第292回:LAN接続HDDとの組み合わせでネット機能を大幅強化
番組のLAN内ムーブに対応した東芝の液晶テレビ「REGZA ZH500シリーズ」



 東芝から、液晶テレビ「REGZA」の2008年春夏モデルが登場した。アクトビラやひかりTVへの対応を果たした点も注目だが、ハイエンドのZH500、ZV500シリーズとアイ・オー・データ機器のHVL4-G2.0を組み合わせることで、REGZAからムーブした番組のLAN共有が可能となる。その使い心地を検証した。





ネット環境を考慮してもそろそろ買い時

ZH500シリーズ

 これまでガマンを重ねてきたが、そろそろテレビを買い換えても良いかもしれない。オリンピックが近づいているから、という理由も無くはないが、ようやくネット関連の機能の方向性が見えてきたからだ。

 これまで、家電、それもテレビに搭載されてきたネット機能は、大きく分けて2つあった。1つはLAN上でコンテンツ共有を実現するDLNA関連の機能、もう1つは、いわゆる「IPTV」と呼ばれる映像配信系の機能だ。

 これらの機能は、これまで規格の切り替わりや事業者の統合が懸念されており、正直、どのテレビに搭載されている機能も発展途上という印象があった。しかしながらここに来て、DLNAに関してはガイドライン1.5が視野に入ってきた。また、映像配信系のサービスもNTT系サービスの統合によって「ひかりTV」と「アクトビラ」の2本立てで当面の方向性が定まってきた。

 AV業界的に話題の「ダビング10」も6月2日からの運用開始とされており、デジタル録画、コンテンツ共有、映像配信と、次世代テレビの目玉と言っても良い機能がようやく本格的に展開される目処が立ってきた印象だ。

 サイズと価格を考えれば、もはやテレビは十分に買って損のないレベルだが、その内容、中でもネット関連の機能を考慮しても、ようやく買っても失敗しない段階に入ってきたと言えるのではないだろうか。

 そんな中で東芝から発売されたのが、今回取り上げる「REGZA 46ZH500」だ。同社の液晶テレビのラインナップの中ではハイエンドに位置付られる商品で、300GBのHDDを内蔵、「ひかりTV」と「アクトビラ」への対応、そしてアイ・オー・データ機器製のLAN接続型HDD「HVL4-2.0G」との組み合わせによってデジタル放送のムーブとネットワーク上での共有を実現している。録画機能も内蔵HDDに加え、USB HDD、NASへの録画も可能と実に多彩で、まさに全部入りといった印象の製品だ。


東芝の新型液晶テレビ「REGZA 46ZH500」。46インチの大型モデルで、HDD内蔵、ネットワーク機能搭載というフルスペックモデル
側面に300GB(SATA 2.5インチ)のHDDを内蔵。テレビ単体での録画が可能




サクサク使える「アクトビラ」

 それでは、注目のネット関連機能を中心に、実際の使い心地を見ていこう。まずは映像配信系の機能だが、これは前述した通り、「ひかりTV」と「アクトビラ(HD映像再生可能なアクトビラビデオ・フル対応)」に対応している。

 46ZH500の背面には、「ハードディスク専用」「汎用LAN」「ひかりTV専用」という3つのLANポートが用意されており、このうちの汎用LANポートにケーブルを接続すると「アクトビラ」が、「ひかりTV専用」にケーブルを接続すると「ひかりTV」が使えるようになっている。


背面には用途ごとに3つのLANポートが用意される。左から録画用ハードディスク専用、汎用LAN端子、ひかりTV専用となる

 残念ながら「ひかりTV」に関しては機器登録作業が必要なため、今回は実際に利用することができなかったが、「アクトビラ」に関してはサービスとしての進化はもちろんのこと、機器側の進化も感じられ、好印象だった。

 何が好印象だったのかというと、操作レスポンスが向上しており、キビキビと操作できた点だ。手元にあるソニー製のネットワークTVボックス BRX-NT1と比較してみたが、トップページの表示にかかる時間だけでも数秒は短く、画面の切替、十字ボタンを利用したメニューの移動など、あらゆる操作がキビキビとした印象となっている。


リモコンのブロードバンドボタンを押すと、画面上にメニューが表示される。背面のLAN端子にケーブルが接続されている場合のみ各メニューが選択できるアクトビラのトップページ。画面表示が高速で、操作レスポンスも良好なため実用度は高い

 画像とテキストのすべてを読み込んでから一気に画面を表示するBRX-NT1と、テキストを先に表示して同時並行的に画像が徐々に表示する46ZH500の表示方法の違いもあるが、単純に画面の描画だけ比較しても、あらゆる場面で46ZH500の方が速い。

 アクトビラに関しては、画面がリニューアルされ、天気や交通情報などの静的コンテンツの充実、無料作品に加え映画やアニメなどの有料コンテンツの充実など、サービスの発展が著しいが、唯一、画面のレスポンスや操作性が遅く、せっかく便利でもなかなか使う気になれないのが欠点だった。

 しかし、46ZH500ではこのイメージが一新されており、十分に実用的な操作レスポンスが得られるようになっている。情報端末としてのテレビも、ようやく実用的になってきたと言えそうだ。

 ちなみに話は変わるが、個人的には情報端末としてのテレビはもっと進化すべきだと感じていて、特にサブディスプレイが搭載されるとより便利なのに、と常々思っている。せっかくネットにつながるようになってきたのだから、テレビの脇の小さなサブディスプレイで、常に天気予報やニュースを出しておいてくれれば便利だろう。コストの問題もありそうだが、サブディスプレイの情報枠を広告として提供することもできそうなので、なかなか面白いと感じているのだが、どうだろうか。





HLV4-G2.0連携でデジタル放送をムーブ

 続いて、本製品で最大の注目とも言える「HLV4-G2.0」との連携機能について見てみよう。

 HLV4-G2.0は、アイ・オー・データ機器製のLAN接続型HDDだ。見た目は同社が販売しているLANDISK Home(HDL4-Gシリーズ)とほぼ同じで、色をブラックに変更した程度の違いしかないが、基本的に東芝REGZAシリーズでの利用に特化した、専用オプション的な位置づけの製品となっている。


アイ・オー・データ機器のHLV4-G2.0。REGZAシリーズ向けのムーブ用HDDという位置付けの製品

通常のNASとして販売されているHDL4-Gシリーズとの比較。色が違うだけで外見はほとんど同じ

 具体的に何ができるのかというと、46ZH500で録画した番組(内蔵HDD、USB HDD、NAS問わず)をムーブすることができ、DLNAサーバーとしてその映像をネットワーク上で共有することが可能となっている。

 従来のREGZAシリーズの場合、録画した番組はテレビ側の暗号化機能によって保護されていたため、番組を再生できるのは録画した機器(暗号鍵を管理しているテレビ)のみに制限されていた。このため、たとえば故障などでテレビを交換したり、新たにテレビを追加した際、それがたとえ同じREGZAシリーズであっても、従来のテレビで録画した番組を再生することはできなかった。

 これに対して、HLV4-G2.0を利用すると、46ZH500で録画した番組をHLV4-G2.0にムーブすることで、単純なファイルの移動だけでなく、暗号化の管理もテレビからHLV4-G2.0へと移すことができる。そして、HLV4-G2.0は、このムーブされた番組をDLNAガイドライン1.5とDTCP-IP 1.2によってネットワーク上で共有することができるのだ。

 つまり、録画した番組をHLV4-G2.0へとムーブしておけば、家庭内の他のREGZAシリーズ(ZH500/ZV500/Z3500/Z2000など)で再生できるほか、DTCP-IPに対応したDLNAクライアントでも再生できることになる。

 ただし、その一方で通常のNASとしての機能はHLV4-G2.0には搭載されていないため、PCから共有フォルダを参照してファイルを共有することはできない。ハイビジョンレコーディングハードディスクという名称の通り、ZH500/ZV500のムーブ先、そしてDLNAサーバーとしての利用に限定される点は注意が必要だ。





ムーブは録画時間の半分程度

 実際に試してみたところ、ムーブの手間もさほどかからず快適に利用できた。

 初期設定はほとんど必要なく、基本的にはHLV4-G2.0を汎用LAN端子に接続(ハブなどを介して接続してもOK)するだけで構わない。46ZH500のブラウザを利用して設定を行なうこともできるが、名前は標準で設定されているもので変更する必要はなく、IPアドレスもDHCPで自動取得する。MACアドレスによるDLNAクライアントの接続制限もできるが、これも通常であれば設定の必要はないだろう。


46ZH500のブラウザを利用して設定が可能。ただし、標準設定のままで使えるため通常は設定を変更する必要はない

 接続が完了すれば、46ZH500でHLV4-G2.0が自動的に認識される。リモコンの「レグザリンク」ボタンを押し、「映像を見る」を選択すると、内蔵HDDなどと並んでネットワーク上のHLV4-G2.0が一覧表示される。あとは内蔵HDDなどからムーブしたい番組を選んで、HLV4-G2.0を転送先としてムーブを実行すれば良い。


(1)内蔵HDDやNASに録画した番組からムーブしたい番組を選ぶ
(2)ムーブ先を選択。HVL4-G2.0が表示されるので選択する。通常のNASなどを選んだ場合は録画した機器でしか再生できない形式でのムーブとなる

(3)ムーブを実行する。ムーブ中は録画や再生などほかの操作はできない(テレビを見ることはできる)(4)ムーブが実行される。進捗は画面右下に表示される。おおむね録画時間の半分程度

 ムーブは単純なファイルコピーではなく暗号化の処理も含まれるが、実際にテストした限りでは内蔵HDDからのムーブの場合で、30分番組で17分程度、2時間番組で1時間強で完了した。録画時間の半分強といったところが目安になりそうだ。

 なお、ムーブは録画などの他の処理と同時に行なうことはできない。また、録画先としてHLV4-G2.0を直接指定することもできない。せめて録画後の自動ムーブ機能などを今後に期待したいところだ。





メーカーの垣根を超える

 ムーブしたHLV4-G2.0上の映像は、もちろん46ZH500から再生することも可能だが、このほかZV500シリーズまたはZ3500、Z2000シリーズでも再生が可能だ。

 また、DTCP-IPに対応したDLNAクライアントからも再生することが可能となっており、筆者た試した限りでは、バッファローのLinkTheater LT-H90LAN、さらにソニーのBRAVIA(KDL-20J3000)で再生することができた。

 ただし、LinkTheater LT-H90LANの場合、1.01などの古いファームウェアでは再生できず、ファームウェアの更新をした場合でも早送りや巻き戻しなどの操作はできなかった。そもそもDTCP-IPに対応したDLNAクライアント自体、まだ数が少ない状況だが、DTCP-IPに対応していたとしても再生できるかどうか、早送りなどができるかどうかは別問題となるので、組み合わせには注意が必要だろう。

 これに対して、BRAVIAの場合、なぜか最初の1回目の再生は「再生できません」と表示されるのだが、もう一度再生すると問題なく再生できた。再生が始まってしまえば、早送りやスキップなどの操作も問題なく可能となっており、かなり快適に映像を再生することができた。REGZAで録画した映像をBRAVIAで再生できるのだから、まさにメーカーの垣根を超えたという印象だ。


バッファローのLT-H90LAN(左)、およびソニーのBRAVIA KDL-20J3000からムーブしたコンテンツを再生できた

 REGZAシリーズは、ネットワーク機能を搭載した機種が比較的ハイエンドの大画面モデルのみとなっているが、BRAVIAは今回テストで利用したKDL-20J3000などのように小型の低価格モデルでもネットワーク機能が搭載されている。HDV4-G2.0を介したDLNA環境を構築すれば、リビングのメインテレビにはREGZA、寝室などのサブにBRAVIAという構成も、悪くはなさそうだ。





ネットテレビとして優秀な1台

 以上、東芝の新型液晶テレビREGZA 46ZH500、およびアイ・オー・データ機器のHLV4-G2.0を実際にテストしてみたが、この組み合わせは想像以上に便利だ。

 当初はムーブによる単純なバックアップ先としてHLV4-G2.0が存在するのかと考えていたが、ムーブによって、DTCP-IP対応は必要なものの他社製のDLNAクライアントとコンテンツの共有が可能になる。言わば、家庭内のハブとしてHLV4-G2.0が機能するというわけだ。これで直接HLV4-G2.0に録画できれば文句なしと言いたいところであるが、これは将来に期待しよう。

 46ZH500に関しても、アクトビラ、ひかりTVが単体で利用でき、内蔵HDD、USB HDD、NAS、さらに同社のVARDIAシリーズと多彩な録画環境にも対応する。名より実を取る、特にネットワーク関連の機能を重視するなら、間違いなく最強と言って良いテレビだろう。HLV4-G2.0とのセットでの購入をぜひお勧めしたいところだ。


関連情報

2008/5/13 10:57


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。