトライしている段階です。
津曲氏:深夜0時台は、20~30代の視聴者は民放のバラエティ番組を見ることが定着しているので、いきなりNHKで若者向け枠を始めてもなかなかチャンネルを合わせてくれないだろうという実感はあります。しかし、個々の番組では、これから伸びていきそうな感触を受けています。「テレ遊び パフォー!」のサイトは、NHK番組サイトのアクセストップ3に入るほど。そういった“兆し”はあります。
清水氏:通常は放送したときにアクセスが伸びますが、「テレ遊び パフォー!」は継続してアクセスが多い。逆に、Webを入り口にすることで、今までの流れを変えていければと取り組んでいる最中です。
──「EYES」の中で一番視聴率が高い番組はどれですか。
清水氏:今は「東京カワイイ☆TV」ですね。最初はやはり今までのNHKの流れで、年齢の高い視聴者の割合が多かったですが、最近では番組がメインターゲットにしている年齢層にも見ていただけるようになりました。「EYES」の他の番組も、その流れはあります。深夜0時台は、民放がスポーツニュースを放送する時間帯でもあり、それに飽きた女性層が流れてきているようです。そういった“兆し”を大事にしたいと思います。
──ネットとの連携はどのように考えているのでしょうか。
追杉氏:直接的な連携としては、動画投稿番組である「テレ遊び パフォー!」ですね。ご存知「ケータイ大喜利」も視聴者が携帯サイトから参加できます。その他、個々の番組がサイトを持っているので、番組との連携は試みています。例えば「東京カワイイ☆TV」では、視聴者から「Myカワイイ」と題して“カワイイアイテム”の写真を投稿してもらい、サイトに掲載しています。ネットでいかに番組のことを露出していくかはいろいろ考えてやっています。
津曲氏:まず、サイトを見てもらうことで番組の雰囲気がわかって、放送も見てみようと思ってもらえるようにしています。入り口は多くあった方が良いという考えです。
──動画の投稿はどのような状況ですか。
津曲氏:最初はどれくらいの投稿があるのか不安でした。パフォーマンスをする人が動画を撮ってネットで送る技術をどれくらい知っているのかも未知数でしたので。でも、実際初めて見ると多くのパフォーマーが送ってくれて驚きました。これまでの投稿数は1991件になり、サイトでは1568件を掲載しています。
追杉氏:ネット上を含む口コミでサイトの動画が見られているようです。狙った効果は出てきている感じです。
|
|
|
テレ遊び パフォー!キャスト
|
東京カワイイ☆TVキャスト
|
ケータイ大喜利キャスト
|
● 従来のNHK番組サイトとは正反対の考え
──「EYES」のサイトの使い方を教えてください。
追杉氏:NHKの番組サイトは、わかりやすく、説明的に、きっちりと作る傾向がありますが、「EYES」に関してはそうではなく、「EYES」の雰囲気を感覚的に伝えるものにしようとデザイナーと話しました。ホームページを開くと現れるそれぞれの番組のキーカラーで作られたドットをクリックして、それが“当たり”だと番組の映像や情報が見られるというゲームっぽい作りにしました。サウンドデザインはエレクトーン奏者としても今注目のTUCKERさんにお願いしました。
追杉氏にサイトの使い方を一通り説明してもらった。まとめると以下になる。
「EYES」のサイトは、トップページにはカラフルなドットが60個並ぶ。ドットは全6色あり、「EYES」で放送している6番組のロゴをピクトグラム化したものだ。ドットのどれかにある“当たり”をクリックすると、番組情報が表示される。なお、サイト下部のボタン「Trailers」「Specials」で番組予告動画と番組概要のドットだけを目立たせることも可能だ。
見た目が印象的な「EYES」のサイトだが、サウンドでも楽しめるように工夫されている。サイトでは、ベースサウンドが再生されており、そこに各色のドットごとに設定された音色を重ねていくことで、1つの曲が完成していく仕組み。音色を重ねるには同じ色のドットをすべてクリックするか、サイト下部にある曜日ボタンをクリックする。「EYES」は、いろいろな番組、そしてその番組を見る人と人が合わさって構成されていることをサウンドでも表現しているという。
このほか、「EYES」のブログを開設した。各番組のアナウンサーやディレクターなどのスタッフが番組の最新情報や収録の裏話などを綴っている。
|
|
|
EYESメインページ
|
曜日を選択した状態
|
“当たり”のドット
|
──今後、強化したい点はどこですか。
追杉氏:「EYES」のサイトでは今後、“当たり”で表示される情報を増やしていきたいです。ブログでは、テレビ雑誌に載る前の情報も積極的に出していきたいと考えています。Flashサイトは感覚的に楽しんでもらい、一方、ブログはテキスト中心なので検索に引っかかりやすいこともあり、ブログから各番組のサイトへ誘導もできるとも考えています。また、各番組のサイトからも「EYES」へリンクしているので、番組サイトから「EYES」へ来て、「EYES」経由で他の番組も知ってもらえます。
──EYESのサイト制作で苦労したところはありますか。
追杉氏:Webサイトに関しては、番組に比べて上の者が厳しく言わないので、社内調整的な苦労は少なく……(笑)。あと、ネットから入ってくる人を逃がしたくないとは思っていました。番組紹介だけとか、いかにも「これは番組宣伝です」っていう作りにしてサイトの入り口で興味を削がれることは避けたいなと思いました。そこで、あえて何もサイトの説明をしない作りにしたのですが、これが正しかったのかは、今後も検証していきたいです。わかりやす過ぎず、わかりにく過ぎず……そのバランスが難しいですね。とにかく、これまでにない取り組みなので、サイトは今までにないものにしようと思いました。
──サイト「EYES」の今後の展開について教えてください。
追杉氏:最近始まったブログを積極的にやっていくのと、「EYES」のブログパーツも予定しています。詳細はまだお話できませんが、「EYES」っぽいものにしたいと思います。本サイトもコンテンツを随時増やしていきます。
──ありがとうございました。
関連情報
■URL
EYES
http://www.nhk.or.jp/eyes/
( 野津 誠 )
2008/08/21 14:45
- ページの先頭へ-
|