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【ブロードバンド】

市議会議員らの有志が誘致したADSLサービス<前編>
─北海道伊達市─

■URL
http://www.japan-telecom.co.jp/newsrelease/nr011023_fra.html (日本テレコムのニュースリリース)
http://www.nomadsystems.co.jp/kaiken.htm (ノマドシステムズの発表文)
http://www.city.date.hokkaido.jp/ (北海道伊達市のウェブサイト)

 日本テレコムが10月23日付けで、「『ODN J-DSLプラン』伊達市での提供開始について」というニュースリリースを出している。北海道伊達市のNTT伊達局において、ADSL常時接続サービス「J-DSLパーソナル」と「J-DSLオフィス」を12月から提供するという内容だ。

 同市は、有珠山のふもとに位置する人口3万5,000人ほどの町である。エリアがかなり限定されているためにニュースバリューがないと判断されたのだろうか、すでに発表されてから2週間ほど経つが、ほとんどメディアにはとり上げられなかったようだ。実際、本誌でもダイジェストニュースのコーナーにすら掲載していない。

 しかし考えてみれば、同社のような全国規模の企業が1つの市の1つの電話局におけるサービス開始についてアナウンスすること自体が異例である。実は同リリースは、単なるエリア拡大の発表ではなく、「地域のブロードバンド化を支援していく」(日本テレコム広報室)という姿勢を示すものだった。リリース文には、伊達市におけるサービス開始が「西胆振情報化政策研究会のまちづくり運動をきっかけ」としたものであることが記されていた。


 西胆振(にしいぶり)情報化政策研究会というのは、伊達市のITベンチャー経営者や商店主など15名の有志からなるグループである。ソフトウェア開発を手がけるノマドシステムズ有限会社の代表取締役であり、伊達市議会議員である広田知朗氏が代表を務めている。広田氏らが研究会を発足させ、J-DSLを誘致するに至った経緯は、ノマドシステムズのウェブサイトに掲載されている発表文に詳しい。

 広田氏が出身地である伊達市に戻り同社の営業を開始した2000年3月、「痛切に感じたことは、インターネット接続環境の貧弱さ」だった。当時、伊達市ではブロードバンドどころか、ダイヤルアップでさえもAPを開設しているISPはわずかに2社のみ。定額制の「フレッツ・ISDN」がようやくスタートしたのも今年8月に入ってからのことだった。ITベンチャーに対する周囲の理解も低く、行政や金融機関に相談を持ちかけても話も聞いてもらえなかったとしており、「都市部と地方とデジタルデバイド」を痛感したという。

 このような環境では、ITベンチャーの存在自体が成り立たない。そこで広田氏は2000年4月、「周囲が刺激を受けるようなこと」を推進するために地元商店会との勉強会を開始した。さらに同年8月に行なわれた伊達市議会議員の選挙に「ITの振興」を公約に掲げて出馬し、見事当選。「市議として市民の皆様からも、インターネット接続環境を何とかしてほしいとの声を多数聞く」ようになり、ブロードバンドへのニーズがITベンチャーの経営者たちだけのものではないことを確信した。その後、この勉強会のメンバーが中心となって2001年4月に西胆振情報化政策研究会が発足した。


 研究会が取り組んだのは、既存ブロードバンドサービスの誘致活動だけではない。既存の有線回線に頼らずにブロードバンド環境が構築できる無線LANアクセスについても、プラネックスコミュニケーションズの協力で取り組んでいる。今年5月にはフィールド実験で成功も収めていたが、ビジネスとして事業を開始するにはバックボーンの調達コストなどで行き詰まってしまったという。

 その一方、並行して行なっていたADSLの誘致活動は現実味を帯びてきた。数社のADSLプロバイダーに話を持ちかけた中で唯一、日本テレコムが相談に応じてくれるようになったためだ。さらに研究会が7月下旬に署名活動を開始したところ、「わずか3日間で100名を超える署名を集めることができた」。日本テレコムにとってこれが直接の決断材料になったのかどうかは明らにされていないが、結果的に彼らの熱意に応えるかたちでJ-DSLは提供されることになった。


 住民の運動がADSLサービスを誘致した事例としては、本誌でも過去に紹介した東京都八王子市の多摩ニュータウンがある。地元NPOの呼びかけで集められた住民の署名により、東京めたりっく通信のサービス誘致に成功したというものだ。

 ただし、ADSLプロバイダーにとってこれら2つの事例では状況が大きく異なっている。多摩ニュータウンはもともと東京めたりっく通信の計画に含まれていたエリアであり、サービスの開始時期が繰り上げられたに過ぎない。これに対して伊達市は日本テレコムの計画には含まれていなかったエリアであり、それが一気にサービスエリアに昇格してしまったのだ。

 確かに、署名から「加入促進で地元の方々に協力していただける」(日本テレコム広報室)ことが証明されたことは事実だろうが、それだけで商売が成り立つと判断したわけではないだろう。事実、このような運動が全国で起こった場合の対応について日本テレコムでは、「できるだけ協力できれば」としているが、やはり「採算ベースもあるが」という前置きをしたうえでのコメントである。どうやら伊達市での事業は、加入者が見込めるというだけで踏み切られたものではなさそうだ。(以下後編)

◎関連記事
市議会議員らの有志が誘致したADSLサービス<後編>
住民の署名でDSLサービスの早期誘致に成功〜多摩ニュータウン

(2001/11/5)

[Reported by nagasawa@impress.co.jp]


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