|
「viBirth」のトップページ
|
SNS「MySpace」の日本版で22日、アーティストが自身の楽曲を販売できるアーティストストア「viBirth」が、MySpaceの公式ストアとして開始された。
MySpaceは、2004年に米国でスタートしたオープン型のSNSで、日本では2006年11月にサービスを開始している。MySpaceのサービスは、アーティストとしてユーザー登録すると自作の楽曲を6曲までアップロードできるなど、自己表現活動の支援を重視している点が特徴となっている。現在では、全世界で800万組を超えるアーティストやクリエイターが自身のプロフィールページを公開することでプロモーション活動を行っており、アーティストとファンをつなぐSNSとして全世界で約2億人のユーザーを集めている。
viBirthは株式会社ブレイブが提供するサービスで、アーティストが自身の曲を登録すると楽曲のデジタル販売が行える、主にレコード会社やレーベルに所属していないアーティストに向けたサービスとなっている。
アーティストはviBirthに楽曲を登録することで、ブレイブが運営する「viBirth Store」のほか、iTunes StoreやNapster、携帯電話向け音楽配信サイトなど、世界20カ国以上の音楽配信サイトでの楽曲販売が可能となる。サービス料金は月額3150円で、楽曲の売上に応じてロイヤリティがアーティストに支払われる。
viBirthをはじめとしたアーティストへの支援を進めるMySpaceの戦略について、マイスペースの大蘿淳司代表取締役社長と、ブレイブの殿村裕誠代表取締役社長に話を伺った。
● 目指したのは「月額3150円を払っても惜しくないサービス」
|
マイスペースの大蘿淳司代表取締役社長
|
――今回、新サービスとして「viBirth」を開始した狙いはどこにあるのでしょうか。
大蘿氏:MySpaceは多くのアーティストにプロモーションの場として使っていただいていますが、プロモーションだけでなくダウンロード販売のような場が欲しいという要望はずっとありました。特にインディーズであるとか、レーベルとは未契約のアーティストにとっては、プロモーションだけでは活動が完結しません。ダウンロード販売のような活動は、メジャーデビューしなければ難しいという現実もあります。
――日本以外でこうしたサービスはやっていないのでしょうか。
大蘿氏:MySpaceの公式サービスとしては今回のサービスが初めてですね。音楽市場は地域によって違いがありますので、米国と同じことをやってもうまくいかないということもあります。
――ブレイブでは以前からこうしたサービスを展開していたのでしょうか。
殿村氏:viBirthは2007年末にベータ版として、一部のアーティストに限定した形でサービスのテストを開始しましたが、今回が正式なサービス開始ということになります。
――月額3150円という料金はどのようにして決めたのでしょうか。
殿村氏:いろいろ議論はありましたが、まずはこの事業を長く維持するために、最低限必要な費用を考えたときに、このぐらいいただければ十分にサポートできるという判断です。アーティストにとってこの値段が高いかどうかというよりは、月額3150円を払うに足りる、払っても惜しくないサービスを作ったつもりです。
大蘿氏:月額3150円ですから、1日1曲売れれば回収できるというか、それぐらいの気概を持って活動するという人のためのサービスという側面もあります。サービスを使いこなして、料金を取り返してやるという気持ちも大事でしょうから。
殿村氏:無料モデルも考えたのですけれど、最低限の覚悟を問うというか、アーティスト側にも真剣になってもらいたいというところはありますね。
● MySpaceは中立的な立場で、サービスはアーティストが選べるように
|
ブレイブの殿村裕誠代表取締役社長
|
――こうしたサービスをMySpace自身がやらずに、他社と組んで提供していくというのはなぜでしょうか。
大蘿氏:我々がベストなものを提供できるという保証があればそれでもいいでしょうが、いろんな会社が競い合った方がよりいいものになる可能性が高いですよね。viBirthは公式サービスという位置付けですが、それ以外の配信サービスを排除しようというものではありません。というよりも、MySpaceはアーティストを支援することが目的ですので、そのためにはどんなアーティストにも使ってもらえるよう、サービスとしては中立的な立場でなければならないと思っています。
殿村氏:viBirthもサービスとしては、アーティストから音源をお預かりして、それをいろんなプラットフォームに配信するというアグリゲーションサービスなんですね。viBirth自身でもMP3、WAVEによるダウンロード配信サービスを提供しますが、それだけでなく、iTunes StoreやNapsterでも販売できる。複数のプラットフォームに配信できるという点が、アーティストにとってのメリットになると考えています。
大蘿氏:立ち位置が似ているんですよね。どちらもハブ的なサービスで、viBirthは配信という仕組み的なハブ、我々はプロモーション的なハブ。そういう意味では相性がいいと思います。
――音楽ジャンル以外でもこのようなサービスは検討されていますか。
殿村氏:映像については、楽曲に合わせた映像を投稿できる仕組みを考えていまして、アーティストがそれを認可したら販売できるようにしたいと考えています。当初は、映像サービスも一緒に立ち上げようと企画していたのですが、今の段階ではサーバー負荷が大きいという問題がありますので。
大蘿氏:そのあたりも、例えばサーバーはMySpaceの資源を使ってもらって、販売だけを担当してもらうとか、うまく協力してやっていければと思っています。
● これからのアーティストに求められるのはセルフプロモート能力
――アーティストが自分で販売も行えるのはメリットだと思いますが、そうしたことが得意ではない人もいますよね。
大蘿氏:やれる人は全部自分でできるし、そうでない人は例えばどこかのレーベルへの所属を狙うであるとか、そうした選択肢ができるということです。ただ、サービスをどう使いこなせばいいのかといった、アーティスト自身のセルフプロモーション能力を高めていく必要はあると思います。そうしたセミナーのようなものも、ぜひやっていきたいと考えています。
殿村氏:最低限PCの知識は必要になりますから、できるだけユーザビリティは高めようとしてきました。それでも、例えばJASRACという単語を知らない人もいる。ただ、最終的には自己防衛のためにも、自分がアーティストと名乗るからには、例えば最低限の著作権の知識は持っておいてほしいといった思いもあります。いきなり全部自分でやるのは難しいという人のためには、音源を送ってもらえれば代行して登録するといったことも検討していますが、できれば少しずつ勉強というか、我々といっしょに成長していければいいなと思っています。
――たくさんのアーティストが参加すると、その中からユーザーに見つけてもらうのは大変ではないでしょうか。
殿村氏:有線放送のように、自分の好きなジャンルを登録しておくとずっとそのジャンルの曲が流れていて、気になる曲があればそこから購入できるとか、そういう仕組みのようなものは考えたいですね。
大蘿氏:あとはやはり、MySpaceのフレンドからの紹介であるとか、そうした人づての要素が大きいと思います。
殿村氏:アーティストも待っているだけではダメで、これからは情報も音楽も自ら発信することが大事ではないかと思います。MySpaceをうまく活用した人がメジャーになった実例が既にありますので、そういう意味では、アーティストはもっと自らプロモーションをかけていくことが重要になるでしょう。
大蘿氏:例えばどこのライブハウスがいいとか、どこの路上が人が集まりやすいとか、それと同じようにセルフプロモートということをもっと意識していく必要があると思います。我々はそのための場所を提供していきます。
――販売の場があるだけで売れるわけではなく、セルフプロモートが必要だと。
大蘿氏:ただ、いまの流通形態だと、音楽は「売れる」と「売れない」しかない。間が無いと思うんですよね。ネットはその間を作れるのではないかと思っています。
殿村氏:音楽をちゃんとカルチャーにしたいなと考えています。例えば、趣味で陶芸教室に通っていた人が、趣味が高じて自分の作品を店の棚に置いてもらうようになるとか。音楽には意外とそういう流れがないので、そこを変えたいなと思っています。月に3150円払えば自分のお店が持てて、MySpaceで宣伝もできる。音楽が1つのカルチャーとして、自分の趣味としても音楽を気軽に楽しんでもらえる。そういう場所を作りたいという気持ちもあります。
――アマチュアや趣味で音楽をやってる人が利用するイメージでしょうか。
殿村氏:例えば今は演奏の場しかないからコピーバンドをやっている人達も、売る場所もできれば、じゃあオリジナルをやってみようかとなるかもしれない。今回サービスを開始するにあたっては、自分達も登録して試していたのですが、不思議なことにだんだんその気になってくるんですよね。久々にオリジナルの曲を書いてみようかなとか、レコーディングしてみたいなとか。活動場所ができることで、やってみようかなという気にもなりますね。
――最後に、viBirthの開始にあたっての抱負をお聞かせください。
大蘿氏:自分自身をセルフプロモートしていくという気持ちと、実際の行動がこれからのアーティストには一番求められると思います。プロモートの部分はMySpaceが提供していますが、実際に楽曲を売ることもできるようになる。そして、売れたという実績があがることによって、気持ちも変わってくると思う。それを実体験して欲しいですね。
殿村氏:アーティストが自ら発信するということを大事にして欲しいですし、そのためのお手伝いをしていきたいと思います。将来的には、アーティストが日本で活動しているのと同じような感覚で、海外でも活動してほしいなと考えています。来週ちょっと香港でライブやるんだよとか、米国で1週間ぐらいライブハウスを回ってくるとか、そういうことがこれからは普通になってくるような気がしています。そうした部分もサポートできるようにしていって、音楽は世界共通語だということを実現できればと思っています。
――ありがとうございました。
関連情報
■URL
viBirth
http://www.vibirth.com/
MySpace
http://www.myspace.com/
■関連記事
・ MySpace、アーティスト自身が楽曲販売を行える「viBirth」と提携(2008/07/16)
( 三柳英樹 )
2008/08/22 17:42
- ページの先頭へ-
|