今回からは「Web 2.0」の一連の変化が、ユーザーにどのようなインパクトを与えるのかを見ていきたいと思います。
まず今回と次回は、Web 2.0を実感するための10の手がかり「Web 2.0を実感するために、ユーザーが経験するべき10のこと」をお送りします。これまでWeb 2.0についていろいろと説明してきましたが、いくら文章を読んでも実際に体験していないと、なかなか実感できない部分があると思います。でも、いちど体験してみれば「あ、こういうことなのか!」と、ストンと腑に落ちるはずです。
その「ストンと腑に落ちる」感覚を味わっていただ手がかりとして、10個の行動をご紹介します。まだ未経験のことがあったら、さっそく試してみてください。そして、今までと違う何かを感じてください。
■その1:オンラインショップで買い物をする
今まで現実世界で済ませていた用事にWebを使い、「プラットフォームとして振舞うWeb」の力を体験する
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欲しい商品を検索して、オンラインショッピングサイトで買い物をしてみましょう。乗り物や宿泊施設、チケットの予約でもかまいません。「それまでWeb以外で済ませていた用事に、Webを使う」ということを体験してみてください。
私がオンラインショッピングを本格的に利用するようになったのは、2004年になってからでした。それまでは何となく抵抗があって、Webでは情報を集めるだけで、買い物はリアル店舗に足を運んでしていました。でも実際にオンラインショップを利用するようになってから、商品の豊富さ、検索の便利さなど多くのメリットを実感し、買い物のしかたそのものが変わりました。今では家にあるものの半分くらいがオンラインショップで買ったものです。
一方で、私は2002年頃に生まれて初めて「飛行機のチケットを自分で買う」という経験をしました。そのとき私はオンライン予約でチケットレス購入をしましたが、まったくなんの抵抗も持ちませんでした。Webで買うのも窓口で買うのも初めてなので、心理的なハードルの高さは、まったく同じだったからでしょう。
あなたの頭の中でも、何となく「Webでやる(できる)のはここまで」と、線を引いてしまっていませんか? 実際には、今のWebではかなりのことができます。社会に出る前からすでに「強力なプラットフォームとしてのWeb」があった世代は、当たり前にあらゆる用事をWebで片付け、それ以前の世代とはまったく違う生活スタイルを築いていくのでしょう。
■2:RSSリーダーでブログを読む
情報流通の速さ、そして個人の発言の活発さを実際に目で見る
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これまでのインターネットとは違う、情報流通の速さを体験しましょう。RSSリーダーを使って、ニュースだけでなく個人のブログも積極的に読み、多くの個人がときにマスコミよりも速い情報、深い考察を発表していること、そして盛んに議論が行われていることを目の当たりにしてみましょう。
RSSリーダーは多数ありますが、初めて使うなら「goo RSSリーダー」が使いやすいでしょう。「ブログを読む」といわれても、どのブログを読めばいいのかわからない、という方は、まずgoo RSSリーダーのキーワード機能を使ってみてください。
情報を追いかけたいキーワード(例えば「ワールドカップ」や「ボーダフォン」など)や、住んでいる町や駅の名前などを設定すると、次々とブログの記事が見つかるはずです。そうした記事を読みながら、継続的にいいことを書いているブログを見つけたら、今度はそのブログのRSSを登録していきます。
こうして、1カ月も利用していれば、あなただけの情報源ができあがっているはずです。そして、RSSリーダーが手放せなくなっているはずです。
■3:Ajaxを利用したWebサービスを体験する
従来のWebと違う、デスクトップアプリケーションのような操作性に触れてみる
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Ajaxを使ったWebサービスに触れて、ダイナミックな画面の動き、待ち時間のないレスポンスの良さなど、デスクトップアプリケーションのような操作感覚を体験してみましょう。Ajaxの使われているサービスはすでに多数ありますが、中でも日本語で、しかも動きが派手でわかりやすいものとして、次の3つをおすすめします。
■4:Podcastingの番組を聴いてみる
PC以外のデバイスによってWebの可能性が広がることを感じてみよう
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Webを利用できるデバイスはPCのWebブラウザだけではない! ということで、とりあえずは音声配信(ネットラジオ)「Podcasting」を体験してみましょう。
iPodを持っていなくても、無料のソフト「iTunes」をインストールすれば、とりあえず音声を聞くことができます。動画配信の「Videocast」もあり、こちらもiTunesをインストールしていれば視聴できます。
私はもともと書くことが好きで、文章や写真などを使った表現をする場として、初期の「ホームページ」に強く惹かれました。PodcastingやVideocastingが定着すれば、(書くのは苦手でも)しゃべる/歌う/演奏することが好きな人や、映像を作るのが好きな人など、より多くのジャンルの表現欲求を持った人たちがWebで活動し、多くの人にそれを届けやすくなっていくのだろうな、と感じます。
以前から文章や音楽、映像をネットで流通させる手段がなかったわけではありません。が、今は発信・受信のための敷居がさらに低くなり、またブログと組み合わせることで、表現を介した「つながり」を得てネットワークを広げやすくなっています。
そして、これはほんの一例で、今後もさまざまな機器がWebで繋がり、Webがさまざまな行為を中継するようになるのかもしれません。
■5:「口コミ」情報を探してみる
Web 2.0の重要なキーワードのひとつ「集合知」を、なじみのある言葉でいうと「口コミ」になります(「集合知」=「口コミ」というわけではないのですが、「口コミ」もその一部です)。
現代はマスメディアの広告があまり効かない時代で、そのかわりに消費者は口コミ情報を重視して買い物をする、といわれます。これにはモノの飽和とか、ライフスタイルの多様化とか、さまざまな要因があるのですが、それはひとまず置いておいて……。今は口コミが重視される時代になっており、Webにはその口コミが大量にある状態です。
購入を検討している電気商品、最近見た映画や読んだ本、行った旅行先や宿泊先などの口コミ情報を探してみましょう。例えば「商品名 どう」というキーワードで検索すると、その商品について質問・回答のやりとりがされている掲示板などが見つかりやすくなります。映画などなら「作品名 感想」や「作品名 レビュー」で感想の書かれた掲示板やブログがたくさん見つかります。大きな事件やイベントなら「○○ まとめ」で、関連情報を誰かがまとめてくれた「まとめサイト」が見つかるかもしれません。
こうして見つかる口コミは玉石混淆で、たいして役に立たないものも多数ありますが、実際に買って使った人にしかわからない、貴重な情報もあります。
Webで簡単に口コミが見つけられるようになる前は、口コミといっても知り合いに聞いたり、店員に教えてもらったりといった範囲で収拾するのがせいぜいでした。「集合知」の一例として、この「大量に見つかる口コミ情報」に触れ、有益な情報を効率よく集める練習をしてみてください(RSSリーダーを使うのも、よい方法だと思います)。
■6:テレビを観ながらパソコンを使う
ネットに「住んで」みる。活動拠点をネットに置いてみる
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コアなネットユーザーの多くは、家にいる時、テレビとパソコンをつけっぱなしにして、テレビを見ながらネットにアクセスしていることが知られています。私も現にそうしていることが多いです。テレビに出た情報をネットで調べたり、テレビ番組を肴に掲示板やチャットで(またはインスタントメッセンジャーなどWeb以外のツールで)コミュニケーションしたり、ブログを書いたりしているわけです。
もし、あなたの部屋のレイアウトが「テレビを見ながらパソコン」できない状態なら、まずは模様替えをしてみましょう。その上で、テレビを見ながらパソコンを使って、のんびりと時間を過ごしてみましょう。「そんな自堕落なまねができるか!」というご意見はもっともなのですが、これもひとつの経験ということで、1週間ほど試してみてください。
「そんなに長時間ネットでやることなんてない。手持ち無沙汰だ」という感想を持った方は、まだハマリ度が足りません。ネットにはほぼ無限に近いリソース、参加者、コミュニケーションがあり、まだそこにアクセスしていないだけです。
自分の興味のあるキーワードで検索しまくっておもしろいサイトを探してみたり、掲示板やブログをひたすら眺めてみたり、オークションの目玉商品を探しまくったりして、ズブズブとはまってみましょう。
時には、眺めているだけのつもりが勢い余ってコメントなどを書き込んでしまうこともあるでしょう。そして返事を貰い、思わぬ出会いがあるかもしれません。……こんなことをしていると、いつの間にか時間過ぎているものです。
日々の活動、コミュニケーションの場が、少しずつネットにシフトしていく感覚を味わってみてください。ネットは一方的に「読む、見る、受信する」だけのメディアではなく、参加し、コミュニケーションするプラットフォームであり、そのように利用している人がたくさんいる、という認識が得られるはずです。
もっとも、実感として認識が得られたら、ネットにはまり過ぎない生活パターンに直した方がいいなあ……とは思います。
こうした実感は、データとしても見ることができます。平成17年度版の情報通信白書や、BIGLOBEのインターネットリサーチ結果なども参照してみてください。
次回は後半、残り4つのことをご紹介します。数は4つですが、今回より手間がかかるものばかりになりますので、期待(?)しつつお待ちください。
■URL
Tim O'Reilly氏著「What Is Web2.0」(英文)
http://www.oreillynet.com/pub/a/oreilly/tim/news/....
(2006/04/03)
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