デジタル時代の漫画家を発掘するコンテスト、マンガ学部・学科などの学生から1350作品の応募

　デジタル時代の漫画家発掘を目的として今回初めて開催されたコンテスト「デジタルマンガキャンパス・マッチ2014」の審査結果が3日、発表された。

デジタルマンガキャンパス・マッチ2014の受賞者と審査員の方々

　専門学校など71の参加校から、「デジタルマンガ部門」で約350作品、「イラスト部門」で932作品、インタラクティブ性や動的要素を備えた「未来のマンガ」部門で11作品の合計約1350作品の応募があった。10の出版社、33の編集部、6社の協賛企業が参加し、漫画家の里中満智子氏をはじめとしたデジタルマンガ協会の漫画家が審査している。

　大賞1作品、奨励賞4作品、漫画家のちばてつや氏の文化功労賞受賞を記念した「ちばてつや特別賞」1作品を選出した。また、協賛の6社はそれぞれの協賛社賞を選出したほか、出版社編集部が自誌にふさわしい作品を推薦している。受賞者や、編集部からの推薦をもらった作者は、学校・コンテスト事務局を通して、編集部にコンタクトを取ることができる。

　コンテストの実行委員長を務める中村伊知哉氏（慶應義塾大学メディアデザイン研究科教授）は、デジタルマンガキャンパス・マッチは日本ならではのマンガ表現とデジタル技術を組み合わせ、マンガ文化を担う才能の発掘を目的として、学生とプロ、マンガビジネスをマッチングするものだと説明。「デジタル化によりさまざまな方向への発展が始まった。皆さんには新しい世界を切り開いて欲しい」と受賞者に呼び掛けた。

　また、事務局を務める株式会社ヒューマンメディアの代表取締役社長である小野打恵氏は、同コンテストを通じて、各学校それぞれの取り組みや動向を見ることができるほか、出版社側の顔が見えることで透明性を増すことが重要と考え、今回の取り組みを進めてきたと説明。2015年、2016年と今後も続けていきたいとしたほか、社会に飛び立った漫画家を対象としたジャパンマッチ、フランスや米国といったマンガを描く世界中の人々を対象としたグローバルマッチに発展させたいとした。

デジタルマンガキャンパス・マッチ2014実行委員長の中村伊知哉氏（慶應義塾大学メディアデザイン研究科教授）

絵の良し悪しではなく、その人にしか描けないマンガを

　大賞を受賞したのは、大阪コミュニケーションアート専門学校マンガ科4年の福田勇介さんの作品「男子ですから」。受賞理由について里中氏は、「タイトルと扉を見ただけで想像がついてしまう通り、“女の子のバストのサイズを当てる”といった、男の子だからこそのバカバカしい、本人たちからすると真剣そのものになる時期についてストレートに描かれてある。絵も熟練しておらず、構図も単純なところがあるが、読み終わった後、いつまでも心に残る」と評した。

　また、福田さんの作品を漫画家の青木雄二氏の「ナニワ金融道」になぞらえながら、「マンガは絵の上手さだけがすべてではなく、話の構成もさることながら、作者の伝えたいこと、作者の作品世界、その人にしか描けない絵や表情、セリフが合わさることで、作者にしか描けない世界が広がる」と述べた。

　株式会社講談社常務取締役の清水保雄氏は、「デジタルといえば、昔は単純な線しか描くことができなかった。今回、編集者からは、作風もバラエティに富み、技術レベルも進歩しているとの声があった」とし、「デジタルには可能性が潜んでいると感じた」と述べた。また、受賞者に向けては「賞をもらったとしてもここからがスタートであり、これからいかに頑張るかが一番大事」と檄を飛ばした。

漫画家の里中満智子氏

株式会社講談社常務取締役の清水保雄氏

　受賞作品は下記の通り。3月17日までコミュニケーションプラザドットDNP（東京都新宿区）にて受賞・推薦作品展示会を開催している。

福田勇介さんの作品「男子ですから」

河合沙樹さんの作品「夢を引き出すファンタジー」

熊谷朝美さんの作品「反転世界」

公家路子さんの作品「脳内コンピュータ」

城戸淳美さん・高橋舞さん・佐藤静香さんの作品「眠り猫-日光東照宮-」

ハラダケンタロウさんの作品「アイのコトバ」

しもやけさんの作品「ハマヒルガオ」

ミミトケさんの作品「Recovery」

齋藤奈々海さんの作品「りりん＆ムー」

鶏胡麻大和さんの作品「一寸法師」

みがにし　がみみんさんの作品「Justice」

餅永　しげさんの作品「ZOO」

　出版社の推薦作品は下記の通り。

　なお、小野打氏によると、推薦作品なしと回答した編集部は、作品のレベルが推薦に値しないというわけではなく、あくまでも編集部の方向性に合致する作品がなかったためだとしている。