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絶版漫画を広告付きで無料配布、赤松健氏の「Jコミ」が1月スタート

初回のベータテストは170万ダウンロード、広告クリック率は9%以上


赤松健氏

 漫画家の赤松健氏が代表取締役社長を務める株式会社Jコミが6日、都内でサービス開始に向けた記者会見を開催した。Jコミでは、絶版漫画を広告付きで無料配信するサービスを展開。11月26日に開始したベータテストに続き、12月中には第2弾のベータテストとして3作品を公開し、2011年1月10日に正式サービスを開始する予定を明らかにした。

 赤松氏は、現在「魔法先生ネギま!」を週刊少年マガジンで連載中の漫画家で、新サービスを開始するため「Jコミ」を設立。新会社では、絶版となっている漫画に広告を入れ、PDF形式で無料で配信する。広告のクリックによる収益は全額作者に配分し、Jコミ自体の運営はトップページの広告収入などでまかなうモデルとしている。

 11月26日に開始したベータテストでは、赤松氏の漫画「ラブひな」全14巻を公開。11月26日の公開初日だけで45万ダウンロード、1週間で170万ダウンロードがあり、広告のクリック率も9%以上に達したという。

 Jコミでは12月中にベータテストの第2弾として、少年漫画から2007年度に週刊少年ジャンプに連載された作品(1作品)、少女漫画から新條まゆ氏の読み切り作品(50ページ)、青年漫画から樹崎聖氏の「交通事故鑑定人 環倫一郎」(全18巻)の3作品を公開する。

 11月のベータテストでは試験のため広告は無償で入れていたが、第2弾のベータテストでは有償広告を漫画に入れ、漫画家に収益を配分。このテストに限り、実際の配分金額についても公開するという。

 絶版の漫画を対象とする理由としては、「連載中の漫画では出版社や漫画家にも影響が出るが、絶版の漫画であれば問題はない」ためと説明。「絶版だけでなく、読み切りで単行本に収録されていない作品などもあり、こうした作品を救済して漫画文化として保存していかなければいけない」という思いもJコミを設立した理由だとして、「日本の絶版漫画は輸出できる最大の資源ではないかと思う」と語った。

 ベータテストで公開した「ラブひな」は、正式には絶版ではなく「重版未定」の状態だったため、赤松氏が「講談社にお願いして絶版扱いにしてもらった」という。また、第2弾のベータテストで配信する少年ジャンプ連載の作品も、同様の対応をしたことを紹介。赤松氏は、これまでに講談社の幹部や少年ジャンプの編集長と会談し、いずれもJコミへの協力を得られたとして、「これから出版社の理解を得ていくことで、だんだん安心感が出てくると思う。さらに、実際に広告料が漫画家に入っていくことになれば、多くの登録をいただけるのではないかと思っている」と語った。

読者視点のサービス、コピーフリーの広告モデルが唯一の対抗手段

会見には堀江由衣さんもゲストとして登場

 会見で赤松氏は、「Jコミは読者の視点から考えたサービス」と説明。「漫画の電子書籍にもいろいろな形式があるが、DRMがかかっていると友達に貸すことができない。我々の方式であれば、ファイルをコピーして友達に渡しても問題ない。PDFを選んだのも、汎用性があり、どの端末でも読めるため」と語った。

 また、「クラウド型のサービスにしなかったのは、自分のハードディスクやメモリーに入っていればいつでも読めるから」だとして、企業からは広告を動的に変えたいという要望もあるが、「既に自分の手元にあるコレクションに手を触れてほしくないというか、いちいちパケット料を払って広告を取りにいったりしてほしくない」という読者的視点から現在のモデルにしたと説明した。

 一方で、漫画家としては、「水曜日に電車に乗っても、マガジンやサンデーを読んでいる人が少ない」という状況を危惧しているとして、「小さい子が漫画の読み方を分からなくなっているという話も聞いたことがある。漫画を読む文化を絶やさないようにしたい。漫画家として危機感を持っている」と語った。

 赤松氏は、スキャンされた漫画が違法に流通している状況に対して、「Jコミがそれを根絶できるということはないが、後ろめたい気持ちで読んでいる人はいるはず。善意や好意を集めなおすことはできる。Jコミがささやかな抵抗になればと思っている」とコメント。違法配信に対しては、コピーフリーの広告モデルというJコミの手法が唯一対抗できる手段ではないかと語った。

 クリエイター側がこうしたシステムを立ち上げた理由としては、「絶版になった漫画に広告を入れて無料で配布するというのは、出版社には馴染まないと思う。これは作者側でやらないといけないと思った」と説明。「また、企業がやっても信用が得られないというか、こうした企画をどこかの会社が始めたとしても、私自身、そこに原稿を出すかはわからない」として、漫画家自身が始めることで成り立つ企画ではないかという認識を示した。

 会見には、「ラブひな」のアニメでヒロインの成瀬川なる役を務めた堀江由衣さんもゲストとして登場。今回のベータテストの公開で「久しぶりに原作を読みなおした」として、アニメ放映当時の思い出を語り、「より身近になったと思うので、ぜひ多くの人に読んでもらいたい」とコメントした。


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(三柳 英樹)

2010/12/6 18:07