イベントレポート

新経済サミット 2014

Pinterest、YelpのCEOが語るサービスコンセプトと世界展開

 楽天やサイバーエージェントなど、ネット関連企業が中心となって設立した新経済連盟は、4月9日・10日の2日間にわたって、都内で「新経済サミット 2014」を開催中だ。

 初日となる9日、「新しいソーシャルネットワークがもたらすイノベーション」と題したセッションには、Pinterestの共同創業者・CEOのベン・シルバーマン氏、日本での展開が発表されたYelpの共同創業者兼CEOのジェレミー・ストップルマン氏が登壇し、それぞれのサービスのコンセプトが紹介された。

検索ではなく「発見」がコンセプトのPinterest

Pinterestの共同創業者・CEO ベン・シルバーマン氏

 Pinterestのシルバーマン氏は、自社サービスをGoogleなどの検索と対比しながら「これまでにあると思っていたものを発見する」ものだとして、次のように語った。

 「人々はこの10年間、検索を使って情報にアクセスしてきた。検索をすると完璧な答えが出てくるが、人々は、毎日のように答えが人によって違う質問に直面している。休みにどこに行こう、夕食は何にしよう、結婚式はどういう風にしよう。こういったことはなかなか検索では答えが出ない。何を求めているかは、見つけるまで分からないからだ。それが(Pinterestがコンセプトとしてる)発見である。」

 Pinterestのサービス内容はシンプルで、Webで発見して気に入ったものに「Pin」を打ち、情報を蓄積していく。こうしたコンセプトは、シルバーマン氏の「昆虫やコインなど、私自身がコレクションをすることが好きだった」趣味に由来しているという。

 シルバーマン氏によると、Pinterestには「数十億のPinがあり、たくさんのコレクションがある。こうした中から、何が(自分にとって)意味があるのかを見つけることができる」という。検索ではなく、発見に重きを置いているというのは、こうした機能を指している。

Pinterestのコンセプトは、「発見」にあるという
Webを見て、気に入ったものに「Pin」を打っていく。こうして画像やサイトを蓄積していくのが、Pinterestの特徴
一般ユーザーはもちろん、有名人や企業も利用しており、こうした投稿も新たな発見につながる

 すでに日本にも展開しており、「ユーザーにはぜひ増えてほしい」と語るシルバーマン氏。すでに20以上の国や地域に進出しており、「各国で気にしていることや、興味を持っていることが違う」といったPinterest側の発見もあったようだ。ただし、サービスそのものは「共通項を見つけていこうとチームに言っている」といい、地域ごとに合わせたローカライズをするよりも、最大公約数を探って1つのサービスを提供する方針だ。

 収益化についてモデレーターに尋ねられたシルバーマン氏は、「Pinterestを使っていろいろなことを発見する。それによって、製品やサービスの発見にもつながり、企業も関わることができる。私は写真が好きだが、写真にはカメラが必要」とコメント。広告によるマネタイズの方向性を模索しているとした。

それぞれがサービスを紹介したあと、パネルディスカッションも行われた

 一方で「ソーシャルサービスだと広告が出てくると嫌な気分になることがある。PinterestはプロモートPinを始めようとしていて、どのような関心を持っているかに基づいて表示する。今はいくつかの広告主と、小さくスタートしている。ユーザーエクスペリエンスとしてどうなのか(を検証し)、広告主にも価値を提供したい」と述べ、広告がユーザーと広告主の双方にとって、メリットのあるものになるよう、現時点では慎重に展開していることも明かした。

地域ごとの事情を重視して慎重に拡大を進めるYelp

Yelpの共同創業者兼CEO ジェレミー・ストップルマン氏

 新経済サミットに合わせて日本での展開を発表した、地域情報サービスのYelpからは、ストップルマン氏が登壇。Yelpのコンセプトをイエローページになぞらえながら、解説した。

「イエローページ、日本ではタウンページとも呼ばれているらしいが、それをめくってもほかの人がどう思っているのかまではわからない。(中略)Yelpとは何かといえば、コミュニティにほかならない。それぞれの土地には、大好きなお店や地元の事業者を語りたい、共有したいと思っている人がたくさんいる。その情報を共有するプラットフォーム」

 また、Yelpはコミュニティを重視。世界150以上の市場に「コミュニティマネージャー」と呼ばれる人を置く。こうしたコミュニティマネージャーは「世界各地でイベントを立ち上げている」といい、リアルなイベントを重視ているという。また、この仕組みは地域ごとに異なる事情をくみ上げるのにも役に立つ。それもあって、世界展開や市場への浸透については「ネットの世界においては亀のごとく遅い」。

 ストップルマン氏はYelpを拡大する際のアプローチについて、「1つ1つの都市ごとにやっている。住んでいる方の使い勝手をよくするためにはいろいろなことをやるべきで、実際に使ってもらうには時間がかかる」と、理由を説明した。同氏によると、ニューヨークでも一般的なユーザーに認められるまでは、「5年から6年の歳月がかかった」という。

毎月1億2000万のユニークユーザーがいて、その内5300万がモバイルからのアクセスだという
ジャレミー氏が紹介した自身のプロフィールページ
コミュニティマネージャーを置き、ローカルな事情をくみ上げている

 日本での展開にあたっても、この方針は貫かれており、時間をかけ、徐々にサービスを広げていく方針だという。満を持してのスタートとなったのは、国際的な都市として真っ先に展開したカナダや、英語が普及しておりアジアではもっとも展開しやすかったシンガポールとは異なり、「日本は漢字を使うし、検索でのユニークな課題もあった」からだといい、こうしたストップルマン氏の発言からも、ローカライズを重視している様子がうかがえた。

展開地域には、新たに日本が加わった
ローカル性の強いサービスだけに、利用者を徐々に増やしていく方針

 Yelpは、iPhoneの標準マップやSiriに採用されるなど、他企業とのコラボレーションも得意としている。「ローカル検索の解決策の一助になりたい」として、大手企業との協業に対しても前向きだ。

 欧米圏ではスタンダードになったYelpだが、立ち上げた動機は、非常に個人的なものだったという。ビジネスを始めたきっかけを尋ねられたストップルマン氏は「個人的に歯医者で嫌な思いをしたことがあり、自分を上手に扱ってくれなかったし、正直な歯医者でもなかった。どういう病院なのかをほかの人にも教えたかった」というエピソードを語りながら、「こうしたフィードバックを得て、悪いところを改善してくれればいい。すでによくやっているビジネスは、大きな見返りを得ることもできる」とした。

(石野 純也)