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[2006/04/24]
第9回:Web2.0を実感するために、ユーザーが経験するべき10のこと(後編)
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[2006/03/13]
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[2006/03/06]
第4回:O'Reilly氏による「Web2.0とは何か」のポイント(前編)
[2006/02/27]
第3回:「ホームページ」→「ブログ」に見るWebの進化
[2006/02/13]
第2回:Webの姿を分析し、そこで起きていることを見ていこう
[2006/02/06]
第1回:ホームページは「壁新聞」じゃなくなった
[2006/01/30]
第2回:Webの姿を分析し、そこで起きていることを見ていこう

 Webブラウザでページを開けば、そこにはたくさんのリンクがあります。ひとつひとつの「リンク」は、今のページと次のページを繋ぐものであり、次のページを開くためのボタンですね。

 そこから視野を広げて、広い視野で無数のリンクによって構成されるWebの世界を眺めると、また違うものが見えてきます。今回は「リンク」よって構成されるWebの世界と、そこで起きていることを見ていきましょう。


Webは「Webページ」と「リンク」によって構成されている

 まず、ちょっと言葉の整理をしましょう。前回「Webサービス(Webサイト)」という言葉を使いましたが、今回はまた「Webページ」という言葉を使います。「Webページ」はブラウザに表示されるひとつひとつのページ。そしてWebページの集まったものがWebサイトであり、Webサービスである、とご理解ください。

 ちょっとブラウザから距離を置いて、広い視野でWebを見渡してみましょう。多数のWebページを「リンク」が繋いでいる、といった図が見えてきます。「Webページ(およびWebサービス)」と、「Web」という言葉の違いについても、以降を読んで混乱しないように、覚えておいてください。

Webの世界は、(Web)ページとリンクによって構成されている

 O'Reilly氏は「Web 2.0」という言葉を「Webサービス(Webページ)の新しいやつ」という意味で使っていますが、Web全体のことにはほとんど言及していません。Web 2.0も今までも、Webそのものの仕組みは基本的に変わらないからです。「Webがどんなものかなんて、キミたち(IT業界の人たち)は当然知ってるでしょ?」ということなのでしょう。でも、そんなのは誰もが知っているわけではありません。今回はまず、この「Webってどんなもの?」ということを見ていきたいと思います。


Webは「ネットワーク」の一種

 Webページとリンクによって構成されるWebは、「ネットワーク(網状に形成された組織)」の一種です。もちろん「インターネット」もネットワークの一種。ネットワークには他にもいろんなものがあって、例えば私たちの社会もネットワークだと考えることができますし、発電所から各家庭に電気を届ける送電線もネットワークです。私たちの体の中には、血管や神経のネットワークができています。

 「ネットワーク分析」という考え方を使うと、これらネットワークは、いずれも同じ特徴を持っている、と考えることができます。機械の世界であるインターネットと、人間社会が同じだなんて、おもしろい考え方だと思いませんか?


ネットワークの姿を見てみよう

 ネットワークの基本を知るためのモデルとして、とある小学校の、6年1組の児童たちの友達関係を考えてみましょう。ネットワーク分析では、ひとりひとりを「ノード(点)」、ノードを繋ぐ線を「リンク(連結するもの)」と呼ぶことが多いので、以降、この言葉を採用します。

 この6年1組は人口の少ない地方なので、男子12人(A君〜L君)、女子12人(Mさん〜Xさん)の合計24人です。私たちは、法の下にみな平等な社会に生きているのですから、このクラスのネットワークは当然以下の図のようなもの……だと思いますか?

図1:全部のノードから平等にリンクが張られた6年1組のネットワーク

 いいえ、実際には、こんな図にはなりませんね。仲のいい間柄もあれば、険悪な関係もあります。この年代なら、女子と男子の間にはなんとなく溝があって、男子も女子も気の合う子どうしのグループができているのが普通でしょう。

図2:6年1組の交友関係ネットワーク

 ずいぶんとリアルな人間関係になってきた気がします。こうすると、多くのリンクを集めているJ君やSさんのようなノードが、このクラスの中心的存在である、ということが見えてきます。このクラスのことを知りたければ、とりあえずはJ君かSさんに聞くのがよさそうですね。

 このように、多くのリンクを集める、周辺のネットワークの中心的な存在を「ハブ」といいます。複数のPCを接続してLANを組むときの「ハブ」と同じ意味です。

 このクラスのネットワーク内で、例えば「ムシキング」……はよく分からないので20年前のクラスということにして、例えば「ドラゴンクエスト」の攻略法や裏ワザを知りたいとき、誰がいちばん詳しい? と皆に尋ねてみることにします。

 多くの子は、人気者のJ君が詳しい、といいました。でもJ君は、F君がいちばん詳しくて、いつも彼から教えてもらっている、といいました。となると、クラスでいちばん「ドラゴンクエスト」に詳しいのはF君だ、ということになります。

 では、ここまでのことを簡単にまとめてみましょう。


  1. 世の中は不平等である。リンクの多いノードと少ないノードがある

  2. リンクの多いノード(つまりハブ)は、いろんな意味で価値が高い

  3. 価値の高いノードからのリンク(実はJ君の情報源はF君、といった例)は、普通のリンクよりも価値が高い。つまりリンクにも価値の違いがある


6年1組とWebの共通点

 Webの場合、ノードは「Webページ」であり、リンクはそのまま「リンク」です。ふだん私たちは何の気なしにリンクをクリックしていますが、そのリンクひとつひとつが何らかの価値を持っており、「リンクをクリックする」という行為がリンクの価値を証明している、とも言えます。

 Webと6年1組のネットワークには、いくつも似たような特徴を見つけることができます。例えば、以下のようなことが言えます。


  1. たくさんリンクされているページと、リンクされていないページがある。どこからもリンクされていない孤立したページは、誰からも見られないという意味で無価値である

  2. 一般的に、おもしろい(=価値が高い)ページは多くのリンクを集めているし、たくさんのリンクを集めるページはおもしろい

  3. 価値の高いページ(有名なブログなど)から「おもしろいよ」と紹介されてリンクされると、自分のページの価値が大きく上がる。つまり、リンクには価値があり、価値の違いがある

 よく考えてみれば当たり前のことなのですが、意外に日ごろは認識していないことではないでしょうか。

 そして「リンクに価値がある」ということから、Webでは次のようなことが起こります。


  1. リンクを集めた「リンク集」に、コンテンツとしての価値が生じる

  2. リンクを金で買う、お金を貰ってリンクする、というビジネスが生まれる

 この2つについて、順番に見ていきましょう。


リンクをめぐる動き(A)誰かがリンク→機械がリンク→みんなでリンク

 何か新しい情報を見つけたいとき、私たちは「リンク集」を利用します。現在の自分が知っている範囲では見つけられないので、新たなリンクを辿って、新たなノードを見つけようとするわけです。

 「リンク集」というと、ネット歴の長い方には、昔なつかしのもの、という印象を持たれるかもしれません。1997年ごろまでは、Webのナビゲーション役といえば「リンク集」が主でした。Yahoo!も細かくカテゴリ分けされたリンク集として「ディレクトリサービス」を名乗っていましたし、NTTも「NTT Directory」というリンク集を運営していました。これら大手リンク集に掲載されることが、アクセスアップ(=ノードの価値を高める)の大きな手段と考えられていました。

 これらのリンク集は、担当スタッフが手動でメンテナンスをしていました。しかしWeb上のノードの増殖(新しいWebページの開設)は非常にハイペースで、手動のメンテナンスでは追いつかなくなります。

 そこで登場したのが、ロボット型の検索エンジンです。情報収集用のプログラム(ロボットと呼びます)が自動的にWebを巡回し、24時間休まずにWebページの情報を収集し続け、分析用のプログラムに渡します。そして、山ほどある情報を単に「リンク集」として見せてもほしい情報を見つけることは難しいので、「キーワード検索」を基本的なインターフェイスとしました。

 多数ある検索エンジンの中でも、1998年に登場した「Google」は、先の6年1組の例でいうところの(2)や(3)のような考えをいちはやく検索アルゴリズムに取り入れ、ユーザーの圧倒的な支持を集めました。

 例えば、多くの人が「インプレスはwww.impress.co.jpだ」といってリンクしているから「インプレス」で検索するとwww.impress.co.jpが一番目に表示されます。同じ要領で、多くのアダルトサイトが「18歳未満はYahoo! JAPANへ行け」とリンクしているから「18歳未満」で検索した一番目はYahoo! JAPANです。

 Googleがいう「ページランク」の仕組みは、まさに「リンクの多いノードは価値が高い」の理論ですし、ページランクの算出には「価値の高いノードからのリンクは普通のリンクよりも価値が高い」という考えも用いられているようです。

 実際のGoogleの検索アルゴリズムはもっともっと複雑ですし、ネットワーク分析も、もっと複雑な学問で、ここまでの話はほんのさわり程度のものです。が、「ネットワークの本質を捉えていちはやくサービスに取り入れたGoogleが、ユーザーに支持されるサービスを作れた」ということは、Web2.0やWebの進化を考えるときに知っておきたい、重要なことのひとつだと思います。

 最近では、検索エンジンに代わるWebのナビゲーション役も登場しています。検索エンジンのロボットよりも速く情報を知らせるブログや、ロボットにはない、人の「好み」や「思想」、狭くディープな知識などのフィルタを通して選択されたリンクは、人によっては検索エンジン以上に使いやすいリンク集となります。

 ここに前回のキーワード「参加のアーキテクチャ」や「1人のプロより100人の素人」といった状況が合わさります。例えばブログや「個人ニュースサイト」と呼ばれるおもしろいページの紹介をメインにしたサイト、さらには「ソーシャルブックマーク」、「まとめサイト」と呼ばれるものが、検索エンジンにかわるリンク集として利用されるようになっています(このあたりの詳しい話は、また以降の回にて)。

 昔のリンク集を「誰かが作るリンク集」、検索エンジンを「機械(プログラム)が作るリンク集」とすれば、これらは「みんなで作るリンク集」だといえるでしょう。


リンクをめぐる動き(B)マス対象のバナー広告→個人対象のキーワード連動型広告

 リンクを売る、リンクを買うというビジネスは、昔からありました。いわゆる「バナー広告」がその代表です。しかし、O'Reilly氏がいうには、従来のバナー広告はWeb 2.0的ではありません。

 O'Reilly氏がこう指摘する理由はおそらく、ネット(ここではインターネット)の本質を捉えていないからでしょう。人気サイトにバナー広告を掲載し、自分のサイトへの誘導を図る、というバナー広告の考え方は、ユーザーを「20代の女性」のように一群の集団として扱っているという意味で、テレビや雑誌など、マスコミと同じです。

 マスコミ、例えばテレビは、一方的に電波を流しているだけで、視聴者ひとりひとりが出演者の誰を好きで見ているのか、番組のどこが気に入っているのかを知ることはできません。だから、なんとなく皆が好きなんじゃないかなーというタレントを出し、なんとなく皆が好きそうなCMを流します。

 対してインターネットでは、双方向の通信なので、ユーザーひとりひとりが何を探しているのか、どのリンクをクリックしているか、といった情報を得ることが可能です。また、ユーザーひとりひとりに向けて個別にコンテンツを作り変えることもできます。

 なので、例えばあるアイドルが好きな人に向けて写真集やDVDなど関連商品のCMを流すとか、お金に関心のある人に向けて金融商品の情報を集中的に送る、といったように、個人の趣味や求める情報に合わせてピンポイントで広告を配信することが可能になります。結果、安い広告費で高い効果を挙げることができます。これこそが、インターネットの本質を捉えた広告だといえるでしょう。

 こうした広告の代表的なものが、検索エンジンで検索したキーワードに対応して表示される「キーワード連動型広告」です。たとえば「登別温泉」を検索した人に登別の温泉宿の広告を表示する、「αリポ酸」で検索した人にαリポ酸のサプリメントが買える店の広告を表示する、というように、ユーザーひとりひとりに最適な広告を表示できるのが、キーワード連動型広告の特徴です。

Googleの検索結果に表示される広告「Google Adwords」(画面左)と、Yahoo! JAPANの検索結果に表示される広告「スポンサードサーチ」(画面右)。それぞれ、「αリポ酸」と検索したらαリポ酸を含むサプリメントの通信販売サイトなど、キーワードと関連性の高い広告を表示します

リンクをめぐる動き(C)「囲い込み」から「オープン」へ

 リンクに関連してもうひとつ。従来、多くのWebサービスは自分を強力なノードにしようと頑張っていました。たくさんのリンクからユーザーを集め、集めたユーザーを逃がさないようにして自分のサービス内を回遊させ(これを「囲い込み」と呼びます)、たくさんお金を使わせたり広告をクリックさせる、という方法で収入を得ようとしていました。

 ところが最近は、自分のノード内だけでビジネスをするのでなく、積極的に他のノードに働きかけ、周辺のノードと協力してビジネスを行なおうという動きが増えています。

 ここにも「参加のアーキテクチャ」や「1人のプロより100人の素人」という話が絡み、個人が作るサイトの影響力が増したことが、こういった動きの起きる一因となっています。自分の会社のサイトに1万人を集めるのと、100人のファンを持つ100の個人サイトと協力するのとが、同じ規模のビジネスの規模になるんじゃないの? ひょっとすると、むしろこっちの方が効果的かも! ということです。

自分のノードに囲い込むのでなく、オープンにして周囲のノードを巻き込む

 具体的な例のひとつは「アフィリエイト」です。個人のブログなどに自分のショップの商品を紹介してもらい、商品が売れたら紹介料を支払う、という形です。アフィリエイトについては、すでにあちこちに解説があるのでここでは割愛します。

 もうひとつの例として「APIの公開」というものがあります。「API」とは「アプリケーション・プログラム・インターフェイス(応用ソフトを使うためのインターフェイス)」のことで、例えば、仮にExcelのAPIがあるとしたら、こんなことができます。

 WebページのHTMLに入力フォームを2つを書き加えて、「2つの入力フォームに入力された数の和を求めなさい」という簡単な指示(スクリプト)を書きます。すると、WebページがExcelを呼び出して計算を行ない、答えを表示してくれます。

 Webページを作る側には、実際にExcelを開発(Excelは複雑で高機能なアプリケーションなので、自前で開発しようとしたら大変です)しなくても、簡単な指示をちょろっと書くだけでExcelの機能が利用できるというメリットがあります。一方のExcel側には、機能を提供すると同時に広告を表示するなどしてメリットを得ることが可能です。

 現在よく利用されている有名なAPIとしては「GoogleMaps API」がありますが、これも緯度・経度の情報などを設定するだけで欲しい場所の地図が表示できる(実際にはもうちょっと複雑ですが)サービスです。

 APIを自分のWebページで利用するには、いくらかプログラミングの技術が必要になります。技術のある人にとっては、アイデア次第で従来個人レベルでは不可能だったような高度なWebサービスを作ることも可能になる、おもしろい時代になったといえるでしょう。


今回のまとめ

 Webはネットワークの一種であり、その特徴は「ネットワーク分析」という考え方で読み解くことができます。そこから、ネットワークとしてのWebの姿と、それに関連した動きを整理しました。


  1. ネットワークにおいては、ノード(コンテンツそのもの)だけでなくリンクも価値を持つ。「リンク集」のシステムは、今まで「誰かが作るリンク集」→「機械が作るリンク集(検索エンジン)」と進化を遂げ、現在はブログ、ソーシャルブックマークなど第三世代のものが登場している。これらは「みんなで作るリンク集」だといえる

  2. ネット広告は、マス的なバナー広告から、インターネットならではの特徴を利用した個人向け広告が登場した

  3. 自分のノードの巨大化だけを目指すのでなく、周辺のネットワークを巻き込んでビジネスを拡大する試みが広がっている。具体的なものには「アフィリエイト」、「自社サービスのAPI公開」がある

 最後に、ネットワーク分析に興味を持った方へのおすすめ参考書籍を挙げておきましょう。

 まず1冊、という方にはこの本。人類が「ネットワーク」というものをどう認識してきたか、という歴史から始まり、ネットワークの特徴をさまざまな切り口から解説しています。この記事での解説は、本書から用語を拝借しました。

「新ネットワーク思考〜世界のしくみを読み解く」
   1,995円/アルバート・ラズロ・バラバシ著、青木薫訳/NHK出版
   ISBN:414087431

 もう1冊、上記の本とは少し違うアプローチから、行動とネットワークについてを軸に解説した本。1997初版のため、コンピュータ・ネットワークに関する記述がやや古いのが残念なところです。

「ネットワーク分析―何が行為を決定するか ワードマップ」
   2,310円/安田雪著/新曜社
   ISBN:4788505843

(2006/02/06)


小林祐一郎
IT企業勤務の傍ら、ライターとしても活動。「専門家でない普通の人が、暮らしの中でPCやインターネットをどう利用するのが幸せに繋がるのか」が最も関心のあるテーマ。
http://www.heartlogic.jp/

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