第308回:手頃な価格の11nドラフト2.0/b/g準拠の無線LANルータ
NECアクセステクニカ「AtermWR8100N」



NECアクセステクニカから、IEEE 802.11nドラフト2.0、およびIEEE 802.11b/g準拠の無線LANルータ「AtermWR8100N」が発売された。5GHz帯の利用はできないが、その分手頃な価格になった新製品の実力を検証した。



やっぱりアンテナレスが良い

AtermWR8100N

 すでに発売されているハイエンドのAtermWR8500N、低価格モデルのAtermWR1200Hもそうだが、やはりアンテナレスのデザインはシンプルで良い。

 今回発売されたAtermシリーズの新製品「AtermWR8100N」は、IEEE 802.11nドラフト2.0、およびIEEE802.11b/gに準拠した無線LANルータだが、前述した2モデルと同様の外付けアンテナレスのデザインが採用されている。

 新Atermシリーズのデザインは、もともとも直線と曲面が組み合わせられたやわらかく、清潔感を感じさせるものとなっているが、外付けアンテナが無くなったことで、いかにも通信機器といった無骨さがあまり感じられないのが特徴だ。

 仕事柄、「無線LANにしたいんだけど……」という相談もよく受けるが、いくつか候補を提案した場合でも、デザイン的には圧倒的にアンテナレスが特に女性から人気だった。しかしながら、これまでデザインは良いものの、性能的にハイエンドとローエンドという両極端だったことから、ユーザー層によってはお勧めにくかったのも事実だ。

 それが、今回のAterm8100Nの登場でこの中間が埋まり、ようやく製品として選びやすくなった。店頭予想価格も親機のみの単体モデルで1万3000円前後と、なかなか良いところをついた製品と言えそうだ。


アンテナレスのすっきりしたデザイン
背面にスタンドを取り付けると壁掛けとしても利用可能




5GHz帯なし、アンテナ構成も2×2

 前述したように、WR8100Nは、既存のWR1200HとWR8500Nの中間的な機能を持った製品だ。

 ハイエンドモデルのWR8500Nと比較すると、有線LANポートが100BASE-TX/10BASE-T対応となっており、IEEE 802.11aの5GHz帯のサポートが省かれている。また、本体に内蔵されているアンテナの構成も送信×2、受信×2となっている。

 IEEE 802.11nのMIMOでは、複数のアンテナを利用してデータを同時に送受信することで高いパフォーマンスを実現しているが、この構成が従来のAtermWR8500Nから1本省略され、2×2構成となったわけだ。

 と言っても、WR8500NもWR8100Nもストリーム(同時に送るデータの系統数)自体は2本と同じで、これを3本のアンテナで送受信するか、2本のアンテナで送受信するかの違いとなる。つまり、最大速度としては300Mbps(デュアルチャネル時)と同じで、アンテナの本数の違いによる感度に違いが出るということになる。

 このほかの仕様としては、ほぼAtermWR8500Nと同じだ。ボタンによる無線LAN設定が可能な「らくらく無線スタート」(WPSは対応予定)、アクセスポイントモードも含めたモードの自動選択が可能な「らくらくネットスタート」、ニンテンドーDSなどのゲーム機の接続に便利な「マルチSSID」、さらにはルータでのWebフィルタリングが可能な「インターネット悪質サイトブロックサービス」にも対応している。

 現状、ハイエンドモデルのWR8500Nの場合でも、ゲーム機や古いPCの接続を考慮すると2.4GHz帯で利用するケースが多い。同じ2.4GHz帯で利用するなら、機能的にほとんど同じで価格の安いAtermWR8100Nを割り切って使うというのも良い選択だろう。


らくらく無線スタートやらくらくネットスタートで利用するスイッチは正面の押しやすい場所にある
背面のスイッチによってルータモードとアクセスポイントモードを切り替えることも可能

設定画面悪質サイトブロック設定画面




パフォーマンスは申し分なし

 気になるパフォーマンスだが、製品の性能としては申し分ないといった印象だ。

 木造3階建ての筆者宅にて実際にテストしてみたところ、近距離におけるFTPのPUTで80Mbps前後のパフォーマンスを確認できた。1階に設置した親機に対して、3階から利用した場合でも30Mbps前後の速度で通信できているので、実用性は申し分ないと言えるだろう。

 同一環境でテストしていないので参考程度に考えて欲しいが、以前に本コラムでレビューした際の結果と比較すると、3階での結果はWR1200Hで4Mbps前後、WR8500Nで50Mbps前後となっている。これを考えると、パフォーマンス的にもやはり両者の中間と考えて差し支えなさそうだ。

 なお、今回のテストではGET(ルータ→PC)の速度が低かった。厳密な調査までできなかった原因はわからないが、おそらくクライアントPC自体のパフォーマンスが原因ではないかと考えられる。この値は参考程度に考えて欲しい。






初心者にお勧め

 このようにWR8100Nは、同社製品ならではの使いやすさはそのままに、価格を抑えたお買い得感の高い製品となっている。

 もちろん、パフォーマンス重視というならWR8500Nを購入すべきだが、とにかく安定してつながれば良いという使い方なら、本製品の方がオススメだ。アンテナレスでも長距離の安定性は高く、安心して利用できる。

 セットアップも簡単で、らくらく無線スタートの音声ガイドによる手軽な設定やらくらくネットスタートのモード選択の手軽さには、毎度のことながら感心させられる。無線LANをはじめて使うという初心者にぜひお勧めしたい製品だ。

 なお、今回は親機のみの単体モデルを評価したが、2.4GHz専用の無線LANカード「WL300NC-G」、USB接続型の無線LANアダプタ「WL300NU-G」が付属したセットモデルも用意されている。最近のノートPCは無線LANが内蔵が当たり前だが、現状はまだIEEE 802.11nドラフト2.0の300Mbpsで通信できるモデルは少ない。長距離通信やパフォーマンス重視なら子機セットモデルを購入すると良いだろう。


関連情報

2008/9/2 11:04


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。