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学生からデジタルなマンガ作品を集う「デジタルマンガ キャンパス・マッチ 2015」、今年は高校や海外からも募集

 デジタルマンガキャンパスマッチ実行委員会は8日、大学生・大学院生・専門学校生からデジタルで描かれたマンガ作品を集う「デジタルマンガ キャンパス・マッチ 2015」を開催する。今年は、フランス・中国といった海外や、高知県が主催する「まんが甲子園」に参加する全国の高等学校・高等専修学校の学生からも作品を募集する。

 デジタルキャンパスマッチは、文部科学省事業の産学官連携体制のもと、漫画家や出版社、関連産業と教育機関が協力し、学校・学生とプロのビジネスをマッチングさせるためのプログラム。2014年9月に初めて開催されたキャンパスマッチ第1回には、71校、出版社10社32編集部が参加し、デジタルマンガ部門で約400作品、イラスト部門で932作品、未来のマンガ部門で11作品の計1350作品の応募があった。

 第2回の今年は、「デジタルマンガ部門」「キャラクター部門」「イラスト部門」「未来のマンガ部門」で作品を募集する。デジタルマンガ部門は、少年・少女・青年・レディス・その他で募集する「ストーリーマンガ部門」のほか、「ギャグマンガ部門」「4コマ・1コマ部門」の3部門で構成される。また、今年から「クラスTシャツ部門」を新設し、クラスTシャツ用キャラクター/イラストを募集する。他部門の応募作品をクラスTシャツ部門に応募することも可能。

 全作品をデジタルマンガ協会の漫画家が選考し、大賞1作品、優秀賞2作品、奨励賞、ちばてつや特別賞1作品を表彰するほか、各出版社編集部がそれぞれ自誌にふさわしい作品1作品を推薦する。また、各協賛企業の協力のもと、テーマに応じた作品を協賛各社が選考する。

 参加を表明している学校は8月31日時点で、国内84校、海外2組織(フランスToulouse Manga、中国翻翻動漫)を含む86校。応募締め切りは大学院・大学・専門学校・スクールなどの学生は10月15日まで。高等学校・海外などの学生は11月15日まで。

学生だけでなく、学校・出版社も切磋琢磨して新しい芽を育てる

 デジタルマンガキャンパス・マッチ 2015のスタートにあたり、都内で8日、キックオフイベントが開催された。運営事務局を務める株式会社ヒューマンメディアの小野打恵氏は、「当初30程度の学校と10の編集部に参加してもらえればと思っていたが、昨年はそれを大きく上回る成果となった」「出版社から『この学生にアプローチしたい』という声をいただき、仲介してアシスタントとして採用したり、学生に第2の作品を描いてもらい、作品が良ければ掲載といった話も進んでいる」とし、学生・学校と出版社とのマッチングに成果が出ている点をアピールした。

 また、実行委員長を務める慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授の中村伊知哉氏は、「今年6月に政府がとりまとめた知財計画の中で、マンガの人材育成を推進することを政府が明記した。我々のこの事業を政府もバックアップすることが閣議まで進んでいる。政府にも強く期待してもらっているが、事業を続けて成果を出すことが大事。この事業を3年、5年、10年と続けていくほか、産官学連携で活動するフォーラムの話も出てきている。そういった成果も出していきたい」とした。

株式会社ヒューマンメディアの小野打恵氏
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授の中村伊知哉氏

 今回、審査員として、デジタルマンガ協会の会長を務める漫画家の里中満智子氏、同協会の事務局長を務める漫画家の山田ゴロ氏が参加。そのほか、漫画家の犬木加奈子氏、倉田よしみ氏、つだゆみ氏も審査員を務める。審査員を代表して登壇した山田ゴロ氏は、「昨年は作品が集まるか心配だったが、本当にいろんなジャンルの作品がたくさん集まった。選ぶ方もたいへん楽しく選ばせていただいた。今年も続けられることが本当にうれしく思う」と述べた。

山田ゴロ氏
(左から)倉田よしみ氏、犬木加奈子氏、山田ゴロ氏

 デジタルマンガキャンパスマッチには、14の出版社で構成される「コミック出版社の会」も協力しており、各社編集部が参加している。実行委員を務めている株式会社講談社常務取締役の清水保雅氏は「こんな短期間にデジタルツールの作品が集まるとは思ってもいなかった。新しいことに挑戦する方が非常に多いと思っている」「コミックも出版の現状と同じようにバラ色ではないが、新しいツールで描くということは、道具だけでなく発想や描き方も変わってくるということ。そういったところから新しい芽が出てくると思う。ぜひ応募していただいて、私どもも真剣に指導したいと思う」と述べた。

 また、コミック出版社の会のメンバーであり、デジタルマンガキャンパスマッチの実行委員を務める株式会社小学館常務取締役の横田清氏は「各出版社は本来それぞれライバルである。しかし業界のマンガが発展するためには、新しい力が本当に必要。出版社が切磋琢磨して新しい才能を見つける、その1つの場所としてデジタルマンガキャンパスマッチがますます大きくなってくれれば」と述べた。

株式会社講談社常務取締役の清水保雅氏
株式会社小学館常務取締役の横田清氏

 今年から、高知県の協力のもと、同県が主催しているまんが甲子園に参加する全国の高等学校からも作品を募る。高知県まんが・コンテンツ課長の栗山典久氏は、「まんが甲子園は、高校生が『自由漫研運動』を起こして始まった。高校生の力は大きく、まんが甲子園も地元の高校生スタッフ250名で支えており、24年間続いている。中村先生が継続は力なりとおっしゃっていたが、ぜひ(デジタルマンガキャンパスマッチを)続けてもらい、発展に少しでも力になりたい」と述べた。

 最後に、参加する教育機関を代表し、日本工学院専門学校クリエイターズ・カレッジカレッジ長の佐藤充氏が登壇した。佐藤氏は、「今年は、高知県の協力を得て、高校生のほか海外からも参加するとのことで、こんなにライバルが増えていいのか(笑)とも思うが、デジタルマンガキャンパスマッチは学校同士の対決でもあり、皆様の協力の中で良い形でライバルになりたい」「多くの出版社の方に多くの作品を認めてもらいながら、これを海外の方にも通じるように、もしくは海外の方からもこの賞が権威を持っていることに気付いてもらい、多くの方々に参加してもらえれば」と述べた。

高知県まんが・コンテンツ課長の栗山典久氏
日本工学院専門学校クリエイターズカレッジ・カレッジ長の佐藤充氏

(山川 晶之)