インターネットオークション世界最大手のeBayが4月1日、日本市場向けの「eBay.co.jp」を本格オープンした。米eBayは1999年10月に日本法人を設立、オークションサイト「eBay.co.jp」を運営していたが、業績低迷で2002年3月末に日本での営業活動を終了していた。7年の期間を経て日本に再進出した「eBay.co.jp」の狙いはどこにあるのか。
● 再進出の“種”は、2002年の日本撤退当時からあった
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イーベイ・ジャパン開発事業部事業部長の三島健氏
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再進出の“種”は、日本市場を撤退した2002年当時からあったという。「eBay.co.jp」を運営するイーベイ・ジャパン開発事業部事業部長の三島健氏は、「当時から海外のeBayに出品する日本人は多く、その後も利用者は増えていました。そこで、『改めて海外のeBayを知ってもらうことは価値がある』となったのです」と説明する。
新しくオープンした「eBay.co.jp」では、米国や英国など世界40カ国で展開するeBayの出品方法やキャンペーン情報を日本語で紹介する。海外のeBayに出品する個人や事業者をサポートするための情報提供サイトという位置付けだ。イーベイ・ジャパンは「海外のeBayのマーケティングオフィスのような役割」(三島氏)。かつてのようなオークション機能は提供しない。
サイト内では主に、新規ユーザー向けの情報を提供する。具体的には、多くの人がつまづくというアカウントや決済手段「PayPal」の登録方法を紹介。新規ユーザーの求めに応じて、電話サポートも行う。電話サポートは、新規ユーザーが電話番号と都合の良い日時を登録すると、イーベイ側から連絡が届く仕組みだ。
すでに海外のeBayを使っているユーザー向けのサポートも行っている。本格オープンに先立つ2008年10月には東京で、eBayのヘビーユーザーである「パワーセラー」などを集めてマーケティングに関するセミナーを開催。その後も東京や大阪でセミナーや意見交換会を開いており、今後は開催の頻度や場所を増やす予定だ。
● 2008年末ごろから海外に販路を求めるユーザーが急増
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「eBay.co.jp」
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ただし、アカウント登録後の個別の取り引きに関してはユーザーの自己責任で、海外のeBayに直接問い合わせてもらうようにしている。海外の取り引きに慣れないユーザーには厳しい対応にも思えるが、「ユーザー自らが調べる習慣を持たなければ、いずれは取り引きしなくなってしまう」(三島氏)からだ。
「翻訳サービスについては、弊社とは別の会社が“eBay公認”の翻訳サービスを有償提供しています。初期の段階で何もわからないという場合は、取り引きに関する文章を翻訳してもらうケースもあるようです。また、1日に数千件受注するような個人事業主でも、効率よく商品をさばくために、独自に配送関連の業務を外部委託するケースもあるようです。」
“eBay公認”の翻訳サービスとしては現在、福岡県の株式会社ボーダレスが、依頼後24時間以内に翻訳結果を提供するサービスを手がけており、「eBay.co.jp」でリンクを掲載している。このほか、第三者が運営している、eBayの利用方法を紹介するサイトについても、「eBayコミュニティ」としてリンクを掲載している。
eBayを利用する日本人の数は公表されていないが、三島氏によれば、海外に販路を求める日本人が2008年末ごろから急増しているという。「景気の悪化で国内市場に閉そく感が続いているせいかもしれませんが、海外の販売チャネルを開拓したいという個人や事業者が増えていますね。在日外国人からの利用も年々伸びてきています」。
eBayの日本人利用者は、「個人と事業者で半々ぐらい」の割合。それまでレアモノなどをeBayで購入していたユーザーが、「趣味が高じて」出品者になるケースも多いという。「不動産や旅行関係は例外ですが、そのほかではあらゆるジャンルの商品を出品しているようです」。
● 日本の商品が高値で売られるケースが「もどかしいほど」ある
とはいえ、不慣れな日本人ユーザーが外国人と取り引きをするには言語の壁もある。円高の昨今、苦労して海外に出品するよりは、国内のオークションサイトを利用すればよいと思うユーザーも少なくないだろう。この点に関して三島氏は、「完全にモノ次第ですね」と答える。
「同じ商品が日本と海外では価値が異なる場合があります。国内で安価に仕入れられる商品が海外で入手困難な場合は、eBayに出品すれば価格差を利用してマージンを得られます。これは逆も同じで、先日もeBayに出品されていたWBC関連の商品が、Yahoo!オークションでは4~5倍の価格で取り引きされていました。」
三島氏によれば、eBayでは海外に住んでいる外国人が日本の商品を入手して、高値で販売しているケースが「もどかしいほど」見られるという。彼らは日本で直接仕入れたり、問屋から卸してもらったものを“売れ筋”として打ち出すマーケティングを実践し、一定の収益を得ているという。
「具体的な商品名を挙げると『それだ!』となって集中するのでお伝えできませんが、その部分を日本人にやってもらいたいですね。日本には面白い商品がまだまだ眠っていますし、日本の高品質の商品は海外のユーザーから求められている部分でもあります。日本人は“壁”を感じるかもしれませんが、『eBay.co.jp』を通じてeBayを身近な存在にしたいですね。」
● 「eBay.co.jp」は3人で運営
なお、「eBay.co.jp」は三島氏のほかに、2人のインターンを合わせた3人で運営している。「驚かれることがありますが、主な業務は情報提供サイトの運営で、マーケティングについてはeBayのアジア太平洋地域のオフィスと連携して進めています。そのため、必ずしも日本独自のサイト開発やサポート部隊が必要というわけでもないのです」。スタッフとの連絡は「もちろん(eBay子会社の)Skype」。なお、Skypeを「eBay.co.jp」に組み込む予定は今のところないという。
eBayの魅力について「一夜にして大成功はないが、平等にビジネスチャンスがあること」と語る三島氏。目標については「絵に描いた餅は描いていない」としており、今後は「eBay.co.jp」を通じて新規のユーザーを獲得するとともに、セミナーなどを通じて既存ユーザーとの関係を強化していく考えだ。
関連情報
■URL
eBay.co.jp
http://www.ebay.co.jp/
関連記事:イーベイジャパン、3月末をもって日本での営業活動を終了
http://internet.watch.impress.co.jp/www/article/2002/0227/ebayj.htm
■関連記事
・ 日本市場向け「eBay.co.jp」が再始動、海外出品を日本語サポート(2009/03/31)
( 増田 覚 )
2009/04/09 14:39
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