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【新技術】

Sun MicrosystemsがJiniを披露

■URL
http://www.sun.co.jp/Press/release/1999/0126_01.html
http://www.sun.co.jp/Press/release/1999/0126_02.html

 Sun Microsystems社は米国サンフランシスコ市で開催したWorldwide Analyst Conferenceで「Jini」を正式に発表し、Jiniをライセンスしたベンダー37社の発表と、実装されたいくつかの機器のデモンストレーションをした。


Sun

 Jiniはパーソナルコンピューターを始め、プリンター、ハードディスクドライブ、デジタルカメラ、PDAなど、私たちの身の周りにあるさまざまなデジタル機器をネットワークに接続するだけで簡単に機器間通信できるようにする、Javaの分散オブジェクトを核とした応用技術。将来的にはイーサネットや電話回線だけではなく、電源のACラインをコンピューターネットワークに使った技術が実用化されれば、家電製品をACラインに差し込むだけでネットワークに接続できるようになる。

 あらかじめそれぞれのデジタル機器にJavaのバーチャルマシン(VM)とその機器を動かすのに必要なプログラムコードを埋め込んでおき、その機器にネットワークケーブルが差し込まれると、自らの機器特性情報やプログラムコードをネットワーク上の「ルックアップサーバー」に登録し、その機器にアクセスしたい機器は「ルックアップサーバー」を介して相手の機器特性情報やプログラムコードを得る。そのあとはサーバーを介さずに機器同士が直接JavaのRMI(Remote Method Invocation)を使って通信をする。つまりJavaプログラムからそれぞれの機器はオブジェクトとして扱えるようになる。

 これまでは他の機器を動かすためにはデバイスドライバーなどのソフトウェアをクライアントのコンピューターにインストールしておかなければならなかったが、そうした手間を省いて容易にネットワークから利用できるようになる。たとえばJiniを組み込んだデジタルカメラを使えば、自宅で撮影した画像を最寄のKinko'sのようなビジネスコンビニで出力して受け取れたり、PDAを使って空港で航空会社のコンピューターにアクセスできたり、遠隔地にある機器について調べたり、そのデバイスドライバーをインストールしておく必要がなくなる。

 PC互換機やMacintoshなどのパーソナルコンピューター、ワークステーションなどの「コンピューター」はプロセッサーのハードウェアのアーキテクチャが限定されているが、多くのデジタル機器のプロセッサーやハードウェアのアーキテクチャは多種多様である。Javaを使うことでベンダーは組み込みソフトウェアやデバイスドライバーの開発が容易になり、利用者は機器をネットワークに上で探し出したり、接続したりすることが容易になる。

キヤノンのFAX
JiniのロゴがついたキヤノンのFAX

 Javaの開発責任者であるSun Microsystems副社長のBill Joy氏は「電話網は複雑であるにも関わらず電話機をつなぐだけでダイアルトーンが返ってくる。しかし、コンピューターネットワークではそのようなわけにいかなかった。Jiniを使えばいとも簡単にネットワークに機器をネットワークに接続できる。これが『WebTone』というコンセプトだ」という。そしてBill Joy氏はJiniを組み込んだシャープの電子手帳「Zaurus」や3Com Palm Computing社の人気PDA「PalmPilot」をデモンストレーションした。

 また、ソニーなどの家電機器メーカーが先に発表したオーディオ機器を接続する規格「HAVi」との相互接続(本誌1月20日号参照)についても、「ローカルエリアのHAVi」と「ワイドエリアのJini」という関係でお互いを補完しながらブリッジできると期待を表した。つまり遠隔地から家庭のオーディオ機器をコントロールすることができるようになるというわけだ。

ZaurusをデモするBill Joy

 Jiniは昨年からその構想が発表されてきた。一方で本年1月の始めには米国ラスベガスで開催されたCES(Consumer Electronics Show)においてMicrosoft社はWindowsベースのネットワーク・プラグアンドプレイである「ユニバーサル・プラグアンドプレイ」を発表した(本誌メール版1月11日号参照)。この違いについて記者団から質問されたSun Microsystems社の幹部は「Jiniはハードウェアのアーキテクチャに依存しないJavaの応用技術なので、PCとその周辺機器だけではなく、さまざなアーキテクチャの機器に適応できる」、「すでに37社のベンダーがライセンスしたことの説得力」といった点が大きな違いであると強調した。

 後者について、Jiniでは「コミュニティー」をキーワードとして重視している。そもそもネットワークに繋がる多くの機器やその上で動くサービスが「コミュニティー」であると同時に、Jiniのライセンシー(パートナー)には「Community SourceLicense(CSL)」(本誌1998年12月10日号参照)という方法で非営利の場合は無償でソースコードを公開する。その成果は「コミュニティ」全員で共有するというもので、いまのトレンドである「オープンソース」を採り入れた形となっている。


 なお、Jiniを実装したさまざまな機器が製品として市場に発売されるのは2000年後半から2001年の前半であるとしている。

 本日発表されたラインセンス先は次のとおり。

Adaptive Networks, AmericaOnline, Axis Communications, BEA Systems, Bosch Siemens, Bull, キヤノン, CiscoSystems, Computer Associates, Creative Design Solutions, DallasSemiconductor, Echelon, Encanto, Ericsson, 船井電機, IBM, Inprise, Kinkos, Kodak, Metroworks, Motorola, Novell, Nokia, 沖電気, Philips, Phoenix Technologies, Quantum, Samsung, Seagate, セイコーエプソン, シャープ, ソニー, Symbian, 3Com Palm Computing, Tatung, 東芝, Xerox

('99/1/26)

[Reported by インターネットマガジン編集長 中島由弘]


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