● 「統合セキュリティ+PCチューンナップ」の「ノートン 360」がV3に
シマンテックは1月19日、セキュリティソフトやバックアップソフトなどを統合したオールインワンスイートの最新版「ノートン 360 バージョン 3.0(以下、ノートン 360 V3」の日本語パブリックベータ版を公開した。
ノートン 360 V3は、すでに発売済みのセキュリティソフト「ノートン・インターネットセキュリティ 2009(NIS2009)」に追加されたセキュリティ機能を搭載したほか、パフォーマンスの改善も図られている。さらに、他のノートン製品にはない独自機能として、Webサイト評価サービス「Norton Safe Web」を新たに搭載したことが特徴だ。
本稿では、新機能と大幅な改善点を中心に、筆者がノートン 360 V3ベータ版を検証して感じたファーストインプレッションをお届けする。
● ノートン 360 V3は上級者向け機能も搭載
シマンテックは、初代ノートン 360の発表時、「NISはパソコンの中・上級者をターゲットにしているが、ノートン 360はそのレベルに達していない初心者から中級者にターゲットを絞ったオールインワンの製品である」と説明していた。
ターゲット層に合わせてあえて機能を絞っていたようだが、ノートン 360がNISの上位製品だと思う人も多かったようで、「NISには○○の機能があるのにノートン 360にはない」という不満があったようだ。
こうしたことからノートン 360 V2では機能改善が行われたが、さらにノートン 360 V3では「どちらかというと上級者向けでは」と思える機能も加わっており、マーケティング的な変化を感じた。
ちなみにシマンテックでは、2007年3月6日に初代ノートン 360を発売、翌年同日に「バージョン 2.0(V2)」を発売している。V3についても、ベータ版公開のタイミングから考えても、おそらく3月6日に発売されると予想している。
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ノートン 360 V2のメイン画面
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ノートン 360 V3のメイン画面。全体の雰囲気はあまり変化はないが、機能強化は行われている
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● ノートン 360ユーザー待望のNIS2009の新機能も搭載
冒頭でも述べたが、ノートン360 V3には、NIS2009に追加されたセキュリティ機能を搭載したほか、パフォーマンスの改善も図られている。
NIS 2009は「1x10x100」というスローガンのもと、従来製品よりも大幅に高速化・軽量化が図られている。このスローガンは、「インストール1分未満」「使用メモリ10MB未満」「占有HDD100MB未満」を実現するというものだ。
筆者の環境でノートン 360 V3ベータ版を試したところ、インストールにかかった時間は47秒と1分未満で、通常の動作も軽快だった。機能面では、ホワイトリスティングの考えに基づき「信頼できる」と判定したプログラムのスキャンを省略する「ノートン インサイト」、5~15分おきに最新のウイルス定義ファイルやプログラムを取得する「パルスアップデート」、ゲームなどの全画面表示時に余計なメッセージを表示しない「サイレント モード」など、NIS2009の新機能が搭載されている。
従来のノートン 360ユーザーにとっては待望の機能が加わったといえるだろう。
また、ノートン 360 V2までは、ネットワークドライブで右クリックメニューからのスキャンが(メニューが表示されないため)行えなかったが、ノートン 360 V3ベータ版では右クリックメニューからのスキャンに対応した。
NISで採用している「セキュリティ履歴」も搭載した。「セキュリティ履歴」は、エンジンのバージョン表示、サイレントモードのオン・オフ、バックアップの結果といった細かな動作ログに近いもので、プルダウンメニューのカテゴリから選べる。選択可能なカテゴリは16種に上る。
さらに、従来から表示していた「○件の脅威を検出」や「○件のフィッシングサイトを遮断」といった脅威への対処結果については、新たに月単位で表示できるようになった。
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ネットワークドライブでも右クリックメニューでファイルのスキャンが行えるようになった
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NISで採用している「セキュリティ履歴」の表示も取り入れた
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なお、NIS2008からは「SONAR(Symantec Online Network for Advanced Response)」というビヘイビア分析技術を使用しているが、「ノートン アンチウイルス ゲーム エディション」以降、SONARの名称は「リアルタイムSONAR」へと変更されている。
名称を変更した理由についてシマンテックに問い合わせたところ、旧製品よりもビヘイビア技術の使用機会を増やしたという趣旨の回答が得られた。「従来はスキャン時のみSONARを使用していたのに対し、リアルタイムSONARでは、アプリケーションがトリガーするたびにSONARが動作し、アプリケーションの振る舞いで動作するようになりシステムモニターの有用性を上げている」。
● 検索結果でWebページの安全性を評価する「Norton Safe Web」
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検索サイトの結果に安全性評価を加える「Norton Safe Web」が加わった。ショッピング機能のあるサイトの場合はショッピングカートアイコンが加わり、ショッピングの安全性評価が表示されるのが目新しい
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ノートン 360 V3には、NIS2009にはない独自の新機能も搭載されている。その1つとしては、シマンテックがWebサイトの評価を行う「Norton Safe Web」が挙げられる。同機能は、シマンテックの日本語版製品としては初めて搭載されるものだ。(NIS2009向けにも提供が予定されているが、提供時期は未定となっている)。
「Norton Safe Web」は、「Google」「Yahoo!」「Live Search」の検索結果に表示されるWebページの安全度を判定する機能。シマンテックが「安全」と評価したWebページについては、検索結果の右側に緑色のアイコンを表示する。
筆者が確認したところ、多くの有名サイトは安全性を評価済みだったが、マイナーなサイトについては、検証が行われていないせいか、検索結果にグレーの「?」アイコンが表示される。こうした機能は、すでに提供されているマカフィーの「サイトアドバイザー」やトレンドマイクロの「トレンドプロテクト」とあまり変わらない。
他社にはない機能としては、ショッピングサイトの安全性をチェックする「Safe Shopping Rating」という機能がある。対象となるショッピングサイトについては、検索結果に「ショッピングカートアイコン」が加わり、該当するショッピングサイトの「詳細レポート」というボタンも追加されている。安全性の評価については、buysafe社データが使われているようだ。
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「Norton Safe Web」で「安全」と評価されたWebページのレポート画面
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「Norton Safe Web」で「警告」と評価されたWebページのレポート画面
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● 初期実行プログラムを管理する「起動マネージャ」
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新たに搭載した「起動マネージャ」の画面。PCチューンナップ機能があるノートン 360ならではの機能だが、上級者向けの内容だ
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PCに電源を入れた際に自動的に起動するプログラムを管理することで、PCのパフォーマンスを向上させるという「起動マネージャ」も、NIS2009にはない機能だ。
Windowsは起動時、OS以外にIMEやホットキー管理、電源管理などのプログラムを実行するが、「起動マネージャ」ではこれらのプログラムを一覧表示する。一覧表示する内容としては、「Program Name(プログラムの名称)」「Publisher(プログラムの発行元)」「Performance Impact(パフォーマンスへの影響)」という項目がある。ユーザーは必要に応じて、これらのプログラムを無効にしたり、あとから起動させることで、PCのパフォーマンスを向上できる。
ノートン 360には「PCパフォーマンスのチューンナップ」という設定項目があるが、「起動マネージャ」もその一環として提供されていると言えるだろう。
● 柔軟なバックアップ設定が可能に
バックアップ機能では、バックアップするフォルダやファイルを設定する「バックアップセット」を複数作成できるようになった。これによって、重要度の高いファイルをオンラインストレージに毎日自動バックアップしたり、画像などの大量のファイルを外付けHDDに手動でバックアップを取るような柔軟な設定が可能となる。
ノートン 360 V2では、バックアップ先として「HDD」「光学ドライブ」「オンラインストレージ」などを選べたが、バックアップの対象ファイル群とバックアップのスケジュールは1つのパターンしか選べず、あまり有用ではなかった。
バックアップについてはこのほか、すぐにバックアップしなければならない新規ファイルや特定のファイルをキューに登録できる「Norton Backup Drive」を新たに搭載した。これによりユーザーは、スケジュールバックアップを待たずに、重要なファイルをバックアップできる。バックアップは、PCがアイドル状態になった時に開始される。
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バックアップ機能は一目でどのような内容がバックアップされるのかわかりやすい表記となっている
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バックアップ対象となっているファイルは、フォルダのアイコンにマークが付いている
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バックアップ指定を一時的に指定する「Norton Backup Drive」のアイコンがマイコンピュータに追加されている
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ファイルのプロパティが拡張されており、バックアップ状況が確認できるが、まだバグがあるようで、日付の表示がおかしい
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● IE8 RC1への対応はまだ不十分
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フィッシングサイトをIE8 RC1で開いてみた。ノートンツールバーには赤い×マークがついており、問題のあるサイトと判断されている
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最後に、1月下旬に公開された「Internet Explorer 8(IE8)」のリリース候補版(RC1)での実証結果を紹介したい。筆者がIE8 RC1でノートン 360 V3ベータ版を検証したところ、一応動作しているものの、フィッシング詐欺サイトの遮断機能が動作しなくなったことを確認した。
本来フィッシング詐欺サイトへのアクセスを行うと、ノートン 360は同一ページに「詐欺サイトを遮断しました」というメッセージを出す。しかしIE8 RC1上では、ノートンツールバーに赤い×マークを表示してフィッシングサイトであることを警告する一方で、不要な別ウィンドウが開き、さらに「Webページへのナビゲーションは取り消されました」というエラーメッセージが表示される。
この問題は、ノートン 360 V3がまだベータ版であることに加え、IE8もRC版なのでどちらが悪いとは言いがたい。
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不要なウィンドウが開き、さらにエラーメッセージが表示されてしまっている。これは本来の動作ではないのでまだIE8では動作しないと考えてよさそうだ
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Firefox 3で同じページを開いたところ。ノートン 360は本来このようにわかりやすく詐欺サイトを遮断するようになっている
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関連情報
■URL
ノートン 360 V3ベータ版のダウンロードページ
http://www.symantec.com/ja/jp/norton/beta/
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( 小林哲雄 )
2009/02/10 11:28
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